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吉田生活のエッセイ|いつも心にサンミーを

皆さんの青春パンは何でしょうか。

せいしゅんぱん【青春パン】名
学生時代にバカの一つ覚えのように食べていたパン。毎日食べても飽きない中毒性を秘めていることが望ましい。一般的に最も有名で現存する最古の青春パンと称されるのは焼きそばパンである。

パンダ堂 国語辞典【未刊】

私も青春パンはいくつかあるのですが、ひときわ思い入れのあるのは
サンミーです。

2023年2月より製造元が神戸屋からYKベーキングカンパニーに変わったようです

私とサンミーとの出会いは中学1年生でした。当時運動部に所属していた私はある部員仲間からから「とりあえずサンミーはカロリーがやばいから間違いない」と教えてもらいました。「パン1個で500kcal超えてるなんてバケモンだ」という彼の教えでこれまで気にしたことの無かったカロリーという数値を気にするようになり、他の菓子パンのカロリーがせいぜい200~300台という数値の中、いくらでもお腹が空き、食べても食べても食欲が追いかけてくるような成長期に100円そこそこで買えるサンミーがはじき出す500kcalという事実がいかに尊いのかを思い知りました。当時まだ「コスパ」なんて概念が一般化する前に、サンミーから「費用対効果」を教えてもらっていたんだなぁと。
カロリーのことばっかり言っていますが、一番肝心な所で当然ながらサンミーは美味しい。ただがむしゃらに甘い。それが美味いんです。
なのでそれからサンミーは不動の青春パンに確定すると同時に「サンミー=500kcal」という定説が強く強く心に刻まれたのです。

青春時代が終わり社会人になると当然のことながらあれだけ頻繁に食べていた青春パンから遠ざかっていきました。
しかしスーパーのパン売り場でサンミーを見かけると旧友に再開したような懐かしい気持ちが蘇り年に数回は手に取るところまでいき、その何回かに一回は「ひさしぶりに食べてみるか」と買ってみたりしました。そして「ようこんな甘いの毎日食うてたな」と変わらない美味しさと受け止める身体の変化でもって、人生における今の自分の位置みたいなものを再確認する作業を行うようになりした。

忘れもしません30代前半のある日のこと。
いつものように定期的にスーパーでサンミーを手にとって何気なく裏面を確認した時、我が目を疑いました。
「499kcal?」
あのサンミーが500kcalを下回っていたのです。たった1kcalですがその衝撃は相当なものでした。サンミーよ、お前もついに実質値上げの波に飲まれてしまったのかと、俺が買わなくなってしまったばっかりに「美味しくなって新登場」してしまったのかと、複雑な思いで買い物かごに入れました。

そこから不定期にサンミーのカロリーをチェックする生活が始まりました。
いつか500kcalに戻るのではないかという淡い期待を抱きつつも、その期待がため息に包まれる日々が続きました。そしてついに

2023年6月時点

あの頃の貫禄は見る影も無く、やせ細りやつれていく姿に胸が痛みました。
それが「より多くの方に食べていただけるように、食べやすい大きさにリニューアルしました」という優しさならば、あの頃の「俺に付いてこれるやつだけ付いて来い」という媚びない男気に溢れるパンに戻ってほしい。
そうでないなら、もう俺の知っているサンミーはこの世には居ないのかもしれない。サンミーに対して、一つの区切りをつけた瞬間でもありました。
そしてサンミーとはしばらく距離を置くことにしました。

2024年6月。早いもので1年が経ちました。
心の中から完全にサンミーを消し去ることなど出来なかったようでひさしぶりにサンミーを手に取りました。

2024年6月時点

胸が震えました。
サンミーはまだ諦めていなかった。
勝手に諦めていたのは自分の方だったと。このご時世、厳しい状況の中サンミーがこれだけ盛り返してきたのに自分はこの1年間、成長できたのかを自問自答しました。
ひょっとしたらひょっとするかもしれない。
あの頃のサンミーにもう一度会えるかもしれない。
そして、その時はその総カロリーを受け止めきれる自分でありたい。
まだまだサンミーから目が離せそうにない。
ひさびさのサンミーを頬張った。旧友は変わらずそこに立っていた。
甘い。たまらなく甘い。
「ようこんな甘いの毎日食うてたな」

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