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井伏鱒二の大きさ (1,106字)[問題解説及び模範解答]
原文:PDFファイル
小山清『井伏鱒二の生活と意見』
京都大学2020年国語第二問(文系)
文系限定の随想であるが、非常に読みやすく、理解は容易い。
それゆえ、答案に何を書けばよいのか、逆に戸惑う。
「捉えどころがない」という意味で、難易度は高い。
問一 傍線部(1)のように感じられるのはなぜか、説明せよ。【4行】
井伏さんと対座しているときほど、逝くなった太宰さんの身近にいる気のされることは、私にはないのである。
筆者・太宰・井伏の関係性を拾う。
1️⃣ 筆者➡︎太宰に傾倒していた
2️⃣ 太宰➡︎井伏の薫陶を受ける
問一でもあるので、あまり深入りせず、シンプルに要素を並べるとよい。
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問二 傍線部(2)のように感じられるのはなぜか、説明せよ。【2行】
こちらの気持ちが吸い込まれてゆくような感じがする。
2行問題なので、「吸い込まれてゆく」をシンプルに説明する。
「こちらが同化されてゆく」を使う。
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問三 傍線部(3)はどういうことか、説明せよ。【3行】
井伏さんという芳醇な酒を、私という水で、いたずらに味ないものにしてしまうのではないかと思う。
「芳醇な酒」と「味ない水」の対比を説明する。
井伏の滋味豊かな人間性を、自分の愚かな文章で台無しにしてしまうことを危惧しているのである。
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問四 傍線部(4)はどういうことか、説明せよ。【4行】
殊更に自分を人に野暮ったく印象づけようとしているのかもしれない。それほどに井伏さんは、いわばスマートなのである。
井伏は本来スマートで若い精神の持ち主だが、恰幅のいい見た目と貫禄のせいで周りから老練な印象に見られ、立派な作家として祭り上げられる自分を持て余し、ことさら野暮を装っているのである。
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問五 傍線部(5)はどういうことか、説明せよ。【4行】
見てると、私の胸の中にも、泉のように湧き出てくるものがあった。
文章があまりにもシンプルなので、ことさら答案に書く内容がなく、逆に難問である。
「湧き出てくるもの」の具体的内容が本文に書かれておらず、自分で導き出すしかない。
根拠とすべきは傍線部だ。
「傍線部はどういうことか」と問われているのだから、傍線部にこだわるのは当然である。
「私の胸の中にも」に注目する。
私の胸の中と、誰の胸の中なのか。
言うまでもなく「井伏の胸の中」である。
幼年時代に遊んだメンコを見ることで、井伏の胸の中に何が湧き出てくるのか。
そして、「私の胸の中にも」何が湧き出てくるのか。
それを説明するとよい。
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全体的に、いかにも文系限定の問題であった。
書きどころを見つけにくい中で、筆者と井伏との間に漂う感情の機微をいかに表現するか。
井伏の滋味豊かな人間性を、しっかり味わってもらいたい。