青春のスタビ譚 〜愛しきブスたち〜
はじめに
マッチングアプリ全盛期。恋したい、結婚したい、セックスしたい──そんな時、現代ではスマホ片手に出会うのがすっかり主流になった。
実際、会える。サービスとしてきちんと運営されている。
でも、虚しい。
詳細に作り込まれたプロフ。おたがいの顔も収入も丸裸にしてスコア化し、『いいね』をタップする。サービス料は大半が有料。
つまり、お金さえ払えば予定調和で終わってしまうというわけだ。そこにモンスターが現れる心配はないし、そもそもモンスターに出会おうとはしない。
それでいいのか。男なら、時にはモンスターと戦うことも必要なのではないか。
私は冒険がしたい。刺激がほしい。そんなとき、どうしても思い出すことがある。
スタビだ。
スタービーチ.com──略してスタビ。マッチングアプリが台頭する前、出会い系サイトが栄華を誇っていた2000年代、最も人気のあった出会い系サイトだ。
掲示板に投稿し、また他者の投稿に対してメールを送る。年齢層と地域別に絞り込んで検索することができ、かつ直アドでやりとりが可能。しかも無料。この手軽さが受けた。そのうえすぐに会えるのだから、やらないやつのほうがバカだった。
2000年初頭、私はまだ子供だった。金もない、学もない、というか思春期を迎えたばかりの、ただの田舎のヤンキーだった。
だが、私はスタビに出会った。私にはスタビがあった。私の青春はスタビと共にあったと言ってもいい。
スタビに心躍らさられ、スタビに泣き、スタビに慰められ、スタビで愛と優しさを知った。
これはスタビによって男になった、愚かな男の回想録である。
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