心呼吸(しんこきゅう)
思いっきり吸い込む。
鼻からゆっくり身体の奥まで深く深く。隅々まで酸素が未来が泳いでいく。
いつの間にか閉じていた扉。毛細血管のように入り組んだ感情の通路や回路、その扉を次々に開きながら。
肺を満たして膨らんだ。
それを合図に、肺胞を通った酸素は二酸化炭素になり、外の世界へ一斉に競争を始める。
ゴールテープを切ったその時には、溜め込んだ様々を解き放つ。
「それじゃまたねーーー!」
再会を楽しみに。
世界へ放たれた二酸化炭素は、まるで不要なだけに感じられた。けれど世界は不思議で素敵なバランスを見せてくれる。植物はたくましく吸い込んだ二酸化炭素を酸素と炭素に変える。植物自身の体を作る炭素、あらゆる生物の生命を支える酸素とに。
心が呼吸をする。
心で呼吸をする。
心は呼吸をする。
僕らも植物と同じような力を持っている。
想いを、気持ちを、自身の心を作る炭素は何だろう。他者の心を支える酸素は何だろう。
考える。言葉に出来なくても。現実の辛さや文句も愚痴、生きる為に吐き出した二酸化炭素を吸収する。
炭素は何?酸素は何?
僕だったら。
炭素は自分を褒めてあげよう。酸素は相手に感謝を伝えよう。
世界に蔓延した、いびつな不満や嫌悪は二酸化炭素。
僕らの心は素晴らしい植物。
自分自身も支えて、自分以外も大事にできる。
心呼吸。