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夫婦別姓にすると子供の名字はどうなるの?
続編として「夫婦別姓家庭の子供は犠牲になるのか?」を、続々編として「子供は今も名前を我慢してばっかりだ」を書きました。併せてどうぞ!
選択的夫婦別姓制度に賛成する人が増えてきました。最近、賛成派になった人に、一番よく聞かれるのが「子供の名字」に関する質問です。
大きく分けると、「子供の名字はどうやって付けるの?」と「親子で名字が違うって大変じゃない?」の2点です。今回はその質問に対する回答をまとめます。
子供の名字の付け方は今と変わらない
現在、私たち日本人は結婚するときに、夫か妻かどちらの名字に揃えるかを選択(=戸籍筆頭者を選択)しています。その後、子供が生まれたら、子供の名字は自動的に選択した方の名字を引き継ぎます。
選択的夫婦別姓制度は、「夫婦」の名字のルールです。子供の名字のルールは変わりませんので、同じように戸籍筆頭者の名字を引き継ぎます。つまり、結婚するときに未来の子供の名字は決まります。
「夫婦が別姓になると子供の名字を奪い合うのでは?」と心配する方がいらっしゃいます。しかし現在の制度でも、子供には夫婦どちらかの名字しかつけられないわけですから、子供に自分の名字を付けたい夫婦は既に子供の名字を奪い合っています。夫婦が自分の名字を奪い合う陰に隠れて目立たないだけです。そして、選択的夫婦別姓を求める人たちの多くは、使い慣れた自分の名字を改姓したくないだけなので、奪い合いは激減します。(子供の名字を奪いたい夫婦は、今と同じく奪い合います。これを減らすには、結合姓や新姓など別の制度が必要です。)
生まれてきた赤ちゃんは、自分で自分の名字を選びません。それは現在も、選択的夫婦別姓制度ができても同じです。夫婦別姓を選択した家庭の赤ちゃんは、夫婦どちらかの名字を引き継ぐことになります。もし、「もう一方(父または母)の名字の方が良かったわ」と思うようになったら....。15歳になれば、家庭裁判所に自ら申し立てられるそうですので、どうぞご安心を。
まとめると、今まで通り、子供の名字は両親の名字のどちらかで、そしてそれは婚姻時に夫婦で決めることになります。今と変わりませんので、今まで以上にもめることはありません。
しかし、選択的夫婦別姓と併せて子供の名前のルールも変更したいという意見もあります。子供が生まれるときに決めたいとか、子供が二人できたら夫婦それぞれの名字を付け分けたいなど、ニーズは多様です。確かに、妊娠がわかってから赤ちゃんが生まれてくるまでの間に、氏と名をいろいろ組み合わせながら考えるのも楽しそうです。それぞれの家庭の事情に合わせて選択肢が増えるといいですね。ちなみに台湾では出生時に子供の名字を決めるのですが、どうしても夫婦で決められないときは、役所に行って抽選で決めるのだそうです。それはそれで公平な決め方かもしれませんね。
親子別姓はすでに多発。しかし問題になってない
夫婦別姓を選択した家庭で生まれた子供は、片方の親とは名字が違うこと(=親子別姓)になります。「親子別姓って大変じゃない?」とよく聞かれますが、実はすでに親子別姓は多発しています。
例えば、日本人が外国人と結婚する国際結婚では夫婦別姓が基本です。国際結婚で生まれた子供の多くは、片方の親とは別姓になっています。例えば、大坂なおみさんや八村累さんは親子別姓で育ったそうです。また、子連れで離婚して親だけが名前を結婚前の名字に戻したり、再婚したときに子供の名字を変えずに母親/父親だけが名字を変えたりすることもよくありますが、当然ながら親子別姓です。また、事実婚の家庭は、法律婚と違って夫婦の名字を統一していませんから、子供が生まれたら親子別姓になります。
みなさんが気付いているかどうかはさておき、実はみなさんの周りにも親子別姓の家族は普通にいらっしゃっいます。親子別姓は珍しいことではありません。そして特に問題が起きないことは証明済みなのです。
事実上の親子別姓も増加。しかし問題になってない
また、夫婦別姓を選択できないことから、旧姓を通称として使い続ける人が増えています。つまり、家の外では違う名字を使っているわけですから、事実上の親子別姓と言えるでしょう。
私もその一人です。仕事で名前が変わると困るので、旧姓である「青野」を使い続けています。もちろん戸籍上は子供たちと同じ名字ですが、子供たちは戸籍を見たことがありません。テレビも新聞もすべて「青野」で出ていますから、子供たちは私のことを「青野」だと思っています。そして、(事実上の)親子別姓が問題になったことはありません。
選択的夫婦別姓に反対する人たちの多くは、「旧姓はどんどん使っていいけれども、子供のために戸籍上は同姓であるべき」と主張しますが、戸籍を見ない子供たちにとって何の意味があるのでしょう。
親子別姓のイメージが湧かない方は、芸能人の親子を想像してみてください。奥田瑛二さんの娘が安藤サクラさん、藤圭子さんの娘が宇多田ヒカルさん、矢野顕子さんの娘が坂本美雨さん、三國連太郎さんの息子が佐藤浩市さん。実は私たちはテレビで事実上の夫婦別姓や親子別姓を当たり前に見ているし、そんな親子が近くにいても困らないですよね!※
そして、生活上も困らない
夫婦別姓を選択することは、「結婚しても名前を変えない」ということです。名前を変えないのですから、特に困ることはありません。むしろ、名字の変更に伴う手続きは一切なくなるし、旧姓と新姓を使い分ける手間やリスクもなくなります。生まれたときから使っている名前をそのまま使い続けるだけのことです。
家族で一人だけ名字が違ったからといって、特に困ることはありません。名字が違う人が同居しているなんて普通のこと。磯野家ファミリーの主役であるサザエさんの名字は、実は磯野ではないのです。(サザエさんの名字はフグ田。ちなみに表札は平仮名で「いその」。)
親子別姓の子供はかわいそうじゃない
「親子別姓だと子供がかわいそうだ」という人もいます。他人のことを推測で語ってもしょうがないので、直接子供たち本人の声を聞いてみましょう。
親が夫婦別姓、子どもの本音を聞いてみた「困ることはない。以上」
「困ることはない、以上」だそうです。
こちらにも。
親が夫婦別姓/親子別姓だと「かわいそう?」子どもたちのリアルな声
よく「いじめられそう」なんて意見を聞くのですが、それはいじめる側の問題です。世の中には様々な家庭があります。名前も様々です。全国民を同姓同名にしない限り、名前でいじめられる可能性があります。いかなる理由があっても、いじめてはいけないと、子供たちに教えていきたいですね。
子供たちの未来のために選択的夫婦別姓を
いろいろ挙げてみましたが、子供たちには何も問題がないことをご理解いただけましたでしょうか。むしろ、彼らが大人になって結婚するときには、名前を変えない選択肢があることに感謝するでしょう。人生をともにしてきた大切な名前が、結婚によって強制的に変えられてしまうことのないように。子供たちの未来のためにも、早く制度を実現しましょう!
名字を揃えたい夫婦は夫婦同姓を、名字を変えたくない夫婦は夫婦別姓を、当たり前に選べる社会を目指して。
続編として「夫婦別姓家庭の子供は犠牲になるのか?」を、続々編として「子供は今も名前を我慢してばっかりだ」を書きました。併せてどうぞ!
※親子別姓の芸能人の例を足しました。「本名は親子別姓じゃない」とご指摘をいただきましたが、あくまで親子別姓のイメージを持っていただくための例です。そもそも選択的夫婦別姓制度がない現在、日本人同士の法律婚で本名の親子別姓は起こりえません。ただし、離婚すればありえます。(2019/5/6)
※離婚時のケースを足しました。(2020/12/16)
※子供の名字ルールについて補足しました。戸籍上だけ同姓にすることの無意味さを足しました。(2021/03/01)