見出し画像

SaaS事業のコツは?

先日、こちらのエントリー

で、

自分が調べられる限りの範囲なので、もちろん間違いあるかもしれませんが、正直サイボウズが国内SaaS売上No1なのは驚きました。

と、意外とサイボウズの売上が多いことが発覚。海外のSaaSベンダーに比べると豆粒のような数字ですが、この7年間クラウドサービスを売ってきたので、それなりに知見があります。

そこで、SaaS事業を考えるポイントについて、Twitter で発信しました。それを note でもまとめておきます。

SaaS事業を考えるポイント

まずは製品について。Sansanさんは社名と同じ「Sansan」という名刺管理サービスが売上の中心。一本で勝負できる強さがあり、事業として効率的です。ラクスさんは楽々精算やメールディーラーなどサービスラインナップが豊富です。こちらは事業の安定感と柔軟性があります。

サイボウズの場合、パッケージで実績のあるグループウェア製品をSaaS化して売上のベースを作りながら、「kintone」というPaaSに取り組んでいます。PaaSはシェアの高さとエコシステムが重要です。売上100億程度の国産企業が外資系大手と勝負できるのか、甚だ疑問です。(笑)

次は価格。Sansanさんやラクスさんは初期費用や導入支援費をきちんと設定し、ランニングは一社あたり最低価格で月3〜5万円くらいの設定だと思います。営業活動に費用がかかっても、手堅く利益を出せるビジネスモデルです。素晴らしいです。

サイボウズは初期費用を設定しておらず、また単価が低いので、例えば、500円×5ユーザーで月2,500円という契約も当たり前です。営業費やサポート費を考えれば、どう考えても赤字になります。これはベンチャーが真似すべきではありません。

最後は販路。Sansanさんやラクスさんは自社による営業活動が中心だと思います。これは、営業教育が容易、かつモチベーションを上げやすく、そして間接販売のマージンがかからないので、大変効率的です。しかし、さらに拡販していくには人員を増強していく必要があります。

ところが、サイボウズは間接販売が中心。低単価の商品を間接販売で拡販するという難易度の高いビジネスモデルに取り組んでいます。これはこれでうまくいく可能性もありますが、販路の開拓や関係維持のコストを考えると、ベンチャーが真似すべきではありません。

まとめると、SaaSベンチャーは、Sansanさんやラクスさんから学べることはたくさんあると思いますが、サイボウズのやり方はあまり意識しない方がいいと思います。あくまでもパッケージ製品から始まった、ある一企業のやり方であり、参考程度にとどめるのがよいのではないでしょうか。


質疑応答

「パッケージ版からSaaS版に移行していく上での障壁は?」

一番は、24時間365日の運用サービスを提供するための体制作り、風土作りでしょうか。パッケージ屋は売り切り志向が強いので。(苦笑)

「SaaSプロダクトでパートナービジネスを成功させる秘訣は?」

やる気のあるパートナーをいかに見つけ、伸ばしていくか。長期的な視点が大事ではないでしょうか。

「過去にあった事業課題とそれを乗り越えた方法は?」

パッケージを販売していたパートナーの理解と共感を得るには、かなり時間がかかりました。クラウドを売ると、単価の高いサーバー製品が売れなくなるわけですから、パートナーにとってもモデルチェンジは大変だったと思います。

「難易度が高い分のそのモデルの優位性は?」

「低価格のSaaS/PaaSを間接販売」するのは、難易度が高い分だけ参入障壁になると期待しています。言い換えると、一度導入されると、競合にひっくり返されることなく長く使ってくれるんじゃないかと。

「低価格であることと間接販売であること、どっちが大変?」 

SaaSベンチャーにとって間接販売は難易度が高いです。サイボウズはパッケージ製品の販路として販売網を開拓済みでしたので、それをクラウドに活かせました。やはり特殊なケースと言えるでしょう。

低価格製品であっても、コストを抑える勇気があれば、黒字化はさほど難しくないと思っています。しかし、顧客が増えてくると、サポートや解約への対応などの手間が増えてくるので、低価格製品で持続的に売上を伸ばしていくのは簡単ではありません。


まとめ

ざっくりまとめると、SaaSベンチャーは、低価格で勝負せず、しっかり価格をつけるとともに、それを直販で売れる営業体制を作る! こちらが基本戦略ではないかと思います。


追加の質問がありましたら、Twitter (@aono) まで!


いいなと思ったら応援しよう!