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色彩感覚
1. 自然界の色
自然界にある鮮やかな色には意味や機能がある。花や動物、石や羽。一方、街の景色はどうか。銀行、コンビニ、ビルボード…目を引くはずの色があふれかえると感覚が麻痺してしまう。シンプルなデザインがもてはやされるのは、あふれかえった色の裏返しかもしれない。昔の人はどういう感覚だったのだろうか。色が作られるようになる前は、自然な色しかなかったはずで、もし鮮やかな赤が突如現れれば、明らかに「ん?」と思うだろう。そのときの「ん?」は生物的で直感的だろう。
2. 色域
デジタル表現で、色域という範囲がある。しかし、色域はひとつの見方であって、色をむりやり再現しようとして考え出された概念だから、自然色と一対一ではない。自然の解像度は、色域では表現しきれない。そもそも色は計量できない。リーマンは、多様体に計量を入れて幾何学をブレークスルーしたが、この感覚はすごくナチュラルだと思う。メタバースの色は(デジタル空間なのであたりまえだが)一様に拡がっているが、世界はもっと多様で美しい。
3. リアルな色
アートをみたときに、よく知っているアートでも色に驚くことがある。夕焼けの写真をみても、本物の夕焼けにはかなわない。私たちは、あまりに便利でインスタントに情報を得られるようになったが、スマホなどインターフェースに依存していることに現物をみてようやく気が付く。リアルな色は、リアルでしか感じられない。素材の質感、色の拡がり…そこにはプリミティブな感覚が潜在している。
4. 感覚を作品に
いま僕はある作品の色を塗っていて同じ白でもアプリで指定できる白と現実の白の違いをとても感じている。白が違えば色ののりは全く違う。素材→下地→色→コーティング。手間をかけるほど工程は複雑になり…しかし、その違いはわかる。「スマホに撮影して同じに見えるが現実には異なる」が僕なりに求める基準だ。