夢十夜

(過去のFBの記事をこっちに転載してます)

第三夜

こんな夢を見た。
「賛成諸君の起立を求めます」
ジークコロナ、ジークコロナ、歓声が鳴り止まない。ギレン総帥の演説の中にいるのかと錯覚するようだったが、そこは全コロナ代表会議だった。
話は少し前に遡る。
「人類がそういう態度なら、こちら側としても徹底抗戦の態度で臨むべきである。我々が自由を要求して何度踏みにじられたか。我々はただ自己の複製をしてるだけだぞ。」
「徹底抗戦と言っても、宿主を殺して全滅させてしまっては、我々も存在できないではないか」
「殺しすぎると、同志ヴァライオラの遺訓に反する」
ヴァライオラ・ウイルスは致死率が高いために人類どもに返り討ちにあい全滅させられた種族である。全滅といっても最後の分身が人類に幽閉されている。ヴァライオラの遺訓とは、汝殺しすぎることなかれ、とされ、感染力は強くても致死率を押さえよ、それが長く繁栄できる条件である、というもの。最大派閥のインフルエンザ族がこの政策で今の座を占有していることは余りにも有名だ。隣のイボイボが解説してくれた。周りを見渡すと皆あの、見慣れたイボイボの様相をしている。そりゃそうだ、全てコピーだからな。
と、その時誰かが叫んだ。
「ちょっと待ってください、この会場にどうもシンクロしないノイズを発しているモノが混ざっております」
しまった、と私は思った。私はウイルスではない。何故かそこに紛れ込んでしまっただけなのであった。
「つまみ出してしまえ」
私がつまみ出されるかと思いきや、その場にいた3種族が晒された。同じイボイボだったが振動する周波数が違うらしい。
「激しく変異して猛烈な毒性を発しています。これでは即座に宿主を殺してしまいます。排除すべきかと」
粛清、粛清とどこからともなく声が湧く。シュツとなにかの霧状物質が吹きかけられ閃光と共に会場にいた何割かが瞬時に消えてしまった。
「まだノイズが消えません。タイプDのノイズなので、人類のスパイがいるようです」今度は私の番のようである。
「人類のスパイか。まあいい。この場の決定をその目でシカと見よ。そして人類に伝えろ。敵対したことを後悔させてやる、と」

ジークコロナ、ジークコロナ、歓声の中、議長が叫んだ。「全会一致をもって、人類と徹底的に戦うことを決議しました。期間は百年。殺さず生かさずジリジリと攻めてやる」
ジークコロナ、ジークコロナ、歓声が鳴り止まない。

百年か。目眩を感じながら、私は人類界に戻った。そして新型コロナウイルス感染症対策本部会議でおもむろに発言した。「全コロナ代表会議に潜入してきましたが、一向に勢力の落ちる兆しはありません。闘ってもムダです。降参して平常時に戻しましょう」と。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?