夢十夜
(過去のFBの記事をこっちに転載してます)
第七夜
こんな夢を見た。
ベーシックインカム制度が導入されて、生活様式の変容を受け入れざるを得なくなった。これが「新しい生活様式」の意味するところだったのか、とようやく国民は気付いた。「これは大いなる実験であります」「新しい生活様式、新システムのためには辛抱と犠牲と実験が必要なのであります」総理の演説でのお決まりのフレーズである。ベーシックインカム…すべての国民に対して毎月10万円が支給される。最低限の生活を送るのに必要とされている額、という定義だが、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策とやらで特別定額給付金として支給された10万円が固定化した。当然、全国民に一人毎月10万円も支給して、国家財政が保つのか?という議論はあったものの、国民の支持は高く、制度の導入はあっさりと決まった。財源は赤字国債の乱発と水平保障。水平保障とは、国民はどんなに稼いでも構わないが、個人の取り分は月10万円でそれ以上は全て国家に没収され、ベーシックインカムの財源に充てられる。つまり働かなくても月10万円支給されるが働けばさらに10万円までは収入にカウントできる。水平を水兵にかけて、ネイベー政策と揶揄されている。「それはネイベー」が流行語大賞に決まったくらいだ。これにより経済格差と貧困という永遠の課題の解消が現実のものとなった。さらにこのネイベー政策は都市構造に劇的な変化をもたらした。月10万円で生活するというのがデフォルトであるため、当然ながら家賃と食費を抑えなければならない。不動産は没収されなかったので、持ち家に住むのは可能だが、持ち家は強制的にルームシェアさせられる。食料の確保のためには農地が必要である。東京に住んで高額家賃を払うという選択肢はもはや存在しない。何よりも牛を飼う牧草地を確保しなければならないからだ。一人一頭の牛を飼うのは義務では無いが国家衛生安全局より強く要請されている。牛を飼わないものは名前を公表される。なぜ牛を飼うのか?-それはコロナウイルス対策のためである、というのが国の説明である。新型コロナのワクチンはウシコロナウイルスから開発されたのだが、薬剤として接種してもその効果が見られなかった。ところが不思議な事に牛を飼う事によって直接の免疫効果が得られることがわかった。酪農家の新型コロナ発症率は実に0%であった。そんなこんなで地方への住民大移動が起こった。人気は北海道と九州沖縄で、夏は北へ、冬は南へと季節により住居を変えるのがトレンドである。コロナ禍での航空会社救済のため、飛行機は牛を飼っている証明書を提示すれば、乗り放題で費用は全て国家負担である。文化・芸術・スポーツもコロナ禍で回復できない痛手を負ったため、全ての娯楽も無償で提供される。
国民はパンとサーカスなる「新しい生活様式」を大いに享受し、凋落した。
凋落?堕落?没落?ん?どの言葉を使えばいいのだ?国語辞典を開かねば…と、そこで目が覚めた。
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