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感謝の効能
「ありがとう」は魔法の言葉だとよく言われる。
なぜだろう?
たとえ相手に対して感謝の気持ちを持っていても、それを言わなければ伝わらない。
だから感謝の気持ちを「ありがとう」という言葉に乗せて伝えることは大切だ。
しかし、なぜ魔法とまで呼ばれるのだろう?
もしも、あなたが電車で席を譲った時に、まるで当然のように座る人がいたら、どう思うだろうか。
譲らなきゃよかったと思うかもしれない。
その反対に、相手から感謝されたら、やっぱり譲って良かったな、と感じるのではないだろうか。
ところが、お金を払ってモノやサービスの提供を受けるとなると、話が変わって来る。
例えば、レストランで食事をする時に、お店の人に感謝する人もいるかもしれないが、割と多くの人はそうはしないだろう。
なぜなら、お金を払うのだから料理が提供されて当然と考えるからだ。
ところが、お店の従業員はお客さんに対して「ありがとうございました」と言うのだ。
もちろん、それはマニュアル通りにこなしているだけなのかもしれない。
しかし、お店側がそうしようと思わなければ、そのようなマニュアルにはならないはず。
本来、料理の提供と、代金の支払いは等価の交換であり、どちらかが上でも下でもないはずだ。
だから、お客が「料理を提供されて当然」と思うのと同じように、お店は「料金を支払われて当然」と思うはずだ。
しかし、店側は「ありがとうございました」と言う。
これは「料理の提供」と「代金の支払」という、あくまでも対等な取引であるけれども、その取引をしてくれたことに対して感謝を伝えているのだ。
そのたった一言。
それがあることで、私たちは気持ちよく帰ることができるのだ。
であれば、お客の側もお店に対して「ありがとう」と伝えるのはどうだろう。
そうすれば、お店で働く人も、気持ちよく仕事ができるのではないだろうか。
お互いに清々しい気持ちを共有することができるのではないだろうか。
それこそ魔法のように。