分散型スポーツメディア「Overtime」の急成長から紐解く、Z世代とスポーツ業界を取り巻く2つのメガトレンド
皆さんこんにちは。サイバーエージェント・キャピタルの片岡です🙋♂️
突然ですが、この記事を読んでくださっているということは、スタートアップが好きで、かつ同時にスポーツも好きだ!という方も少なくないのではないでしょうか。
自分自身も大のスポーツ好き(特に野球、サッカー、バスケなど)なのですが、昨年は新型コロナの影響で世界的にスポーツ業界にかなりの逆風が吹いていたこともあり、業界の動向をかなり心配しながら追っていました。
各スポーツ団体が生き残りをかけ数々の施策が打ち出されましたが、そのようなスポーツ業界が苦境に立つ今、アンドリーセンホロウィッツや著名スポーツ選手等の名だたる面々から資金調達を受け、Z世代を中心に急成長を遂げる、次世代のスポーツファンのための分散型メディア「Overtime」というスタートアップをご存知でしょうか?🤔
今回は、このスタートアップに関して個人的に面白いと思った部分と、その躍進の背後にある若年世代を取り巻く2つのメガトレンドについてご紹介&考察していきたいと思います!!📝
企業概要
🏢 企業名:Overtime Sports, Inc.
📱 サービス名:Overtime
🕊Twitter / 📸 Instagram / 📺 Youtube / ♪ TikTok
🗓 創業年:2016年
👨 創業者: Dan Porter(CEO), Zachary Weiner(Cofounder and President)
🌎 本拠地:New York, United States
💰 累計資金調達額:$140M (約150億円)
👥 従業員数:130名
Overtimeとは、端的に言うと、アマチュアスポーツ専門の総合メディアプラットフォームです。上記のように、YoutubeやTikTok、Instagramなどにそれぞれチャンネルを持ち、様々な動画を配信しています。ジャンルとしては、高校バスケから始まり、現在では他にも、アメフト、サッカー、eSportsなどカバーする領域を少しづつ拡大させています。
現在、毎月15億回以上の再生回数を誇り、全7プラットフォームでの総フォロワー数は4000万人を超えています。また学生スポーツが主なコンテンツであるため、35歳以下のユーザーが全体の88%を占めます。まさにZ世代によるZ世代のためのスポーツメディアといった様相で、若年層からの支持をガッチリ掴んでいることが窺えます。最近ではこの数年間でここで取り上げられてきた選手がプロに進んで活躍し始めるなど、新たな面白いストーリー展開も見られているようです。
サービスの特徴とビジネスモデル
Overtimeの特徴は、これまでのメインプラットフォームだったTVや新聞等では殆ど深ぼられることのなかった学生アマチュアスポーツの熱量、ストーリー、そしてチームや個々人のキャラクターなど、ユニークかつ専門性の高い領域の動画を配信しているという点です。これらのコンテンツは視聴者の熱量やニーズが高いにも関わらずこれまで広く拡散させる術を持たず、そのポテンシャルを活かしきれずにいました。
しかし、高画質な動画が誰でも簡単に撮影・編集しネットにアップできるようになった昨今においてついにそのニーズが満たされる環境が整いました。Overtimeは世界中に7千人のアマチュアクリエイターを抱え、それぞれの地域のアマチュアスポーツの試合に密着し、撮影・編集(専用のアプリも用意されている)された動画がOvertimeの各種アカウント上に投稿されるような仕組みを構築しています。
アプリや各メディア上には、Short,Medium,Longの3種類の長さの動画コンテンツが投稿されます。短尺動画の多くは、次世代を担うスター選手自身や一般人のファン、もしくは上述のクリエイターがハイライトを撮影し、15〜20秒のクリップとして公開されます。Midiumは4分程度の番組で、Longは10分から20分のエピソードシリーズです。
実際に上記のメディアから見ていただければ、それぞれの動画のクオリティの高さが分かるかと思いますが、特にLongのエピソードシリーズは自社制作ということもありかなり気合の入った作りになっています。下の動画は学生バスケ界の神童と言われ、高校生にしてインスタのフォロワー300万人越えのMikey Williamsも出演する3on3バスケのシリーズです。例えるならバスケ漫画スラムダンクの湘南vs豊玉の試合前のピリピリしたムードから試合までを現実で再現したリアリティーショーといった感じでしょうか(シリーズによっては恋愛要素まで赤裸々に取り上げています。スポーツ版「今日好き」みたいですね)。試合前の個人インタビューだったり選手間の様々なやり取りや友情構築を見聞きしているからこそ、試合での一挙手一投足やシュートが外れた際の悔しがり方一つにもより感情移入してしまいます。
また、Overtimeのスマホアプリでは、NBAやNFL、学生スポーツの試合速報及びスタッツ、そして動画や特集記事が見れるなど次世代の総合スポーツアプリを標榜しています。他にもPoolsというスポーツベッティング要素も盛り込まれているのも特徴です。
ビジネスモデル
Youtube等の広告収入も大きいですが、基本的にはデジタルコンテンツを通してグローバルなスポーツコミュニティを構築することを目指しています。若年層を中心としたその巨大なコミュニティにリーチしたいと考えるブランドと提携し、スポンサー料として収益を得るという流れです。テレビCMと大きく異なる点は、見たい番組を中断するコマーシャルではなく、彼らが見たいコンテンツの中にブランドを含めることで、楽しみながら広告を見てもらえる点です。
また、ブランド構築の一環として独自のアパレル商品を開発し、自社ECサイトにて直接的な販売収入を得ています(デザインもかなり洗練されています)。
WHY NOW?-なぜ急成長しているのか-
以上のような多種多様なコンテンツを展開し、若者から支持を獲得しつつあるOvertimeですが、何故今ここまで受け入れられつつあるのでしょうか。
提供しているサービスに関しては上述した通りですが、それ以外にも、スポーツメディアビジネスとZ世代に関する2つのメガトレンドが関係していると個人的に考えています。
メガトレンド その①:多くのトップスポーツリーグやスポーツ専門チャンネルの視聴者数の減少傾向と高齢化 📺📉まず前提として、スポーツリーグの最大の収入源はテレビ等に関連する放映権料です。ここ数十年、オリンピックやW杯のような国際大会や米欧中日のプロスポーツリーグを中心に放映権料は継続的に増加しています。その主な要因は、メディア権やスポンサーシップ収入の急増です。ここ数十年、オリンピックやトッププロスポーツリーグを中心に放映権料は継続的に増加しています。例えば、世界で最も収益を稼ぎ出すプロスポーツリーグであるNFLの放映権料収入は1997年の11億ドルから2017年には73億ドルに増加しています。このような放映権料の高騰に対応して、多くのプロスポーツチームの価値や選手年棒も高騰し続けています。Forbesが発表しているランキングでは、NFLのダラスカウボーイズが世界一位となり、そのチーム価値は57億ドルと、1989年の1億5,000万ドルから40倍弱にまで高騰しています(ちなみにメルカリ社が広告出稿したNFLのスーパーボウルのハーフタイム間CMは30秒枠でなんと550万ドルもの予算がかかっているとのこと!💸)。これまでは既存メディアでの高い視聴率、そして広告効果が見込まれていたためこのような高騰が許容されてきた側面があります。
このように一見絶好調のように見えるスポーツビジネス業界ですが、その根幹である放映権料を担保している、テレビ視聴者自体が若者を中心に減少しています。スポーツ中継に関してこの傾向は特に顕著です。
2020年はコロナ禍の影響もあり数々の制限がある中でシーズンを迎えたリーグも多かったため視聴者数が減少したのは仕方ないことかと思います。ただこのトレンドは昨年新たに始まったものではなく、2010年代から顕著に表れていた世界的なメガトレンドの一つなのです。例えば、ディズニー傘下で世界最大のスポーツメディアであるESPNの契約者数は2011年に1億人を超えたのをピークに一貫して減少傾向にあります。
ちなみに、日本を例にとっても若年層を中心にスポーツの視聴環境がテレビから、モバイル端末中心に変わってきていることに変わりありません。
この背後にあるのは、従来のケーブルテレビ等による視聴体験から、よりオンデマンドなストリーミング・プラットフォームや短尺動画メディアへの移行というトレンドです。
若者たちは他の世代と同様、スポーツが好きだという人は少なくありません、ただその楽しみ方がこれまでとは違うだけなのです。
個人的にも以前より最近は特別な試合以外をフルで視聴することはかなり減ってしまったなと体感しています。
「ミレニアル世代は、テレビを見ないし、テレビを持っていないし、ケーブルテレビにも加入していない。だからこそ、そのような視聴者を取り込まなければならない。」と、NFLのニューイングランド・ペイトリオッツのオーナーであるロバート・クラフト氏は2017年のインタビューで語っています。これはOvertimeが誕生した翌年のことです。
メガトレンド その②:Z世代の行動・思考傾向から生じる新たなニーズ ⏳💭
Z世代の定義は国や機関によって様々なのですが、基本的には1995年~2000年代にかけて生まれた世代のことを指し、現在世界人口のおよそ3分の1を占めています。そのZ世代から厚い支持を得つつあるOvertimeですが、その背後には、「集中力」と「共感」という2つのキーワードが隠されていると個人的に考えています。
まず「集中力」に関して、これは「テレビからモバイルへ」という流れの背後にある要因の一つかもしれませんが、基本的にZ世代は一つのコンテンツに集中力を注ぎ続けることが他の世代と比べて苦手な傾向が見られます。
人類史上初めてのデジタルネイティブ、そしてスマホファースト世代である僕たちZ世代は、物心着いた時からデジタルデバイスに触れ続けてきていますが、ここ10年でニコ動、Vine、Twitter、Youtube、Snapchat、Instagram、そしてTiktok等々膨大な数のエンタメコンテンツをレコメンドされ続け、それらを日々大量に消費してきています。そのため数時間単位で一つのコンテンツに集中するということに合理性が無くなってきているのではないでしょうか。しかも最近はより短尺かつパーソナライズドされたコンテンツも多く、余計その傾向に拍車が掛かっているような感覚があります。また、集中力が続きづらい原因の一つとして、Z世代は他の世代に比べてよりマルチタスカーであるという傾向も関係してそうです。Z世代の多くは常に様々なコンテンツを行き来しているため、どうしても一つのコンテンツあたりの可処分時間は分散されてしまいがちです。
「子供たちは15秒以上のコンテンツは受け付けないという誤解があると思いますが、そんなことはありません。彼らはNetflixの番組は喜んで見ています。しかし、NBAの試合やスーパーボウルを3時間も連続で見たいとは思っていません。子供たちはスポーツが好きだけど、既存のスポーツメディア企業が力を入れてきたメインコンテンツを欲しているわけではないのです。」、「ライブではなく、ストーリー形式で伝えたり、ハイライトを流したりして、視聴者が望む形で提供した方が、より多くの子供たちや視聴者の関心を集めることができると考えています。」と創業者の2人は語っています。
次に「共感」の部分に関してです。前述のようにデジタルネイティブ世代とも言われるZ世代ですが、このデジタル化の進展と同時に個人のエンパワーメントがここ10年ほどで一気に進みました。そのような中で個性を色濃く発信するインフルエンサーという存在が誕生し、今では当たり前のものになりつつあります。SNSと影響力を持った個々人、この2つを通して様々な意見に日常的に触れることにより、Z世代は他の世代と比較して多様性に寛容であり、変な脚色のないリアルなものなのかどうかということへのこだわりが強い傾向が見られます。
Z世代とは往々にして清廉潔白で完璧な既存のスーパースターではなく、人間味に溢れ、よりリアルに感じられるような、どちらかと言うと友達に近いインフルエンサーに対して共感を示すのです。
Overtimeでは、既存のスポーツメディアでは深堀りすることのできていなかった、リアルなアマチュア選手個々人たちの人間性やストーリーに触れることができます。友情、恋愛、キャリアなど、自分自身と似た等身大の葛藤を抱える将来のスターに共感し、直接応援することができる...、これがZ世代を中心とした若年層ユーザーから支持を集めている理由の一つかと思います。
また、これまでのコンテンツ像としては、あくまで試合が主であり、選手個人の練習風景やプライベートなどはあってもおまけのような扱いでした。しかし今後若いファンを獲得していく上では、より個性が見える、後者のような発信から共感を生み出していくことが以前に増して重要になってくるのはほぼ間違いないでしょう。
スタジアムでの現地観戦という非日常的な体験は今後も支持されるかと思いますが、そこでもZ世代は観戦しながら選手のインスタアカウントを見たがるでしょうし、ましてや3時間の試合をテレビでただ漫然と観るより、5分のハイライトと選手個々人の活躍やインタビューを抜き出したクリップをスマホで観ることを若者は好みます。
下のスクショは恐らく日本のプロスポーツチームの中で最もチャンネル登録者数が多い読売ジャイアンツのチャンネルの再生回数上位の動画です。
これを見て驚くのが、権利的な事情で試合自体のハイライト動画はアップされていないにも関わらず、これだけの人気(登録者数40万人越え、コンスタントに10〜数十万再生)を獲得しているということです。これまでテレビで取り上げられることのなかった選手たちの素顔やチームの雰囲気が見て取れる短尺のちょっとした日常系動画でも、これだけの人々に求められる程のポテンシャルを秘めているのです。
NFLのCMOを務めるブラウニング氏は「若者たちはまずアスリートを追いかけ、次にクラブチームを追いかけ、さらにリーグを追いかけている。ここにスポーツ界の変化が見られる。」と言います。
※ちなみに、上記のように選手やチーム、そしてリーグ自体が、個性やスタンスをしっかり示しすことで若年層からの支持を伸ばしているのがNBAです。リーグのコアファンの40%は35歳以下で、SNS上には約1億4,800万人のフォロワーがいますが、これは米国の他の主要スポーツリーグを合わせた数よりも多く、過去3年間でSNSでの閲覧数を43%増加させることに成功しています(この辺りの細かい施策や選手個人の動きに関してはどこかで別途アウトプットしたいと思ってます)。
創業者紹介
Overtimeは2016年にNYのブルックリンにて、ダン・ポーター氏とザック・ワイナー氏によって創業されました。
CEOのポーター氏は、幼少時代からスポーツと音楽が大好きだったと言います。大学を創業後は教育業界でキャリアをスタートさせましたが、その後いくつかの業界、企業で経験を積み、一社目の起業に至ります。彼が立ち上げたOMGPopというスタートアップはYコンからも出資を受け、最終的には、Draw Somethingというゲームが大ヒットしたことで、Zyngaに1億8000万ドルで買収する程の成功を収めました。
その後世界最大のタレント代理店のWME(ウィリアム・モリス・エンデバー)社に誘われ、そこでデジタル部門のトップとして、eSportsチームやCVC(ここでGlossierやSpliceへの投資もしていたらしい)の立ち上げ、そして数多くのインフルエンサーのマネジメントに従事します。そのような中で欧米のスポーツリーグと対話を重ねるうちに、若者のスポーツ中継離れという切実な課題に触れ、Overtimeのアイデアを思いついたといいます。
ポーター氏にとって、50代での新たな挑戦ですが、共同創業者として迎え入れたのは20代のワイナー氏でした。WMEで勤務する前にスポーツ系メディアで起業していた彼は、若者のスポーツの楽しみ方に変化の兆しが見られることに早くから気付いていたとのことです。
情熱と実績のあるチームで創業したOvertimeですが、当初はかなり資金調達に苦戦したそうです。ポーター氏曰く、これまでのExit経験等を鑑みて投資家がすぐついてくれるものかと思っていたが、実際はかなり懐疑的な見方をされたと言います。ESPNのような圧倒的なコンテンツパワーを持つような強豪が参入してきたらどうするのか、という問いに対しては自らの強みは双方向的なコミュニケーションへの強い意識と若者世代に愛されるブランディングやコミュニティ構築ノウハウにあると喝破しました。ポーター氏は、「これらの企業は、『オーバータイムは高校バスケだから、高校バスケの番組をテレビで放送しよう』と考えています。彼らが見逃しているのは、私たちが年間25万件以上のInstagramのDMやコメントに返信していることです。私たちはフォロワーとコミュニケーションすることを専門とするスタッフを抱えています。」と自信を見せています。
ファイナンス
初回のラウンドは2017年でしたが、苦労の末Greycroftや元NBAコミッショナーのDavid Stern氏からの出資を得ることに成功しました。
その後大きかったのは何といってもAndreessen Horowitzからの出資が決まったことでしょう。担当キャピタリストはパートナーのJeff Jordan氏。BCGやウォルトディズニー、eBayで経験を積み、Paypal等でPresidentを務め、a16zに参画後はAirbnb、pinterest、Affirm等々を含めた凄まじい実績を持つ人物です。また、彼はTech業界の若者とベテランをつなぐバスケ会を定期的に開催する程のスポーツ好きでもあります。
また、株主を調べるとNBAを中心としたスーパースター選手やインフルエンサーを株主に迎えるといった直接的な事業シナジーを生むような調達戦略も垣間見えます。
創業から5年目の今年3月末の調達では、約280億円のポストバリュエーションで80億円を調達しています。
#1 Seed
日付:2017年2月
調達額:$2.5 million (約2.5億円)
バリュエーション(pre money):pre $5M (約5億円)
株主(太字がリードインベスター):
Greycroft Ventures, 645 Ventures, Fitzgate Ventures, David Stern, Correlation Ventures, Alpha Horizon, TACK Ventures, Chaac Ventures, Edward Lando, Jordan Levy, Ken Miller Capital, Afore Capital,Rogue Insight Capital and other undisclosed investors
#2 Series A
日付:2018年2月
調達額:$9.5M
バリュエーション:$20.5M
株主:
Andreessen Horowitz, Barrier Island Capital, Horizons Alpha, The Durant Company, Imagination Capital, Afore Capital, Greycroft, 645 Ventures, Fitz Gate Ventures, Correlation Ventures, TACK Ventures, Chaac Ventures, BoxGroup, Jordan Levy, Kevin Durant, David Joel Stern, Geoff Yang, Michael Spirito, Rich Kleiman and Ken Miller Capital
#3 Series B
日付:2018年12月
調達額:$23M
バリュエーション:$52M
株主:
Spark Capital, Macro (Media Platform), MSG Networks, Permian Bank Capital, Calm VC, MaC Venture Capital, PROOF (Virginia), Melo7 Tech Partners, Andreessen Horowitz, Sapphire Ventures, CLF Partners, Gaingels Syndicate, Victor Oladipo, Carmelo Anthony, Baron Davis and Blue Pool Capital
#4 Series B
日付:2020年7月
調達額:$25M
バリュエーション:$75M
株主:非公開
#5 Series C (最新)
日付:2021年3月
調達額:$80M
バリュエーション:$200M
株主:
Sapphire Ventures, Black Capital, Dentsu Ventures, Pelion Capital, The Blackstone Group, PROOF (Virginia), Drake, Devin Booker, Trae Young, Klay Thompson, Chiney Ogwumike, Alexis Ohanian, Pau Gasol, Jeffrey Bezos, Morgan Stanley, Bezos Expeditions, 10X Capital and 23 other current and former N.B.A. stars
今後に関して
いくつかのインタビューでも言及されているように、Overtimeが長期的な目線で構想している世界観は「次世代(若者だけでなく新しいスポーツの楽しみ方を求める全ての人)のためのグローバルスポーツブランドとそのコミュニティの構築」にあります。
その壮大な目標の実現のために、既存のサービスに加え、いくつか新たな施策を打ち出し始めています。
スポーツジャンルと対象地域の拡大
当初アマチュアバスケから始まったOvertimeですが、その後アメフト、サッカーをメディアブランドに加え、スポーツ産業の中で最も成長著しい分野であるeSports領域にもメディアブランド構築やチーム買収を通じ進出し始めています。
また、現状はアメリカで人気なスポーツにコンテンツが集中していますが、将来的にはよりグローバルで、各地域のアマチュアスポーツに進出する構想を持っているとのことです。まさに次世代のスポーツメディア帝国といった様相ですね。
自社IPの構築
なんと、Overtimeではアマチュアバスケの新リーグ設立に向けての取り組みがスタートしています。今年9月には、男子高校生のトッププレーヤーによるバスケットボールリーグ「Overtime Elite」が開始される予定です。
このリーグは、約30名の未来のトッププロスペクト選手たちがリーグ戦を闘いながら、世界レベルのコーチング、最先端のスポーツ科学とパフォーマンス技術、一流の施設、高校卒業資格取得のための学業等を組み合わせた年間を通じての育成プログラムを提供するというもので、各選手のプロへの道のりを支援する仕組みになっています。
各選手は、最低でも年間10万ドルの給与が保証され、それに加えてボーナスやオーバータイムの株式を取得することもできます。また、オリジナルアパレル、トレーディングカード、ビデオゲーム、NFTなどの販売を通じて、自らの肖像権を使用した収益を得ることができます。また、プロとしてのキャリアを歩まない場合は、大学の授業料として最大10万ドルの支払いが保証されるとのことです。
このような選手本意かつ、新しい形のIP創出は個人的にかなり有意義かつ面白いんじゃないかと思っています。他スポーツにも応用が効きやすいようなモデルでもあるという印象ですが、この取り組みがある程度上手くいけば実際に他スポーツにも横展開されるのではないでしょうか。
このような全く新しいIPの創出によって、スポンサーシップ、ライセンス契約や物販などを通じて、新たな収入を得ることができるとOvertimeは期待しているとのことです。
個人的な感想
全体的に、本当に時流に上手く乗ったサービスだなという印象を持っています。より短くて質の高い(ただ単に画質が良いとかだけでなく)動画にコンテンツ消費の軸が移っていく流れは今後もある程度続いていくと考えていますが、そのような中長期的なトレンドの中で、Overtimeは更にグローバルに拡大する余地を秘めていると考えています。
ただ、プロではない高校生をはじめとしたアマチュア選手にフォーカスすることによる弊害も今後必ず増えてくるかと思います。一般人が国を超えた数百、数千万人のフォロワーに対して発信力を持つという状態はひと昔前では考えられないことでした。これは確実に選手個々人に対してメリットとデメリットの両方をもたらします。SNS等を発端とする、若年層を中心とした精神的なものを含め様々な問題が生じてしまっていることは既に周知のことでしょう。
個人的にOvertimeにとても好感が持てるのは、アマチュア選手たちに多くの可能性を与え個々人をエンパワーメントしているだけでなく、影響力を持つことによる負の側面を取り除こうと企業として取り組んでいる点です。例えば上述のOvertime Eliteでは、自らの影響力の取扱い方や金融リテラシー等に関してもしっかり教育する仕組みが用意する予定だと発表されています。
個人的にこのようなアマチュアスポーツにフォーカスしたサービスが日本にも出てきたら面白いんじゃないかと思っています。そもそも日本はNPBをはじめとしてなかなか大きなスポーツリーグを抱えていたりと、世界的に見てもスポーツ市場の規模はかなり大きく、ある程度の素地はあると見ています。
そして、甲子園や冬の国立や花園、もしくは駅伝や六大学野球など、アマチュアスポーツに関しても、それぞれ数多くのドラマと歴史を持ち、国民に長く親しまれてきました。最近ではeSportsの盛り上がりも合わせて、このようなアマチュアスポーツを更に深ぼりたいというニーズはある程度あるのではないでしょうか。自分自身昔から熱闘甲子園を見る度に、こういう選手たちの情報をもっと深ぼってくれる番組か何かがあればいいのにな〜とずっと思ってきましたし、より選手やチームにフォーカスした情報源を合わせて試合やスポーツ全体を楽しみたいというニーズがあります。
上述したような選手のプライバシーや影響力をどう扱っていくか、既存の関係各所との兼ね合いなど様々な課題はあれど、こういったサービスがアマチュア選手たちの可能性を大幅に広げつつ、各スポーツ業界の発展に寄与する可能性が大いにあるというのはOvertimeの例を見れば明らかです。
是非こういったメガトレンドやニーズに挑戦してみたいという方がいれば一緒にディスカッションさせていただければ嬉しいです。いつでもお気軽にお声がけください!!
TwiitterのDMも開放してます🤟
ではまた次のNoteでお会いしましょう!🙋♂️
【参考/引用文献】
Jeff Bezos, Drake and others invest $80 million in sports media company Overtime
Spark invests in Overtime
Overtime Co-Founder Zack Weiner On Evolving Nature How Fans Consume, Share Content Socially
Dan Porter Interview, CEO of Overtime
Overtime Aims To Be Next ESPN For Generation Z
Overtime SZN Programming Targets Gen Z’s Football Woes
Overtime Buys Fortnite Team to Double Down on Esports Content
Overtime’s Instagram Strategy Strongly Resonates During Coronavirus Pandemic
Overtime Is an Example of Building Audience Before Product
Episode 32: Dan Porter and Zack Wiener, co-founders of Overtime, the digital sport platform, on the launch of their disruptive new pro hoops league, Overtime Elite, and their formula for growing Overtime’s community.
Overtime CEO Dan Porter on why Gen Z is never subscribing to your OTT service
Real Talk With Dan Porter of Overtime
Ex-NBA Commissioner David Stern Invests In Overtime’s $2.5 Million Seed Round
Overtime Raises $80 Million From Jeff Bezos, Drake, NBA Stars and Others
Updated ESPN Subscribers and ESPN Revenue, Explained
This founder who sold a startup for $200 million wants to build the next ESPN out of smartphone footage
The Rise of Short-Form Video & the Gen Z Social Revolution
We are wrong about millennial sports fans - McKinsey & Company
More Young Japanese Tend Not to Watch TV: Jiji Poll
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The Sports Industry’s Gen Z Problem
Reaching Gen Z Through Influencer Marketing
How Overtime is building sports media for Gen Z
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