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人生の移動手段

大学3年の春がやってくる、少し前の話。

私は「ある重大な、勇気のいる決断」をした。

その「ある重大な、勇気のいる決断」を1週間後に迫った、ある日の朝方のことである。


私はその「ある重大な、勇気のいる決断」に至るまでに必要な道を、
原付を飛ばしながら巡っていた。

始めて通る道。まだ慣れない原付の運転。
やはり「ある重大な、勇気のいる決断」は並大抵ではないのだなと、
1週間前から感じてしまった。


少し運転に疲れた私は、運転中に見つけた初めて見る本屋に立ち寄った。

「ある重大な、勇気のいる決断」の参考になりそうな本があるかもしれない。

そんな軽い気持ちで足を踏み入れた。


数分でお目当ての本を見つけることができ、レジへ持っていく。

その時である。

外から甘い匂いが店内に漂ってきた。

レジは出入り口のすぐ近くにあるため、その匂いを存分に嗅ぐことができた。
まるで犬のように。猫のように。

どこか懐かしい匂いだ。外には人だかりもできている。


急いで会計を済まし、外に出てみた。

そこには、さっきまでなかったメロンパンを売るバンが人々を魅了させていた。

本を買いに来た人達なのに、こうも魅了されるんだな。経済学に使えそう。

経済学部の私はそう感じたのだった。


私も1つだけ購入し、原付にまたがりながらメロンパンを食べる。

味は普通より美味しいくらい。だが、こういった場所で食べる物は美味しく感じる。
海でラーメン屋や焼きそばを食べるみたいに。


「ある重大な、勇気のいる決断」のために原付を購入したのだが、まさかこんな出会いがあるとは。


原付がなかったら、家からこんなに離れた場所には来ないだろう。
小さな幸せを与えてくれた原付に感謝だ。


何かを決断すれば、それに応じて行動も変わる。身の回りにあるものも。

この「ある重大な、勇気のいる決断」は、大袈裟に言えば、
私の人生を変えた。結果的にも。小さな出会いからも。


それは原付を買ったから起こったことだが、決断がなければ起きなかったことだ。

今回の私は原付に乗って運命を変えられたが、皆さんはどんな移動手段で人生を動かすのだろう。

車なのか、電車なのか、飛行機なのか、はたまたロケットになるのか。


私は、原付もいいがやはり、徒歩で人生を動かしていきたい。

ときに勢いよく人生を動かしたくなれば、ランニングかダッシュに切り替える。

でも、なるべくマイペースに、ゆったり歩いていきたいな。

そんなお話。

#メロンパン #ショートショート #人生


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