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コーヒーロシアンルーレット

コーヒーの好き嫌いが激しい。

毎朝コーヒーはエスプレッソしか飲まない。

なぜエスプレッソ?
それは余分なものが入っていないから。

余分なものと言っては、
マキアートやカフェラテ好きに怒られてしまいそうだが、

私はミルクやクリームが入っているコーヒーを見ると苦しくなる。

まるでその甘ったるいミルクやらクリームやらに埋もれたみたいに。


...でも、それはそれで情景が面白い。


妻と私の間に子供はまだおらず、

いるのはスコティッシュフォールドの「スコ」だけ。

まだ小説家として安定した収入が得られたわけではないので、子供はまだ作れない。

私みたいな人が増えて少子化が進むのかなと考えることがあるけれど、

自分が好きなように歩むのが人生だと、割り切っている。

妻は仕事に就かず、家事全般をやってくれている。

決して裕福ではないけれど、この生活が私は好きだ。


今は朝7時。
小鳥も鳴きだした。

スコはそんな小鳥と友達になりたいのか、ずーっと木を見ている。

妻はキッチンで朝食の準備をいている。
私は家事全般が苦手だから、そんな彼女を尊敬している。


人間誰しも得意なものはある。
だからどんなに愚かで、傲慢で、非常識な人間でも、私に持っていない何かを持っているのなら、私はその人を尊敬するだろう。


キッチンから妻が朝食を運んできた。

今日も変わらない朝食とカプチーノが運ばれてくると思っていた。


しかし、今日の朝食の情景は一生忘れられないと思える衝撃的な情景が、私の目の前に運ばれてきた。

事実、この情景は死ぬまで私の脳裏に焼き付き離れなかった。



その情景とは、9つの種類のコーヒーが一つのお盆に乗せられたものだ。

なんでも、妻はコーヒーでロシアンルーレットをしてみたいらしい。

他の人ならただの飲み比べになるのだが、私に限ってはエスプレッソしか飲めないのだから、ロシアンルーレット。


妻が笑顔で薦めるものだから、仕方なく目隠しをした。

私は妻に甘いのだ。
恐らく、エスプレッソの上に乗っているミルクやクリームくらい。

9分の1の確率。

エスプレッソ以外飲めないわけではない。恐らく。


実は、生まれてこの方、エスプレッソしか飲んだことがないのだ…

ただ独断と偏見で他のものを飲みたくないだけで、

おそらく飲めないわけではない。


覚悟を決め、一番手間へのコーヒーを選んだ。

こぼさないよう、そっと口に含んでみる。


「あ、美味しい」


でも、これはエスプレッソではない。

おそらく、クリームとミルクがふんだんに使われている、カプチーノだ。


こんな美味しかったのか。


私は人生を損していたな。

人はどんな人でも尊敬できるのに、
なぜコーヒーは受け入れさえしなかったのだろう。


偏見は人生の幅を狭くする。

いい発見だ。

偏見の発見。新しい小説のタイトルが思いついた。


スコはまだ小鳥を見つめている。
小鳥にどんな感情を抱いているのか、聞けるものなら聞いてみたい。


#ショートショート #小説 #日常 #エッセイ


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