桜が散るように
まだ4月になったばかりだが、この公園の桜はよく咲いている。
公園と言ってもここは庭園みたいなもので、この季節になると県外からも多くの人が桜を見に来る。うちの県にとっては観光地みたいなもので、それを紹介できる私は鼻が高い。
そんなちっぽけな自己満足に浸りながら、桜を横目に見ながら、私は歩みを進める。
もう日は暮れ、桜もライトアップされている。人も多くなってきた。
人混みが少し鬱陶しくなってきた。あまり得意ではない。
でも今日くらいはいいか。
今日はある人をここに招待するためにやってきた。普段はあまり足を運ばないこの場所に。
その女性は私のちょうど目の前から小走りで寄ってきた。軽く挨拶を交わし、一緒に歩き始める。
他愛のない会話をしている時によく思うことがある。
「この時間が一生続けばいい」ということ。
ドラマや小説、演劇やアニメーション。それらで使い古された言葉だが、この言葉以外に思いつかなかった。
そしてこう思うことは同時に、「この時間は一生じゃない」ということも表しているのだ。
時間は有限、時間は平等とはよく言ったものだ。
人間の掟である。
桜が散ってしまうのと同じように、人間の命もいつかは無くなってしまう。
桜は散っても、木は根っこと脈をを力強く保ち、再び桜を咲かすが、
でも人間は、脈が動かなくなり心臓が止まる。そして再び命を宿すことはない。
なら、今を大切にしよう。1秒1秒を楽しく生きよう。隣で笑ってくれる誰かのために。今まで育ててきてくれた両親のために。私を必要としてくれる誰かのために。
公園の桜は満開で、誰かの笑顔の花を咲かせている。
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