最愛なる堕天使 - 第6章 絶頂のクリスマス
yoshiです。今回は、俺が元カノと付き合った中で最も元カノを楽しませたと自負している、「2年目のクリスマス」の話です。1年目はというと、まったく面白くなかったのでスルーしています。
ーーー 雪が降りしきる北の大地。俺と彼女は、指定席の電車にのって雪景色をかけぬけていた。クリスマスデートを楽しみにはしゃいでいる彼女の姿を見て、俺はほっこりとしていた。
<クリスマス前>
俺は、クリスマスデートのために入念な準備をしていた。
まず、今回の会場は「札幌」だ。札幌とは、日本の北国である北海道の主要都市だ。北海道は広いので、俺たちの住んでいる地区からは移動に2〜3時間かかる。
俺は今回、全て自分でデートプランを考えた。おそらくネット記事にでも書いてある、
「彼氏がデートプランを考えてあげよう」
という情報を鵜呑みにでもしたのだろう。
だが実際、いままでのデートはほとんど彼女のおばあちゃんの家か、俺の家。外にでかけるときは大体彼女からの提案であった。正直、デートプランなんて考えるのは面倒くさかったのだ。
彼女からは何度か文句を言われていた、たまには何か考えてくれと。当時は面倒くさいながらも罪悪感は抱いていた、だが今となってはそれが正しかったんだとしみじみ感じる。
そして2年目のクリスマス、重い腰を上げ、俺は初めて行動に移した。俺は基本面倒くさがりだが、やるときは徹底してやる。
ここでは俺がいかに完璧なデートを繰り広げたか、その全工程を紹介する。もし諸君が彼女とのデートプランをどう決めれば良いか迷っているのなら、是非これを参考にしてくれ。ここまで完璧な準備ができていれば、複数人の彼女がいる人も、同じように繰り返し使えるので便利だぞ。
※これと同じようにやれということではないので注意。ここに書いているのは実際に俺がやったこと。そしてそのやったことに対する気づきを書くので、それを見て各自判断してくれ。
(1) デートスポットをググり、全てのデートスポットを網羅する
デートする地域の人気スポットを検索し、4~5個のサイトを見る。順位と特徴を一言でまとめながら、全てのデートスポットを書き上げる。
(2) 彼女が喜びそうなデートスポットを絞り込む
まとめたデートスポットの順位や特徴を加味して、彼女にとって適していると思われる場所、わからなければとりあえず人気順位の高い場所を10ヶ所程度まで絞り込む。
製作体験などがあるとより仲が深まるし、それで完成した作品を思い出の品として持ち帰れるとなお良い。
(3) 最適な経路を考えてデートスポットを確定する
絞り込んだ全てのスポットを地図で調べ、遠いものを除外したり、距離感や行く順番を加味して、スムーズに動けるスポット4~5ヶ所に確定する。行く順番としては、「昼食→観光(1~2ヶ所)→夕食→クライマックス」という感じ、ご飯は食べすぎないように注意。
※俺たちは学生だったので、もちろん昼食も夕食も割り勘だ。観光についても基本的に無料で行ける場所。俺がかけたコストと言ったらクリスマスプレゼントくらいだが、実際このプレゼントも演出がメインであり、もっと安くても良かっただろう。このプランは中星マインド的にも問題なく使えるのだ。
※また、なんだかんだいって観光は面倒くさいしあまり楽しくない。なので適当な場所でよく、一緒に歩いたり見たりするということが重要だと気づいた。
(4) 確定したスポットに入場する時間、そして滞在時間を決める
タイムスケジュールだ。移動の時間や、ゆっくりする時間、遅刻、喧嘩などによる遅延も考慮して余裕を持ったスケジュールにしておく。逆に早く進んでしまったときのため、予備の観光スポットを設定しておくのもよい。
※忘れないよう、スマホなどにちゃんとメモしておこう。俺はというと、エクセルで作ったスケジュールを印刷して持ち歩いていた。
(5) 下見、リハーサルをする
たまたま資格試験があって札幌に行く用事があったので、ついでに下見をした。計画した経路を実際に歩き、歩きにくい道や交通量が多く危ない道を把握する。カーブや横断歩道の場所を意識し、常に車道側を歩くための立ち回りをリハーサルした。
俺には彼女を守るという使命がある。だからこそ、彼女といるときはボディーガードのごとく、常に周囲を見張ったり、常に彼女が見える位置にいたり、常に車が突っ込んでくる可能性も意識していた。「かもしれないデート」の極みである。
一度、某デパートで俺がトイレに行ってる間、彼女が勝手に化粧品を見にふらっと消えてしまったことがある。LINEをしてもなかなか反応してくれなかった。俺はそれだけで「誘拐」を疑って必死に探しまくったという話もある。見つけた暁にはちゃんとブチギレた。
そして夕食のお店にまで行って、改めて営業時間を確認。完璧な準備であったように見えるが、ここで予約をしなかったことが、のちに仇となる。
(6) プレゼントを準備する
1年目のクリスマスプレゼントはマフラーだった。しかも、普通にカフェで会ってわたすというだけ。お話をして、イチャイチャして帰るというなんとも平和なクリスマス。
だが今回は、もっとインパクトを与えたかった。特大ハピネスを与え、忘れられない思い出にしてほしかった。
今回のプレゼントは「リップ(化粧品)」だ。去年のクリスマスよりもグレードアップしていなければいけないことは必然、毎年少しずつプレゼントをグレードアップしようと決めていたのだ。
俺はイブサンローランという有名ブランドのリップをネットから買った。理由は、彼女が過去に欲しがっていたブランドだったから。しかも名前を彫るというオプションがあったので、ちゃんと彼女の名前を入れてもらった。値段としては4~5千円だ。学生の身からすればまあまあ高いがな。
ちなみに、色をどうやって選んだかというと、過去の彼女の写真から可愛いと思ったものをひたすらかき集め、画像から色情報を抽出するソフトをパソコンに入れ、可愛いと思った画像の彼女の唇の色を分析した。実際に販売されているリップの色と比較し、かなり近いと思われるものを2~3種類ピックアップしたところ、そのうち一つが人気ベスト3に入っていたのでそれを選んだ。
また、実際にプレゼントするとき、包装の箱を紙袋に入れて渡すのが基本だと思うが、紙袋に入れた状態でカバンにしまうと、紙袋にシワができてしまう。これは中星マインドと出会ってからの人形プレゼント時にも使っているのだが、紙袋は直前まで綺麗に畳んだ状態でしまっておくこと。箱は丈夫なのでそのままカバンに突っ込んでおく。
プレゼントをする時間が近づいたら、トイレなどで紙袋を広げ、箱を入れる。そしてなるべくカバンの中にゆとりを持たせて、そっと入れる。そうすれば実際に渡すときは違和感なく紙袋の状態で取り出せる。
(7) 確実な交通手段を選ぶ
そういえば、もう一つだけコストをかけてしまったところがあった。札幌についてからは全て徒歩でよかったのだが、札幌に向かうまでの電車を、特急にしたのだ。普通電車だと座れない可能性が高かったし、せっかくのクリスマスでイチャイチャできる移動時なのだから、確実に座れる指定席にした。
これに関しては、なんともいえない。俺たちが使っていた特急は、そんなに値が上がらないものなので問題なかったが、ちょっとコストをかけすぎたかもしれないなと思うことはある。
以上が準備段階だ。俺が念入りにデートをセッティングしていたことがわかっただろう。では、実際のデートはどんな感じだったか、以降に書いていく。
(8) 計画した通りデートをする
ここに関しては、特に書くこともない。というかほとんど覚えていない。覚えているといったら、「よく地図も見ないでこんなスムーズに行けるね」と驚かれたことくらいだ。俺はいかにも知らないふりをして「まあ軽く地図見たからね〜」とだけ言っておいた。
(9) あえて喧嘩する
夕食を食べに行こうと、下見をしていた店に行く。しかしまさかの満席、というかほぼ予約制だった。その場で予約をして、2~3時間後に再度くるということは可能だったのでそうしたが、想定外なレベルの大幅遅延。その日はホテルに泊まる予定だったので、先にチェックインすることにした。
ホテルへと向かう最中、この日初めての悪い雰囲気となった。このとき、心の内に秘めていた「天然中星マインド」が姿を現したようだ。
ーー あーついにピンチが来てしまった、ここまで順調だったのになぁ
ーー いや待てよ、でも一回も喧嘩しないデートって、それはそれでつまらなくないか?
ーー ピンチはチャンスとは言ったものだ、これはチャンス、むしろもっと雰囲気を悪くしてガチ喧嘩にしよう
俺は、無言になった。
彼女はさらに文句を言い始める。
次第に雰囲気が悪くなる。
ーー ここだ!
そして俺はブチギレた。
俺「こんな頑張って全部セッティングしたのに、一ヶ所予約してなかっただけで全部台無しなのか?」
俺「もうデートのセッティング二度とやんないわ」
俺「帰ろう」
俺は逆方向に歩き始めた。
なんとも完璧な、「中星マインド」的、挙動である。
俺は最初から、中星マインドだったのだ。
彼女はやっと、自分にも非があったことに気づいた。
しっかりと謝らせて、仲直りした。
(10) どん底からのクライマックス
見事喧嘩をして彼女の感情を揺さぶった後、ホテルで一段落ついてから夕食を食べに行った。夕食は普通に済み、最後にクライマックスを用意しておいた。
俺が選んだのは「nORIA」という観覧車。
7~8階建ての商業施設の屋上に立っている大きい観覧車で、札幌の夜景を一望できる場所として有名だ。
実は夕食の場所は、この観覧車のある建物内の、しかもすぐ近くに観覧車が見える場所だったので、大体勘づかれていたとは思うが、「じゃあこれ乗ろうか」という感じで誘い込んだ。
だが、ただ乗せるだけではない。前半は観覧車から見える夜景を「綺麗だね〜」と見るくらいだが、観覧車が頂上に差し掛かるタイミングで、俺はカバンから何かを取り出す。
そう、イブサンローランのリップである。
彼女はかなりの衝撃を受けたようだ。涙をこらえるのに必死で、一番大事な観覧車頂上からの夜景を見ることができなかったようだ。
もしこれを再現したいという人がいるのであれば、まず頂上についた時に「うわ綺麗だね!!」といって夜景のほうに注意を向けさせる。その間にプレゼントを取り出して、肩トントンからのプレゼントがベストだと思うので、是非俺の反省を活かしてくれ。
一つだけ悔しかったのは、彼女が涙をギリギリこらえきったことだ。我慢せず号泣してよかったのになぁ、、、
このあと滅茶苦茶セッ○スした。
おわりに
以上が、俺が彼女のために一度だけセッティングしたことのある、本気のデートプランである。その後彼女の脈はブチ上がり、2年目のクリスマスは最高の思い出となった。
俺「あー、3年目のクリスマスはこの記録を更新しなきゃいけないのかぁ」
ここからさらにグレードアップするなんて、一体どれほどのプランを作らなきゃいけないんだろう。4年目、5年目となっていけば、とんでもない世界が待っているかもしれない。ああ、俺の彼女はなんて幸せな女性なんだろう。俺はワクワクしながら、次のクリスマスを待ちわびることとなった。
次回は、そんな彼女の存在を、周囲に知られるきっかけとなった「学校祭」の話をしていく。最初俺たちの関係を知っていたのは、「親友」と「親友の彼女」だけだった。
俺はクラス中で「童貞の頂点」とされていた。そんな俺に実は彼女がいて、童貞も卒業していたという事実を目の当たりにしたとき、俺のクラスメイトたちは一体どんな反応をしたのだろうか。
衝撃の事実とは
意外にもすぐそばに
潜んでいるものだ
yoshi