最愛なる堕天使 - 第11章 絶望のクリスマス
yoshiです。ついに最終章目前となりました。今回は元カノと付き合った中での最後のイベントについて語ります。これが全ての終わり、そして全ての始まりです。
ーーー 彼女は飛行機に乗って、東京に降り立った。
俺は空港まで迎え行く。
時間はほぼ深夜に近い。
最終の送迎バスに乗って、浦安まで向かう。
浦安とは、東京ディズニーランドがある場所だ。
初日は、ディズニーランドのすぐ近くにあるビジネスホテルに泊まった。
暗く寒い夜道を二人で歩く。
そのときの心境は、何も覚えていない。
きっと平穏な心だったはずだ。
遠距離の彼女と久しぶりに会って、落ち着いていたことだろう。
だがそのときの街並みは、なぜだか鮮明に覚えている。
6月ディズニー
俺と彼女は、一度ディズニーデートをしたことがある。同じ年の6月頃だ。俺は初めてのディズニー、彼女は以前友達と行ったことがあるらしい。ほぼ彼女に案内をされる感じで、彼女が行きたいというところについて行く感じだった。
彼女はディズニーが大好きで、めちゃくちゃ楽しんでいた。
俺は、ちょっと疲れていた、というか人が多すぎる。だが、彼女の楽しそうな顔にたまらなく癒されるので、あまり苦にはならなかった。最後のほうにスマートウォッチを確認すると、25000歩も歩いていたらしい。
今では始発終電ナンパで一日4~5万歩も歩く俺だが、当時は1万歩すら到達することがほとんどなかったので、この数字には驚いた。
というかまじで人が多かった。
正直、ディズニーにはあまり良い印象を持っていなかった。人が多くて長時間列に並び、やっとたどり着いたら一瞬アトラクションに乗って終わり。
よく聞く話だと、ディズニーデートをしたカップルは破局するらしい。ほとんどが列に並ぶ時間であるため、話すことがなくなったり、イライラしたり、カップルには実は向かないらしい。
だが、俺たちに関しては、彼女がディズニー大好きすぎて終始はしゃいでいたのと、俺は俺で彼女が大好きすぎなので、はしゃぐ姿を見て楽しんでいた。全くもって問題にならなかったわけだ。
おそらく、ディズニーデートで別れるに至るカップルは、元々時間の問題だったのだろう。最近流行のコロナ離婚と同じだ。「もともと終わっていた関係」が露呈するだけなのだと思う。
それに、普通にアトラクションは楽しかったし、初めてジェットコースターを体験したが、とても心地よかった。ショーのようなものも、わりと感動した。
最初のディズニーデートは夏だった。季節によって雰囲気が変わり、毎月のようにイベントが切り替わるらしかったので、また冬に行こうということになった。
14万円のバケーションパッケージ
次のディズニーデートは、クリスマスにしようと話していた。
そして、俺が一番大切にしている「クリスマス」というイベント。
俺は、ディズニーについて色々と調べた。
バケーションパッケージというものを見つけた。
これは、短い待ち時間でアトラクションに搭乗できる「ファストパス」や、ドリンクを無料で注文し放題の「ドリンクチケット」などがついていて、1泊2日でディズニーが施設として持っているホテルに宿泊できるものだ。一人約7万円、二人で約14万円だ。
かなり値段は高いが、宿泊もできて、ファストパスなどの特典もあるので、存分にディズニーを楽しめるだろうと思い、購入することに決めた。
だが、少しだけケチってしまい、ディズニーランドやシーの敷地内から少し外れたところにあるホテルにした。敷地内にあるホテルはさらに値段が高い。一番高いのは「ミラコスタ」というホテルだ。雑魚男諸君は、可愛い彼女のために「ミラコスタ」でも取ってあげれば良いのではないだろうか???
俺的には、彼女にコストをかけている感覚はなかった。なぜなら、どうせ結婚して財産は共有するのだから、俺のお金は彼女のお金でもあり、彼女のお金もまた、俺のお金になるのだ。
だが、せっかくのクリスマスなので、形式としては「プレゼント」にしたかった。
したがって、俺は14万のバケーションパッケージを全額持つことにした。俺の貯金から14万を切り崩した。
クリスマスプレゼントは、本当はサプライズであげたいものだが、さすがに内容も内容なので二人で話し合って決めた。
その代わりといってはなんだが、前泊と後泊のビジネスホテルは、彼女が持つことにした。合計2万円だ。
そしてバケーションパッケージでは、いくつかある「ショー」の中から、2つを選んで見ることができる。俺のミスで、ショーが予約制だということを知らなかった。直前になって気付き、急いで予約しようとするも、彼女が見たいと言っていたショーは満席。
一旦、しかたなく別のものにしていたが、俺は諦めなかった。彼女が見たいショーを見せたいために、朝起きたとき、仕事の合間や帰宅してからも頻繁にページを確認した。キャンセル待ちだ。
奇跡的に、俺が確認したあるタイミングで席が空いた。俺は急いで予約変更をし、みごと彼女の希望したショーを予約することに成功した。
16連休の年末年始
俺は、彼女とクリスマスを過ごしたあと、彼女と一緒に北海道へと帰ることにしていた。
2018年のクリスマスは、22~24日の3連休があったため、ここで彼女を東京に呼び、ディズニーに行く。
俺はそこから年末年始までの平日を全て有休にし、彼女とともに帰省する。
彼女は平日仕事があるので、一旦それぞれの家に帰る。
年末年始の1週間は俺の家などで彼女とイチャイチャする。
実に16連休という、めちゃくちゃ長い年末年始となってしまった。
クリスマスの直後は彼女が仕事なので、暇な時間を過ごすことになるだろうが、後半の1週間は彼女と過ごせる1週間ということですごく楽しみにしていた。
22時の新宿
14万円のパッケージをクリスマスプレゼントとは言ったものの、俺の熱情はそこでとどまらない。
彼女にはやはりサプライズを用意したかった。だから14万のバケーションパッケージとは別に、プレゼントを買うことにしていた。
彼女はクリスマスコフレを欲しそうにしていた。コフレというのは各メーカーが特別に販売する化粧品のセットだ。毎年クリスマスになると、クリスマス仕様のセットが販売されるらしい。
「これにしよう!」と思いいたったのは11月末、驚きの事実を知る。
クリスマスコフレはクリスマスに先駆けて販売しており、11末頃にはもう完売して終わっているということだった。俺が買おうとしていたのはちょうど完売の時期。ネット上ではどのメーカーもどのコフレも販売終了。
俺は焦って家を飛び出した。今日買わなければ、きっともう無理だ。クリスマスコフレというのはすぐに売れるらしい。特に俺が買おうとしていたものはかなり人気の商品だ。1日を争うものだと確信をしていた。
川崎の家から飛び出し、化粧品の売ってる場所を探しては回った。なかなか見つからず、横浜まで行った。タカシマヤの化粧品売り場に入るが、化粧品の濃厚な匂い、気品漂う女性客たち、超絶美人なスタッフたち、ここにブサイクな男が一人で足を踏み入れるのは結構な苦痛だった。
だがそんなことは言ってられない。一刻も早く俺が探しているブランドを探さなければと、歩き回った。見つけるのに無駄に時間がかかってしまった。ただ徘徊している怪しいおっさんになっていないか心配だったが、なんとかたどり着いた。
しかし、コフレは完売していた・・・
俺はショックを受けた。
俺の想いは届かなかったのかと。
そう思っていたとき、スタッフが言葉を発する。
「新宿ルミネの店舗だったらもしかするとあるかもしれない」
希望の光が差した
運命を感じた
時間は夜、20時半を回りかけていた。
新宿ルミネの営業時間は22時まで。
横浜から新宿まで40分はかかる。
迷わずにたどり着けるとも限らない。
まずは電話で確認した。
在庫はあるということ。
だが、いつ完売するかわからない。
取り置きもできない。
「行くしかない」
「いましかない」
俺に選択肢はなかった。
ほとんど行ったこともない「新宿」に、俺は足を運ぶことにした。
新宿南口の上にあるLUMINE2へと全力で駆けつけ、なんとか閉店時間に間に合った。
俺「クリスマスコフレ、まだありますか?」
店員「はい、ありますよ」
こんなに「安心」という気持ちを体験したことが今までにあったことだろうか。平日の夜にこんな動き回ったのは初めてだ。愛する彼女のために、俺はここまで頑張ったんだなとしみじみ。
しかも偶然、誕生日プレゼントとしてこれまた別で買おうとしていたパジャマのブランドの店が隣にあったのだ。俺は二度見した。こんな運命あるだろうか。ついでにそのまま買うことにした。
新宿という大都会の空気は新鮮だった
戦利品のクリスマスコフレを持って
夜の新宿南口を歩く
それが初めて、「新宿」という世界を体感した日だ。
まさかこの新宿で
運命の出会いを果たすとは
夢にも思っていなかった。
まさかこの南口で
死に物狂いでナンパするなんて
夢にも思っていなかった。
24日の哀愁
ついに、クリスマス当日を迎える。
俺たちはディズニー近くのホテルに前泊し、朝一番からディズニー入りする予定を立てていた。
開演前からなかなかの行列、さすがだなと思った。
しかし、天気は生憎の雨である。
まあ、そんなことはお構いなしに楽しむことはできたがな。
しかし、彼女の雰囲気はいつにもまして冷たかった。
ディズニー大好き人間ということで、基本的にディズニー内では楽しそうにしていたが、
「これが最後のデートになるかもしれない」
なんて不気味な発言もしていた。
別れ話みたいなのはよく冗談で言うようなものなので、どうせ今回もそれだと思い聞き流していた。
いつもと若干違う感じはしたが、まさか別れるなんてことは、もう1%も考えていなかったのだ。なんと言っても1ヶ月前には結婚したあとの話をしているくらいだったのだから。
ちゃんとディズニーでもホテルでも一緒に写真も撮りまくったし、普通にラブラブだった、いつもより少しだけ少なめだったが。
そして俺は、サプライズのコフレを渡すタイミングを見計らっていた。
暗くなってきたディズニー、アトラクションを回って歩いていると、突然花火が上がった。彼女はその花火にみとれて、雰囲気的にはいい感じだった。だが俺はそこでは渡さなかった。少し迷いはしたが、実は最初から渡したいと決めていた場所があった。
だが、いよいよクライマックスの時間帯となり、俺が渡したいと思っていた場所はパレードと観客で埋め尽くされていた。
ちょっとまずいかと思ったが、パレードを利用していいタイミングで渡せるのではないかとも思い、彼女の手を引いて少しずつ中心部に潜り込んでいく。
しかし、本当に渡したかった中心部には入れなかった。
俺は迷ったあげく、パレードが終わるのを待つことにした。
パレードが終わり、会場から人が消えていく。
俺は彼女を中心へと連れていく。
そう、シンデレラ城の前だ。
周りはパレードの後片付けをしていて、少々雰囲気が崩れてしまったが、俺はそこで渾身のサプライズプレゼントを彼女に渡した。
・・・
彼女は
・・・
「ありがとう・・・」
・・・
反応が
薄かった
やっぱり後片付けのせいで雰囲気が良くなかったのだろうか。
よくわからなかったが、そのまま初日は終わり、ディズニーホテルへと向かった。
ホテルでセックスしてゆっくりして翌日も無事ディズニーデートを終える。
夢の世界から現実に戻った瞬間は、どっと疲れが来たのと同時に、もの寂しさも感じる。彼女は特に寂しそうだった。
彼女「現実に戻った感じがして悲しいね・・・」
俺「ああ、そうだね」
そのまま後泊のホテルへと向かう。
後泊のホテルは、翌日空港へのアクセスが良いことを考えて、蒲田のビジネスホテルをとっていた。
(実は中星マインドをつけてから、初めてこの彼女以外の女とセックスしたホテルが全く同じホテルだったという逸話もある。しかも俺がとったわけではなく女が選んだホテルなのでめっちゃ偶然だ。)
そこで最後にセックスをしたかどうかは覚えていない。彼女が乗り気にならず、しなかったような記憶もある。
朝起きる。
飛行機に乗る。
北海道に帰る。
年末年始、北海道に帰省する飛行機、愛する彼女が隣に座っていた。
俺の心には安心感と、年末年始への期待ばかりだ。
彼女と過ごせる年末年始。
空港まで、俺の親が迎えにくる。
彼女を彼女の実家まで送る。
じゃあねと手を振る。
俺「じゃあ、また年末ね!」
彼女「うん、じゃあね」
俺「仕事がんばってね!」
彼女「うん、気をつけてね」
そして彼女は・・・
・・・
彼女は、
・・・
・・・
・・・
彼女は、
・・・
・・・
・・・
yoshi