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スプーンを売ることの話
最近私のスプーンを使ってみたいと言う方がメッセージをくださいます。とてもうれしいです。ただ売って欲しいと言われると、なかなかそれは難しいものだと思っています。だって自分の人生を削って作ったんですから、値段はつけられないんです。
過去にはエリア用の小さなスプーンを1枚1000円ネイティブ用などの大きなスプーンを1枚2000円でプラス送料でメルカリに出してみました。どちらも買っていただけましたが、少し考えさせられるものでした。だって基本的に自分がルアーを買わないので、人に買わせるのはどこか罪悪感がある。
それでも、なぜ売ろうかと思ったかと言うと、自作のスプーンを売っている人がいたからです。そしてそのスプーンよりも私の方が間違いなく良いスプーンを作っていると言う気持ちから売ってみようと思ったのです。めちゃくちゃ自分勝手だし、自己顕示欲とか色々…自分の技術を人に見せたい、そんな気持ちでした。ものづくりのエゴです。
売っているスプーンは必ず釣れる、テストを繰り返されて作られた実績のあるスプーンです。管理釣り場用であれば5〜600円、ネイティブ用でも1000円しない値段で買えます。
そんななか、私が1枚1枚心を込めて、思案して手作ったとしても正直言って1000円2000円の価値にはならないのです。時給換算、材料費、技術料様々なことを加味したとしたら、正直言って1000円2000円でも安いと思います。しかしその価値があるかどうかと言われると全くありません。それに、私はお金をかけずに釣りをすると言うことを証明したいと思っています。なので、ルアーをあまり高い値段で買うことを良いとは思っていないのです。この点は、とても大きな矛盾です。たぶん自分は誰かがハンドメイドしたルアーを買いません。その人を信頼していれば欲しいですし、投げます。でも、基本的にずっとは投げません。かわりにどんなものなのかめちゃくちゃ研究します。あくまで作りたい、もっと良いものを作れるようになりたいのです。
絶対釣れる、店で売っている500円のスプーンにはプロアングラーの魔法も掛かっています。自分は自分のスプーンに魔法を込めて作っていますが、その自分のスプーンを誰かが使って使い続けられるかと言うのは疑問です。魔法とは作った人の魅力や信頼性、などなどの想いです。
ルアーは買うものではなく作るものだと言うことを証明したいです。ハンドメイドスプーンはまだまだ作っている人は少ないです。でも、間違いなく作っている人はいます。多くは人にプレゼントしたり、売ったりしています。自分は、ハンドメイドスプーンを誰もが作れるような未来を作りたいのです。
誰が作ったスプーンより、自分が作ったスプーンは高級だし特別な魔法が掛かっていると思っています。売っているスプーンは本当にすごいと思う。だけど何事も、成し遂げるまでの過程が楽しいと思う人もいるはずです。そして、釣りをする人はきっとそう思う人が多いんじゃないかな?そうじゃなかったら釣りそのものをしないと思うのです。
ハンドメイドルアーを売ることは商売としてコスパが悪いです。みんな最初は腕試しから売り始めると思います。私もワークショップの物品を買うためにキットを作ったり、用品を作ったりしてたまに販売はしますけど、労力対効果は微々たるものだし、その値段が人生の値段だと考えると馬鹿馬鹿しいのです。ルアーはどこまでいっても消耗品ですし、形を決めて生産し始めた時点で研究や腕試しから、コスパの悪い小遣い稼ぎになります。極めた人は、幸せを売っているのだと思いますが、自分はその域に達していません。
だから、誰もがルアーを作れて楽しめる「作り方を作る」方が楽しいんじゃないかと思っています。
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本当に欲しい人には作り方を教えます。
だって、魚釣りは自分で魚を釣りたいんでしょう?
魚屋に行きたい訳じゃないですよね。
楽しもう!