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~幸せとは何か?2話~都会で見た『キャバクラに通い詰める謎おじさん』の話
僕は、十数年前居酒屋を経営していた。
15坪くらいの小さな居酒屋で約3年ほど経営していたが、赤字経営が続き辞めてしまった。
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ただいろいろな心に残る人たちに、その店で出会ったことが、人生の糧になっている様に今は思っている。
中でも今でも思い出すのが、よく店に来ていた『キャバクラに通い詰める謎のおじさんジュンさん(仮名)だ。』*なぜかみんなかニックネームで呼ばれていた。本名は知らない。
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1. “謎おじさんジュンさん”とは?
個人経営の小さな店なので、僕はカウンターで料理をしながら、来てくれたお客さんといろいろな話をしながら店をやっていた。
まあ店は基本暇だったので、ただ食事をして帰ってもらうには、あまりに申し訳ないと思ったこともあるし、何もしゃべらずにいたら手持無沙汰で気まずかったから。。
お客さんにはなるべく話しかけるようにして楽しんでもらおうと思ってもいた。
そんな店だったが、常連で来てくれる人たちも中にはいた。
その中に“謎おじさんジュンさん”がいた。
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平日や週末関係なく、週3~4回くらい多い時には来てくれていたが、店に来た時には既にある程度酔っぱらっている。
なぜ“謎おじさん”かというと。
全く素性も名前も趣味も仕事も何もかもよくわからない人だったからだ。
*いまもってよくわからない。
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その他多くの常連さんとは、話をする中で名前やだいたいの年齢や家族構成趣味などなんとなくわかってくるのだが。。
見た目は50代前半くらいで、いつもカジュアルな服装をしている。*高そうな服を着ているわけではない。
スポーツ系のアウターにジャージをはいて、スニーカーを履いている。
どこにでもいるようなおじさんスタイルだ。
ただ唯一分かっていることは
“キャバクラに通い詰めている”ということだった。
2. “謎おじさんジュンさん”の生態
“謎おじさんジュンさん”は、近くに住んでいたらしく、たまに僕が開店準備をしていると道端で見かけることがあった。
◆しらふで見かける時は常に真面目な顔をして急ぎ足
ちなみにお酒を飲んでいないときは、いつも急ぎ足で買い物袋(水や日用品などが入った)を両手に持ち、めちゃくちゃ真面目な顔でわき目もふらずせかせか歩いている。
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僕と目が合うと、真面目な顔から一転笑顔になり『元気―!今日行くからよろしく!』などと言いながら足も止めず立ち去っていく。。
絶対サラリーマンではないが、かといって自営業などでもない感じ。
それで普段どうやって稼いでいるのか?どうやって食べているのか?すごく不思議だといつも僕は思っていた。
◆週4回キャバクラ通いの生活
“謎おじさんジュンさん”は開店時間(開店時間は17:30だった。)と同時に『店長ど~もやってる~!後で来るから―よろしくー!』などと挨拶したあと。
1時間ほどするとキャバクラ嬢を連れて、僕の店にやってくる。
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この時点ですでにどこかで1杯ひっかけてくるのか既に酔っぱらっている。
『てんちょう~てんちょう~!どーも!ぐるぐる□△×◇・・・』何言ってるかわからないが。。。とにかく上機嫌だ。
キャバ嬢も『何言ってんのジュンさん!ダイジョーブ!』と心配してるが。
『だーいじょうぶ!だーいじょうぶ。。じゃああれで。。□△×◇・・・』
という調子。
僕も『何言ってんすか?』と言いながら。
お酒とつまみを適当に見繕って出していた。
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キャバ嬢を連れてきているのだが、口説いている風でもなく偉そうにしているわけでもなく。
会話も特にしているようでしていない感じで。。
とにかく何言っているかわからないが声が大きい。
誰かとしゃべりたいわけでもなく、とにかくひたすら陽気にふるまっている。
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2時間ほどすると、行きつけのキャバクラのマネージャーが、店まで迎えに来る。
その時点でべろべろの酔っ払いの1歩手前の状態。
そしてキャバ嬢が『ジュンさんそろそろ行こうよ~!』とキャバクラにさりげなく誘導しようとする。
そうすると“謎おじさんジュンさん”は『いやまだダイジョーブ!ダーーイジョーブ!いそがすなよ!。。。』などと行くのをゴネはじめる。(笑)
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どう考えてもキャバクラの同伴なのに?なぜ行くのを拒む(笑)
そしてひとしきりゴネてキャバ嬢が困りだすと、黒服のマネージャーが間に入り『ジュンさん。。ジューンさん。めっ!』といいだす。
*毎回くりかえすおなじみのやりとり(笑)
するとしぶしぶ席を立ち、お会計を済ませてキャバクラに向かって行く。
◆お会計は万札で!
ちなみに僕の店でお会計をする時は、常に1000円札を現金で1枚差し出してくる。
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もちろん実際には、キャバ嬢と2人で6000~7000円程度なのだけど、
お釣りを返そうとすると頑なに断り『い~からいーーから!てんちょー□△×◇・・・』という感じで取り合わない。
まあ暇な店だったので、僕も素直に『いつもありがとうございます!』と言って頂戴していた。*まあ明らかに他のお客さんに迷惑になるくらい騒いでいたので、迷惑料を上乗せてとの意味合いもあった。
そんなひとしきりのやりとりが、多い時で週3~4回あった。
そんな感じだからキャバクラでも、ものすごくお金を使っていたのだろうと思う。
◆地域の反応と評判
そんな感じで飲み歩いていた“謎おじさんジュンさん”は、その地域では有名な存在だった。(悪い意味で)
他の飲食店でも同じ調子らしく。他のお客さんの迷惑になるからと出禁になった店も何軒かあるようだった。
それとなく、よく来ていたキャバクラの黒服マネージャーに、素性を聞いてみたのだがよくわからないとのこと。。。
でもそのうち風の噂で、
“謎おじさんジュンさん”は、生まれも育ちもその地域で、
実はその周辺の土地などを持っている資産家の一家の息子らしい。。
と聞いた。
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ただあまりにも酒とキャバクラ通いがやめられず、家族も匙をなげているとのことだった。
*『資産家の家族だから、働かなくてもキャバクラに週4回通っても、食べていけるのか!!』とその時僕は納得した。
ただ僕は、気になっていたことがあった。
それは。。
3. “謎おじさんジュンさん”は幸せなのか?
実は僕には、“謎おじさんジュンさん”は、あまり楽しそうに見えなかったのだ。
◆“謎おじさんジュンさん”が楽しそうに見えなかった理由と疑問
(1)理由:馬鹿みたいに騒いでいるなかで、時折とても寂しそうな表情にみえることがあった。。。
疑問:この人は本当に楽しんでいるのだろうか?
なぜこんなにお金を持って遊んでいるのに、寂しそうにするんだろう?
(2)理由:何かを忘れるかのように”ひたすら陽気”にふるまっている。
キャバ嬢といても会話らしい会話をしない、なんだかとにかくその場のノリや雰囲気で訳の分からないことを言いながら陽気に笑っているのだが。。
疑問:実際のところ”とにかく陽気”にふるまっていたい。というだけなのではないだろうか?それはなぜなんだろう?
一般的にみれば、
資産家の息子で、せかせかサラリーマンとして働く必要がない。
毎週キャバクラで女の子と騒いで飲める。
お金も全く気にせずに、『釣りはいらない』と飲食店で言える。
そんな環境なら幸せなはずだろう!と思う。
なぜ資産家の息子“謎おじさんジュンさん”は、幸せそうに見えないんだろう!?
そんな疑問が浮かんだ!
4. 幸せとは何か?
僕自身は、お金と幸せについて考える時「お金で幸せは買えない」とよく言われるが、これは必ずしも正しくはないと思っている。
僕自身が『お金』が無いときの状態を経験したから、お金持ち=幸せとは言えないが、幸せのベースには『お金』が必要だと思っている。
では資産家の息子“謎おじさんジュンさん”はどうなのか?
すでに幸せのベースは確保できている状態だろう。
ただ僕が考えるに、彼が幸せと感じるためには『お金』と共に『必要な何か』が著しく足りていなかったのだろうと思う。
それは何かはわからないが。。