米国商業用不動産が市場に与える影響を考察する ~Part1~
米国商業用不動産問題が市場に一定の影響を及ぼすようになってから久しい。しかしながら、この問題がどこまで大きいのか、そして今後の市場にどのような影響を与えていくのか、いまだ不透明だ。市場規模や金融機関が保有する商業用不動産ローンはどの程度なのか、また足元の現状はどうなっているのかなどを把握し、今後の市場への影響を考察していく。
結論としては、商業用不動産問題がリーマン・ショックの時とは違い、景気後退の直接的な引き金にはならないが、景気後退を招く一因であり続ける。そして、ひとたび景気後退が陥れば、商業用不動産問題が更に景気の下押し圧力となるため、景気後退は長引き、深刻化していくというものである。すなわち、ひとたび景気後退が起きれば、軽い景気後退には決してとどまらないということである。
まずは全体像の把握から。
米国商業用不動産市場規模は22.5兆ドルと、米国市場では株式・居住用不動産・国債に続く市場となり、リーマン・ショックの震源地となった居住用不動産市場(56.4兆ドル)の約4割の規模だ。
次は業態別の米国商業用不動産向けローン残高を確認しよう。
全体の商業用不動産向けローン約6兆ドルの内、銀行が保有する商業用不動産ローン残高は約3兆ドルで、銀行が占める割合は約5割だ。(FREDデータとも整合性あり)
そして、そのローンがいつ満期を迎えるのかが以下である。
米国商業用不動産債権満期予定額 業態別 単位10億ドル
上記数値は、ローン返済の繰延べにより各年度において上方修正されている可能性が高く、2024年、2025年に約1.5兆ドルの債務が満期を迎えるというデータもある。
また2024年末に4,000億ドル超が満期を迎えるという話もあり(6:50の個所)、2024年、2025年は比較的高水準で満期を迎える可能性があるのは要注意だろう。
各種資料から不動産業者や銀行などのローン債権者も市場の好転を待ち、債務を繰り延べている事例も多いため、今後2025年までの間に、比較的高水準で満期を迎える可能性があるというのは決して誇張されたものではないはずだ。
(続く)