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“僕は父親を知らない”

ep1

僕は物心がつく前から母子家庭で育ったらしい。

生まれてすぐに両親の離婚が決まり、横浜から両親の地元である岐阜に引っ越してきた。

そもそも父親というものを知らない僕からしたら、何も疑問に思うことなく育って行った。

[自分には父親がいない]それに気付いたのはいつだったろうか。


小学生の頃の運動会では、親子で参加の競技はいつも先生とペアだった。

世の中の苗字は一家族一つ、同じ苗字は家族しかいないと思い込んでおり(たまたまクラス全員違う苗字だったため)めちゃイケに出ていた極楽トンボの加藤を父親と思い込んでいたり。

友人家族何組かで出かける時、自分の母親だけ一人だった姿を見た時。

日々生活していく中で、ぼんやりと父親の存在を知っていったような気がする。


それでも自分には、母、姉、おじいちゃん、おばあちゃん、おじさん、がいつも近くにいた。

元々知らない存在に対して、欲しいとは全く思わなかったし、いたら何が変わるのかも想像もできなかったので何の問題もなかった。

むしろうちには母の彼氏なるものが、数名ちょいちょいいたのでその影響もあったのかもしれない。

今まで自分は特にグレることもなく、問題もこれといって起こすこともなく、真っ直ぐに生きてきたと思っていた。

でも今思い返せば、成人したとはいえ20代までの時期はやはり子供の心そのもの。

その小さな心には自分自身も知らず知らずの内に、抱えきれない重りがのしかかっていたのかもしれない。

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