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改めて好きだ!と思った最近会った人たちのこと【先輩X氏】

先輩X氏。

X氏との出会いは10年前に遡る。

大学のサークルで出会った。
私の同期女子が先輩X氏に向かって「イケメンですよね!」と話しかけた際にたまたま横にいた私は都合よく利用されたんです。

その子に「ぴこちゃん(わたし)もX先輩イケメンって思うでしょ!?」と。

面識ない先輩に突然イケメンですね、とは言い難く適当に流してしまった。

X氏は同期女子に向かって「は?何言ってんの?」とだけ言い放って後は完全無視。

それが初回の出会い。

なんとなく怖い感じ、近寄りがたい感じの印象だった。

サークルは音楽系。

先輩X氏はふら〜っとやってきては超絶うまい演奏をして、それに飽きたら周囲の後輩や同期たちと喋って、気がついたら帰っていて、みたいな感じの人。

学科も違うし学年も離れているし楽器は上手いしで、超凡人のザ・量産系だった私とは縁のない人だと思っていた。

学年が3つ上だったこともあり、あまり関わることなくX氏は卒業。

しかし何故かX氏の卒業後から急激に私とX氏は頻繁に会ったり連絡を取り合ったりするようになる。

きっかけは覚えていない。

友達経由だったかLINEを教えあって、やりとりをするようになった。

先輩X氏は当時はLINEの返事がめちゃくちゃ早かった。
夜中でも明け方でも返事が来ていたので一体いつ寝ているんだ?という状態で、LINEのやりとりは無限に続いていた。

実際、X氏は見た目以上のバイタリティを持っていて、天才肌にあるあるの規則正しいとは真逆な生活をしている人だった。

めちゃくちゃに頭が良いのに何故か凡人女子大生とも仲良くしてくれる。

初対面の印象からはそういうフラットな感じがイメージできず、そのギャップに驚きつつも少しずつ心を開いていったのは間違い無い。

LINEのやりとりが続くうち、次第に電話がかかってきたり、電話に出れば何時間も会話が続くといったことが頻繁に起きるようになる。

次第に慣れていった私は時には電話を無視したり、電話中に眠気に耐えられなくなって途中で充電が切れたフリをして切ってしまう、なんてこともした。

でもとにかく先輩X氏が好きだった。

しかしこれは恋愛感情ではなかった。

そこが自分でもやや不思議で、でも冒頭に登場した同期女子とは明らかに違った感覚で先輩X氏と接しているのだった。

ちなみに同期女子はのちに彼氏ができたが、彼氏からよりも先輩X氏から連絡がくるほうが嬉しい、と時々こぼしていた。

過去には先輩X氏に告白もしていたようである。

そう、先輩X氏はめちゃくちゃにモテてもいた。

同期女子だけでなく、他の学年の女子からも何人かに告白されていた。

しかしどの人とも付き合ってはいなかったようである。

恋愛遍歴も時々教えてくれたが、基本的には喧嘩になると面倒になってしまい、そのうち女性の方が嫌になって別れを切り出される、ということを繰り返しているようであった。

そんなX氏とは私が大学を卒業し就職してからもちょこちょこ会い続けるようになる。

私が就職してすぐの頃、二人で飲みに行った。

文脈は全く思い出せないが、「手を握る」のがどうのこうのという話をしていた。

X氏が私の手を握って説明をする。

手を握られながら、当時の私は「あ〜これで落ちてしまう女子は大勢いるんだろうな」とメタになりながら相槌を打っていた。

X氏と私のつながりはおそらくこの「メタ」である。

X氏は大学卒業後も相変わらず誰とも付き合わずにいたが、その理由はメタになってしまって恋愛ができないからだと話していた。

恋愛的なものを一次的な感情ではなく、自分から離れたメタ思考で考えだすと急に熱が下がり恋愛のスイッチは切れてしまう。

あれ、自分何してるんやっけ、と。

感情を優先させてどっぷり浸かる瞬間が恋愛の始まりには必ずあるだろう。

しかしX氏にはそれがない。
だからこそ女性と二人きりで食事にも行くし、手を握ってしまうし(会話の流れではあるが)、仲が良ければ家に泊まっても良いよなんて言ってしまう。

女性からすれば「これって脈あり!?」なシチュエーションが続くが、メタ思考のX氏には特に恋愛感情がない。

これこそが悲劇の始まりであり、謎に爆モテするX氏とぽろぽろ涙を流す女の子が誕生してしまうのだ。

X氏がモテるのは、しかし、思わせぶりな行動だけではなく頭の回転の速さや話題の豊富さ、誰でも気さくに接する性格やフットワークの軽さなど枚挙にいとまがないのだけれど。

私はX氏といる時ほどメタがガンガン働き、メタ的な話題を提供する。

メタ同士だから分かり合える話もあって、X氏は私を可愛がってくれる。

しかしメタ同士だから恋愛にはもつれこまない。

こんな関係性を築けたことが、私が先輩X氏をずっと好きでいる理由だと思う。

さて、さらに時は流れ、私は友人C氏と付き合うことになる。

その友人C氏もまた先輩X氏の後輩であり、彼らは同性同士なこともあって師匠と弟子のような関係であった。

思えば私とC氏が再会するきっかけになったのは先輩X氏を含めた3人での飲み会だった。

付き合うことになった時、私が一番はじめに報告したのは先輩X氏だった。

先輩X氏は話を聞いた後、「結婚もするんだろうな〜」と言った。
我々が結婚するのを見越しているようだった。

実際、それから2年後に私たちは夫婦になった。

それから数年後、X氏には彼女ができ、数ヶ月後には結婚もした。

後輩である私たち夫婦は先輩X氏が独りで生きているところしか見てこなかったので、結婚すると聞いた時はかなり驚いた。

あの先輩X氏が結婚とはねぇ〜と夫と感慨深くなったりもした。
そこには温かさとよく分からない寂しさがあった。

X氏はここ数年は海外での生活を送っている。

時々、帰国した時に会っている。

つい先日、再会した先輩X氏は「離婚する可能性が50%」と話していたが、奥様の写真を何枚も見せてくれたのでまだまだ大丈夫な気がしている。

これは長年の後輩の勘でしかないけれど。

奥様は苦労されるだろう。
現にしているかもしれない。

しかし、貴方はメタ認知が強めなちゃんと恋愛をしてこなかった(?)X氏を射止めたのだ。

だから私は心中、拍手喝采なのだ。
スタンディングオベーション。


先輩X氏から聞くご家庭の話はヒヤヒヤするものばかりだが、私は心の中で奥様を応援している。

X氏が結婚生活を続け、しわしわのおじいちゃんになった時、奥さんと過ごした日々を幸せだったなぁと思っていて欲しい。

そんなおじいちゃんX氏を夫と2人、眺めてみたい。

そして3人で、恋愛や結婚生活も悪くなかったでしょうなんて話をしたいのだ。



ちなみに先日再会した時のX氏は相変わらず天才肌を発揮し、ゲームで私たちをボコボコにした。

そんなところがやっぱり好きだ。

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