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【臨床評価×機能解剖】症候性股関節疾患における前捻角異常の高い有病率〜形態評価の重要性〜

変形性膝関節症や臼蓋形成不全、FAIなど、股関節に疾患を抱えている方は多くいらっしゃると思います。

そのような方々の股関節には何か特徴があるのでしょうか?

今回はそのような症候性股関節疾患の方々の股関節(462名、538股関節)を調査した研究を紹介します。

この研究を読むと、股関節痛のある方の特徴と、股関節痛がある方にはどのような検査をすべきかが分かります。

タイトル
“Prevalence of Femoral and Acetabular Version Abnormalities in Patients With Symptomatic Hip Disease”

日本語訳
「症候性股関節疾患患者における大腿骨および寛骨臼前捻異常の有病率」
となります。

では、今回の研究の要点です。

【研究要点】

股関節痛を持つ患者では、大腿骨前捻角(Femoral Version)の異常が多く認められます。本研究では、症候性股関節疾患(FAIや股関節形成不全)を持つ患者の52%が大腿骨前捻角の異常を有し、17%は重度の異常を持っている ことが示されました。また、カム型FAIは前捻角が低く、ペルテス病や股関節形成不全では前捻角が高い ことが確認されました。

臨床のポイント
☑︎ 股関節痛を持つ患者の診断では、大腿骨前捻角の評価が必須
☑︎ FAIや股関節形成不全の治療計画では、前捻角異常を考慮するべき
☑︎ 単純X線だけでは不十分で、CTやMRIを活用した形態評価が重要

では、要約です。


1. 【研究の目的】

1. 症候性股関節疾患患者(FAIや股関節形成不全)における大腿骨前捻角異常の有病率を調査
2. 大腿骨前捻角と寛骨臼前捻角の異常の組み合わせの有病率を分析
3. 特定の股関節形態(カム型FAI、ペルテス病など)が大腿骨前捻角の異常と関連しているかを検討

2. 【対象と方法】

対象

2011~2015年に股関節温存手術を受けた 症候性股関節疾患患者 462名(538股関節)
対象疾患:FAI(大腿寛骨臼インピンジメント)および股関節形成不全
健常者をコントロール群とし、11種類の股関節形態に分類し比較


3. 【主な結果】

☑︎ 全体の52% に大腿骨前捻角の異常を認めた
☑︎ 重度の異常(<0° or >35°)は17%(6人に1人)

☑︎ カム型FAI: 平均15°(前捻角が有意に低い)
☑︎ ペルテス病: 平均32°(前捻角が有意に高い)
☑︎ 股関節形成不全: 平均25°(前捻角がやや高め)
☑︎ 健常群: 平均22°

☑︎ 68% の患者で 大腿骨と寛骨臼の異常な組み合わせ を認めた
☑︎ 最も多い異常の組み合わせ: 大腿骨前捻角増加+正常寛骨臼前捻角(22%)


図:症候性股関節疾患患者における大腿骨前捻角異常の有病率のグラフ

正常範囲(10°-25°)の患者は48%と最多 だが、それ以外の52%が異常範囲 に分類される

4. 【考察】

☑︎ 大腿骨前捻角の異常は股関節疾患患者に高頻度で認められる
☑︎ 寛骨臼前捻角が正常でも、大腿骨前捻角の異常が股関節痛の原因となる可能性がある
☑︎ カム型FAIは前捻角が低く、股関節形成不全は前捻角が高い傾向にある
☑︎ 術後成績に影響を与えるため、手術適応の判断には前捻角の評価が必要
☑︎ 大腿骨前捻角の異常と股関節形態の関連を7つのパターンに分類可能

5. 【臨床的意義】

☑︎ 股関節痛を持つ患者では、大腿骨前捻角の測定が必須
☑︎ FAIや股関節形成不全の治療戦略を立てる際、大腿骨と寛骨臼の前捻異常を考慮する必要がある
☑︎ 前捻角の異常は術後成績にも影響を与えるため、適切な評価と治療計画が求められる

6. 【まとめ】

いかがでしたか?

股関節疾患の方の半数以上に骨形態に特徴があるというのは驚きでした。

確かに臨床では、股関節疾患の方にクレイグ検査を行うと前捻角が大きい方が多い印象でした。

股関節に痛みを伴いやすい方は大腿骨前捻角に異常がある事が多いようですね。

治療の際にはまずクレイグ検査を行い確認するのが良いかと思われます。

また、治療は股関節の回転軸で運動ができるよう安定性を高める事が必要と考えられます。

今回も学びになりました。

以上で紹介を終わります。

7. 【参考文献】

Lerch TD, Todorski IAS, Steppacher SD, et al. Prevalence of Femoral and Acetabular Version Abnormalities in Patients With Symptomatic Hip Disease. Am J Sports Med. 2017; DOI: 10.1177/0363546517726983


また学びになる研究がありましたら紹介します。
よろしくお願いします。

ー大腿骨前捻角についてはこちらー

ーFAIについてはこちらー



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PT yoshi
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