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「仲の町3バカトリオどたばだ奮闘記」 第3章 うれし悲しき那智中学校10


第3章 うれし悲しき那智中学校10
 
 
「だんな、ええ金儲けの話あるんやけと゛、ききたないでごわすか。えへへへ。」とナカシャが僕に話しかけてきた。「うん、おぬし又なにかやらかすつもりか。おぬしも悪よのう。しか~し、わしも黄金色に光る板はきらいじゃないぞ。えっ、おぬしも好きじゃろ」とまたまた仲の町3バカトリオの2人は何かたくらんでいる。中3の夏休み直前の僕とナカシャの話である。「その金儲けてなんよ。あやしいことやないやろね。と僕。「あほんだら、まともな話やぞ。」と、まともやないナカシャが言う。「だから、なんやねん。」とまたまた、まともやない僕が言う。「俺中3なってクラブやめてからまじめに学校終わってから熊野情報配りやるのしったあるやろ」とナカシャ。ここは、ナカシャの家のナカシャの屋根裏部屋である。ナカシャはこの前買ったアリアプロのエレキを片手に、大ちゃんが置いて行っているローランドのギターアンプにコードをつなぎ、僕は同級生のむっつんがこれまた置いているドラムセットにまたがり、ディープパープルのハイウェイスターのレコードに合わせ演奏し終わった後、ナカシャの4つ上のお姉ちゃんが差し入れてくれたカルビーバーベキュー味をもぐもぐほおばりながら、ファンタグレープでのどを潤しながらこの話をしている。「ああ、しったあるよ。それがどしたん」と僕。「夏休みの間だけ手伝う気ない。夏休み、うちの店も結構忙しくなるさか、店出来るだけ手伝ってくれってお母ちゃんにいわれたんや。そんで、週3日くらいと集金てつどてくれへんかな。もちろん、その分払うさか。もぐもぐ。」「う~ん、もぐもぐ、どうしょうかな、もぐもぐごくり。ま~、ナカシャ大先生の頼みやさか、やろか。その代わり2日間そのエレキ貸してくれ。ええやろ。もぐもく」と僕。「え~、こうたばっかしやぞ。う~ん、まあええわ。わかったよ。もぐもぐ。」と言うわけで僕は翌日から3日間はナカシャといっしょに担当地区の朝日町あたりを熊野情報を配り配達場所を覚え4日目からは一人で配った。次の週から月、水、金の3日配った。熊野情報というのは、今の熊野新聞の前の前の名前であり、仲の町の万清楼というホテルの前身が金波というホテルであり、その横に熊野情報の事務所があった。僕らは自転車で配った。7月の20日くらいから配っていたので、8月の初めに集金も行った。配っている家一軒一軒昼間に廻った。「すいません、熊野情報です。集金に来ました。」と僕。「ああ、ごくろうさんやね、いくら」と気持ちよく払ってくれるといいのだが、行っても留守や、「悪いよ~、今日持ち合わせないさか、3日後にきてくれるかん」と言われたり、「は~い、ちょっとまってよ」とすけすけのネグリジェ姿で出てくるホステス(やと思った)のお姉ちゃんが金を払ってくれるという何度でも行きたくなるうれしいこともあった。あれは、中学生の純情少年にはあきません。鼻血ブーになりそうでした。未だに脳裏に焼き付いております。そんなこんなで僕は夏休みいっぱいナカシャのお手伝いをし、アルバイト代を頂戴した。まあまあのお金になった。よう考えるとアルバイト禁止やったかもしれん。でも今思うとええ経験やったと思う。雨の日や風の強い日とかもあった。夏休みの間だけやったけど楽しかった。アルバイト代もらうとき僕はナカシャにはっきりと声を大にし目を爛々と輝かせてこういった。「集金やったらいつでもやるで~。」ナカシャがいった。「タケちゃん、集金ほど楽しもんないやろ」僕は、何度もうなづいた。 つづく。
 
 

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吉村 剛
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