那智勝浦町昔懐かし話 第23話
第23話『僕らのおやつ はったいこ』
新作でございます。
「おかあちゃん、腹減った~。」小学校から帰ってきた僕は「ただいま」の代わりにいつもこの言葉である。4時間目が終わってから給食を5分で(しかもお代わりし)超ハイスピードで食べ、昼休みの時間を目一杯ドッチボールをやる僕たちは給食だけで満足する訳なく学校から帰るとおやつ(今のスイーツとかなんとか言うおしゃれなもんやないで~)を食べていた。「おかえり、うーん、はったいこやったらあるで~。タケちゃんそれ食べとき」「はったいこか。まあ、ええわ。うまいし。でも昨日もはったいこやったで~。」「つべこべいわんとたべときな。」「わかったよ。」ここまで書いてああ、あれか。とお分かりになった方は、多分50歳以上の方でしょう。はったいことは、はったい粉と書き大麦をあぶって粉にしたものである。これを茶碗にスプーンで何杯かすくい、砂糖を少し入れ、その中にお湯を少し入れ箸で混ぜ混ぜするのである。
すると、なんて言うか、簡単に言えば灰色のソフトクリームみたいになるのである。それをスプーンですくい食べるとたちまち笑顔になるのである。
ただしソフトクリームみたいにきれいな色じゃなく灰色なのであまりおいしそうに見えないが、僕たちそのころの子供も大人もその魔法にとりつかれたのである。
スプーンではったい粉を茶碗に入れるのだからスプーンで混ぜ混ぜしたらええやないかと思うだろうが、駄目なのである。箸でないと。先祖代々吉野家の言い伝えなのである。(すいません。冗談です)でも何故か箸の方が混ぜ混ぜしやすくおいしくなるのである。味はちょっと粉っぽいソフトクリームかな。
後で知ったがこれが、整腸剤の代わりになるそうである。
このはったいこを茶碗一杯食べただけで満足した。毎日でも良かった。子供心においしいおやつだったのである。インターネットのヤホーで調べたら結構色んなレシピが載っていた。それはそれで良いのだが、僕らはやはりオーソドックス(なのかな)な食べ方が好きであった。好きであったと書いたが、もう何十年も食べてない。40年位かな。ぜひ知らない若者も一度食べてみてほしいと思う。最近この懐かし話を書いていて無性に食べたくなった。今度どこかで買ってきて混ぜ混ぜしよっと。 混ぜ混ぜ。
第23話おわり
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