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「仲の町3バカトリオどたばだ奮闘記」 第3章 うれし悲しき那智中学校5
第3章 うれし悲しき那智中学校5
中学校1年の2学期から僕は、科学部をやめて何故かサッカー部に、サカジーと一緒に入った。科学部の顧問はキンタ先生だったが、なんとサッカー部の副顧問がキンタ先生だった。僕とサカジーは、共に補欠だったがロンパンはいてサッカーシューズはいてグランドを走り回っていた。3学期のある朝いつものようにタコちゃんとナカシャと一緒に学校へ向かった。「なあ、タケちゃん、今日何の日か、しったあるかー」とナカシャ。「ああ、もてるやつが喜ぶ日やろ」と僕。「俺ら硬派もんは、関係ない日や。チョコレートぐらいでにたにたせえへんね。軟派もんの日や」と訳わからんこと言うて自分を慰めるタコちゃん。「そうや、仲の町3バカトリオには関係ない日でございます。」と僕。バレンタインデーである。もちろんこの日まで、僕たちは、チョコレートとかもらったことがない。今と違って義理チョコってもんがなかった時代である。もし、仮にも万が一、いや絶対ないと思うが、何かの間違いで、この中のだれかが、もらったら必ず隠さず報告することと誓いながら、僕たちは各自教室に向かった。僕は教室の前まで来ていつもと違う雰囲気に戸惑った。というのは。
教室の中は、いつもと違い少し静かで、男子たちは、教室に入らず廊下に固まって静かに話している。女子たちは、教室の中にいるみたいだ。「なんや、これ。なんで男子中に入らんの」と僕は、イサオ君に聞いた。「なんか、Nさんが、大事な打ち合わせするから、男子は悪いけどカバン置いたらローカにでてくれるかん」って言われたんや。Nさんとは、僕のクラスの女子の中でも一番活発な女の子で、リーダー的な女の子だった。「なんや、それ、で皆ここにおるんか。」しょうないから僕もしばらく、外にいた。あと5分くらいで1時間目の授業が始まろうとした時、入り口のドアが開いて、Nさんが「吉村君、悪いけど中に入ってくれる」って言った。僕は、まさか僕が呼ばれていると思わないから返事しなかった。Nさんは、もう一度「吉村君」と僕の名前を呼んだ。
「おい、タケちゃん、呼ばれてるぞ」とイサオ君。「えっ、俺」と僕は、恐る恐る教室の中に入っていった。女子たちは教室の後ろに固まっていて、僕は教室の真ん中まで歩いて行った。Nさんが「吉村君、急に読んでごめんね。あのね、私の友だちのHさんが、吉村君のことが好きでチョコレート渡したいみたいやけど、勇気がないんで、私に預けたんや。受け取ってもらえる」ってNさんは、紙袋を僕に差し出した。僕は、Hさんって誰やねんと思いながらも「うん、ええよ」と受け取った。僕が受け取った後、始業のチャイムが鳴り男子たちも中に入ってきた。チョコレートもらったのは、僕一人だった。男子たちから冷やかされた。昼休みに、ナカシャとタコちゃんに会い、報告した。3人でトイレに行ったときナカシャは、おもむろに「くっそー、なんでタケちゃんだけなんや。俺ももらうぞ」と胸のポケットから櫛を出し髪の毛をときだした。僕とタコちゃんは、その姿を見て大爆笑した。チョコレートをくれたHさんと僕とその後どうなったかは、ご想像にお任せします。 つづく。
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