約束ではないもの

彼女は肯定しなかった。すべては俺の希望的観測。
実現できたことと出来なかったこと。
俺は嘘はつかなかった。だけど彼女は現実主義者。
信じてもらえたことと最後まで疑っていたんだろうと思うこと。

出会いは冬、すぐに春が来て。
「暑い日が続くのは嫌い」それでも一度だけ海に出かけた。
夏が過ぎ、秋が来て。
「子供のころの夢はお花屋さんになりたいって思ってた」
二人でコスモス畑に行こうって約束したけどそれは叶わなかった。
また冬が来て。

前に進もうとした俺と終わりが来ることを知っていた彼女。
春、2度目の桜並木。夏、俺は海辺に一人で立ってた。
秋、会えばケンカばかりしてた。そしてまた冬が来て。

言葉選びが上手な女性だった。彼女と話すのが本当に楽しくて。
彼女も同じだと思ってたけど、それは俺の間違いだったんだろう。
最後に直接会ったときに言って欲しかった言葉がある。
「もう会えません」
それだけは彼女の声で聴きたかった。

彼女は俺の言葉を肯定しなかった。なにひとつ。
頷いたような、そっぽを向いたような。
俺は彼女の言葉をすべて信じた。
だけど、わかってもいた。どうすることもできなかったけど。

また冬が来た。
「なんか奇跡みたいなこと、起きねぇかなぁ」
そんなこと考えつつキーボード叩いてみたけど、ほんとにバカみたいな話だなって思う。それでも俺は彼女の言葉すべてを信じている。





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