[日記] 物語を「再構築」する 書籍版『リビルドワールド』が面白すぎる(ネタバレなし感想)

2022/3/17発売のリビルドワールド最新巻を読みました。個人的に表紙が過去イチで好みです。

この最新巻が大変面白かったのでこの記事を書いています。

そもそも、『リビルドワールド』は「小説家になろう」や「カクヨム」などでWeb連載されており(以下Web版)、全話を無料で読むことができます。その書籍化である書籍版リビルドワールド(以下書籍版)は、他のWeb小説と同様加筆修正されて書籍として販売されている――わけではありません。

加筆修正というレベルではなく、書き直されている、といった方が正しいです。もちろん、元のWeb版の面白さを損なうようなものではありません。大筋ではWeb版と同様の展開を辿ってはいます。しかし、その構成要素が少しずつ異なっている。「再構築」と呼ぶのにふさわしい物語の再構成は、書籍版Ⅱ上あたりから徐々に顕著になっていきます。そして、最新巻Ⅵ上は、その「再構築」をこれまででも1番楽しめた巻でもありました。

元々のWeb版も、失速感なくずっと面白く読める優れた「なろう小説」です。なろう小説ではあるのですが、一見「なろう」っぽくはないハードなSF・戦闘描写と、その構造にしっかりと組み込まれている「なろう」要素が「なろう」テンプレに飽きた人にめちゃくちゃに刺さる傑作となっています。Web版だけでも本当に読んでほしい。

リビルドワールド(小説家になろう)

で、書籍版の良いところなんですが、Web版を履修していると冗談抜きで3倍楽しめると思います。前述のとおり、書籍版はWeb版を「再構築」し、様々なエピソードを時に改変し、時に入れ替えながらも、大筋で同じストーリーが展開されています。それはさながら、タイムパラドックスにおける歴史の修正力のようで、異なる出来事が混入してもWeb版のストーリーに回帰していきます。そのWeb版とのストーリーの乖離が一層大きくなったのが最新Ⅵ上で、「このエピソードをここに持ってくるのか」「このキャラがいるとこういう風になるのか」「このエピソードがあそこのあれに対応してるんだな」というのを今までで一番感じました。そしてそのうえで、「もし、これがWeb版に回帰していくとしたら、一体どうなるんだ?」というのがⅥ上です。Web版の再構築のはずなのに、先が読めない。

あえて別の喩えをするなら、小説の実写映画化を見たときの気持ちに似ています。「そこは削ったか~」「映画ではそう表現するのね」と、原作との差異を楽しむのはやったことがある人も多いでしょう。その喩えに従うと、かなり上手に実写映画化に成功しています。ただし、リビルドワールドはそれにとどまらず、エピソードを大胆に改変し、そのうえで面白さを損なわず、原作を知っているはずなのに先の展開にハラハラドキドキしている――そんな感じの体験ができました。

4月に連続刊行されるⅥ下では、おそらくリビルドワールドの大きな区切りとなる出来事が描かれるはずです。少なくとも、Web版に回帰するという前提ではそうです。でも、そのイメージが湧きません。Web版とは別路線で行く、となっても驚かないくらいには、すでに現状はWeb版と乖離しています。でも、回帰せずに成り立つというのもまた、信じがたい。それくらい大きな出来事がこの先に待っています。この予測不能を楽しめるのは、Web版を読み込んで、そのうえで書籍版Ⅵ上まで読んでこそのものです。

この記事をお読みの皆様におかれましては、まずはWeb版からでも、ぜひリビルドワールドを読んでいただきたいです。もちろん、書籍版からでもよいと思います。面白いと思ったら、もう片方を読んでもらえると、2倍、3倍楽しめるはずです。

リビルドワールド(小説家になろう)


◆以下余談

リビルドワールドのどこが面白いのかについてはいつか記事にしたいなと思っています。なろうで200話以上あるのですが、通しで5、6回は読んでるはず。書籍はあまり再読できていないのですが、少なくともそれくらい再読には耐える作品です。

一方でキャラ萌えとか関係性萌えみたいなのは薄い部分があって、少なくとも自分はあんまりキャラ語りできないです。むしろそこ薄めなのにここまで面白いのがすごい。

コミックス版は正直なところ一段評価が落ちるかな、という感じです。というのも、リビルドワールドが描く「俺TUEEE」感が小説以外の媒体との相性が悪いんですよね。不穏要素含め、地の文にかなり依存しているので。ただそろそろ近接戦闘が描かれるはずなので(単行本派です)、そこは期待したいところ。

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