一般社団法人の税金 6つのポイント
最近、一般社団法人を設立される人が増えています。同時に、一般財団法人の税金についての相談件数も増えてきています。
そもそも一般社団法人は、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」により規定されている法人です。一般社団法人の会計処理や税金の計算方法は、他の一般的な株式会社とは異なっている部分があります。
ここでは一般社団法人の税金について確認していきたいと思います。
1. 一般社団法人の税金について
平成21年4月1日から平成28年3月31日までの間に終了する各事業年度については、年800万円以下の金額に対する法人税率が、22%から18%に引き下げられています。
株式会社等の法人税率があるように、一般社団法人にも法人税があります。以下、一般社団法人の税金についてまとめました。
一般社団法人の税金は30%
収益事業から生じた所得に対する法人税率は、30%
所得金額が年800万円以下の金額は、18%
公益社団法人の税金は30%
収益事業から生じた所得に対して課税、公益目的事業は非課税
収益事業から生じた所得に対する法人税率は、30%
所得金額が年800万円以下の金額は、18%
2. 非営利型一般社団法人の設立について
非営利型一般社団法人とは、一般社団法人の法人税法の一つの区分です。一般社団法人は、法人の組織形態によって、次のいずれかの法人区分となります。
普通法人:普通法人である一般社団法人
公益法人:非営利型法人に該当する一般社団法人
普通法人型一般社団法人
普通法人の一般社団法人は、株式会社などと同様に、会費収入や寄付金収入を含むすべての所得が、法人税の課税対象となります。
非営利型一般社団法人
非営利型法人の一般社団法人は、法人税法上の収益事業による所得のみが法人税の課税対象となり、会費収入や寄付金収入などの所得は、法人税は課税されません。
3. 非営利型一般社団法人の条件
非営利型の一般社団法人に該当するための条件は、次の通りです。
共通条件
三親等以内の親族関係にある理事の数が、理事全体の3分の1以下であること
理事が3名以上いること
解散時の財産が、公益法人法で定められた者に帰属する旨が定款に記されていること
共益的事業をメインに行う一般社団法人の場合
共益的事業とは、会員などの構成員を対象とした事業を指します。
業界団体や資格者団体、同窓会などが、それに該当します。
構成員が負担する金額について、社員総会で定める旨が定款に記されていること
収益事業を主な事業としていないこと
特定の個人や団体に剰余金を分配しない旨が、定款に記されていること
共益的事業を行わない一般社団法人の場合
剰余金の分配を行わない旨が、定款に記されていること
非営利型一般社団法人に該当するかどうかの判断について
設立した一般社団法人が、非営利型の一般社団法人に該当しているかどうかについては、行政機関から認定を受けるのを待つのではなく、その法人自らが行わなければなりません。
普通法人から非営利型法人への変更について
当初、非営利型でない一般社団法人、つまり普通法人を設立し、その後に非営利型の一般社団法人の要件を満たした場合には、税務署や都道府県税事務所、市区町村の法人税担当部署に異動届を提出することにより、その後は、非営利型の一般社団法人として経理や税務申告を行うことができるようになります。
4. 社団法人の分類
社団法人は法人税法上、「公益社団法人」「一般社団法人」の2つに分類され、さらに一般社団法人は、非営利型と非営利型でない一般社団法人(普通型一般社団法人)に分類されます。
公益社団法人
一般社団法人のうち、主たる目的が公益目的の事業である法人が、「公益社団法人及び公益財団法人の認定に関する法律」に基づき、行政長である内閣総理大臣または都道府県知事に申請し、公益認定を受けた法人だけが、公益社団法人になることができます。
公益社団法人は、公益目的事業については法人税は課税されません。
公益認定を受けた公益社団法人も公益事業とは別に、収益事業を行うことが可能です。この収益事業の部分にだけ、法人税の課税対象になります。
非営利型の一般社団法人
「公益社団法人及び公益財団法人の認定に関する法律」で、公益認定を受けていない一般社団法人であっても、非営利型法人の要件に該当する法人は、収益事業についてのみ法人税の課税対象になり、非収益事業に対しては課税されません。
非営利型以外の一般社団法人(普通型一般社団法人)
「公益社団法人及び公益財団法人の認定に関する法律」で、公益認定されていない一般社団法人のうち、非営利型の一般社団法人以外の法人になります。
この分類に属する一般社団法人は、法人税法上の「普通法人」に該当することになります。営むすべての事業に対して法人税が課税されます。
5. 一般社団法人の会計
一般社団法人は、公益事業や共益事業等の非収益事業を行いつつ、一部営利を目的とした収益事業も行っていることがあります。
このように、非収益事業と収益事業の両方を営む場合、どのような会計基準を採用すれば良いでしょうか。
採用され得る会計基準としては、「公益法人会計基準」または「企業会計基準」の2つが考えられます。
公益法人会計基準
公益法人会計基準は、公益法人特有の会計基準です。
公益法人会計基準とは、寄付金や国、地方公共団体からの助成金などで使途を指定されているものについて、指定された使途ごとに分類して会計処理を行う会計基準になります。
公益法人会計基準は、公益社団法人はもちろんのこと、一般社団法人でも採用可能な会計基準です。
主に非収益事業を営んでいる一般社団法人で、寄付金や国、地方公共団体からの助成金などが主な収入源になっている場合には、公益法人会計基準で会計処理を行うことです。
企業会計基準
一般社団法人であっても収益事業だけを営んでいる場合や、非収益事業を営んでいる場合でも、収入に占める寄付金や国・地方公共団体からの助成金などの割合が少ない場合には、企業会計基準で会計処理を行った方が良いです。
企業会計基準で会計処理を行う場合には、市販の会計ソフトでも対応可能ですが、公益法人会計基準で会計処理を行う場合には、市販の会計ソフトで対応することができません。
この場合には、別途、公益法人会計基準に対応した専用ソフトを購入しなければなりません。
6. 一般社団法人の税務
一般社団法人の税務については、「非営利型"以外"」と「非営利型」で異なります。その違いについて確認していきましょう。
非営利型"以外"の一般社団法人
非営利型以外の一般社団法人については、法人税法上「普通法人」に該当することになります。すべての事業について税務申告を行い、納税することになります。
消費税は、株式会社と同様の方法で申告を行います。
非営利型の一般社団法人
非営利型の一般社団法人については、収益事業についてのみ税務申告を行います。非収益事業については、税務申告の必要はありません。
消費税については、株式会社とは異なる計算方法で納税額を計算することになります。
これは、一般社団法人の収入に占める特定収入、つまり会員の年会費や寄付金、あるいは国、地方公共団体からの助成金などの割合が5%以上の場合に、これらの対価性のない収入によって賄われる課税仕入の税額控除額を調整する必要があるためです。
この消費税の「課税仕入の税額控除額を調整」するための計算が非常に複雑なため、消費税の申告は、一般社団法人の税務申告の中でも最も難しい部分になります。
まとめ
非営利型一般社団法人を設立すると、収益事業以外の事業は法人税が非課税になります。これが非営利型の大きなメリットです。
しかし、非営利型の一般社団法人と認められるには、決められた条件をクリアしなければなりません。すべての一般社団法人で非課税になるわけではありません。
一般社団法人は非営利、だから非課税と思い込んでいると、事業内容によっては課税されますので、注意が必要です。一般社団法人の設立を考えている方は、一度専門家に事業内容を相談してみるのがおすすめです。
一般社団法人については「一般社団法人とは?|13のポイントをわかりやすく解説」こちらの記事で徹底的に解説しているので、より詳しく知りたい方は是非ご覧ください。
協会ルネサンス
吉岡岳彦
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?