深夜2時。
外は静かな春の雨。
僕の腕の中には、野良猫が1匹。
今この瞬間は幸せなはずなのに、
僕は悲しくて泣きたくなっていた。
君がやって来るのはいつも真夜中。
フラフラと、どこからかやって来る。
今日はどこで飲んでたの?
誰と飲んでたの?
話しかけても、君は答えず、僕の腕の中でそっぽを向いている。
たまにこっちを向いたかと思えば、僕の鼻先をぺろっと舐めて満足気に喉を鳴らすと、またそっぽを向く。
...君を独り占め出来たらいいのに。
君の可愛い鳴き声も、驚くほど軽い身体も、凛と澄ました横顔も、湿った瞳も、
全部全部僕のものにしたい。
欲しくてたまらない。
ずっと君を抱いていたい。
「いつになったら僕に飼われてくれるの?」
そう聞くと、野良猫はするりと僕の腕を抜け、大きく伸びをする。
「私に鈴がついてたら、あなたは私を抱いてくれないじゃない。」
そう言うと野良猫は、僕を置いて夜の闇へと消えていった。