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伝統文化の未来を憂う啓蒙家パティシエ Nさんのこと

題名だけ読むと一体何者だろう…という感じですが、Nさんは佐賀県鳥栖市で洋菓子店を営まれるパティシエです。

地元の文化財が朽ちるのを憂い、私財を投げ打って佐賀市都市景観重要建築物「旧M邸」を買取られました。

古民家をカフェにするという話は珍しいことではないかもしれませんが、Nさんの夢は壮大です。
なるべく創建当時の状態に戻したいという想いがお有りで、建物や当時の職人たち技術者への敬意を感じます。

天然材料や伝統技術の再興という意味で取り組まれており、安価な素材で簡便に見栄え良くする修繕ではなく、時間を掛けてでもきちんとした文化財として後世へ残したいという想いで臨まれています。

Nさんと知り合ったのは一年前、2022年7月。
知人に連れられ、Nさんのお店 Sweet Shop TAKA へ。
初対面なのに、二回目に会った時は既に「旧M邸」にいました。

漆塗りの部分を見て欲しいとのことでお伺いしましたが、古い物件なので漆がどうというよりまず拭き掃除が必要な状態で、ボランティアの方達と一緒に雑巾掛けをしました。

それから何度か掃除や柿渋を塗る作業にお邪魔しましたが、まだまだやらなければならないことが沢山ありそうです。

文化財なら補助が出るのではと思われるかもしれませんが、国指定などではなく地域で守られた文化財です。
管理維持費はほぼ所有者の負担です。

人が住まなくなった家はどんどん朽ちていきます。
このまま誰も使わなければ建物自体が崩壊してしまうと危機を感じたNさんは買い取ってしまいました。 

狂気の沙汰です(笑)


お忙しい仕事の合間を縫ってご自宅から離れた物件へ通い、傷んだ柱や壁の取り外し、屋根に上って瓦を下ろしたり、なんでもされています。

繊細な欄間や、特別仕様に作られた佛間と客間の溜塗りの柱などはとても美しいです。

「これ、なんですかね?」 

と聞かれ、客人が通る廊下の壁に嵌められた黒っぽい板をよく見ると、貝梨子地(かいなしじ)が施されていました。
螺鈿が散りばめられており、経年変化で退色と艶の引けがありましたが、磨き直せば輝きを取り戻すでしょう。


田舎の山奥の邸宅に不似合いなというと大変失礼ですが、旧M邸はどこか都会的な趣のある建物です。
創建当初の主はきっと文化人であったのだろうと想像します。


完全修復には資金もマンパワーも不足しているとのことで、営業しながら少しづつ手を加えていかれるそうです。

志に賛同されるボランティアの方を募っておられますので、詳細はNさんのFacebookページかお店のInstagramをご覧下さい。

伝統技術と職人の手仕事が生きる静かな山間の邸宅「旧M邸」。

買い取られたオーナー自らが営む洋菓子店として生まれ変わります。



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