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写真個展 題名説明

はじめに

私は、2024年に写真の個展「溶けて光って」を開催しました。今回は、この個展の題名に込めた意味を説明します。


2024年 「溶けて光って」

溶けて光って
2024 / DESIGN FESTA GALLERY / 原宿

2024年の個展、「溶けて光って」の主題は二つです。

一つ目の主題は、世界の動的な平衡性です。物理学では、全ての物質は粒子から構成されており、物質の状態には、固体と流体という二つの種類があるとされています。

しかし、明らかに個体と思われるものでも、時間の尺度を変更すれば、流体として考えることができます。腐食する金属や、腐敗する木材がよい例でしょう。これらの物質は、長い時間をかけて動き続け、形態を変化させます。

このように、たとえ一般的に個体と呼ばれる物質であっても、それは、絶え間ない流れの中で、一時的に動的な平衡状態が保たれているに過ぎないのです。

生命の体についても、同じことが言えます。

生命の体は、崩壊してゆく構成成分を先回りして分解し、崩壊の速度よりも早く再構成し続けることで、バランスを保っています。そのため、分解の速度が、再構成の速度に追いつけば、生命は死を迎えてしまいます。

しかし、ここで分解された構成成分は、他の生命の体を構成するための材料となるのです。ここにも、絶え間ない粒子の流れの中に、動的な平衡状態があります。

これを、詩で表現してみましょう。

混ざるミルクとコーヒーが
溶け切るまでの  マーブル模様
なにか見えたと思ったら
いまはもうない  小さな命

人類文明についても、やや詩的な文章で表現してみます。

人類文明のかがやきは、無数の粒子の不可逆的な流れと、それに逆行を試みる人類との摩擦によって生じた、発光現象のようなものである。

このような、生命の輝きのイメージと、流体的な世界の捉え方、そして、閃光としての人類文明、という視座を表現するために、「溶けて光って」という題名を付けました。


二つ目の主題は、時空の流れです。

まず、平面作品を「三次元空間の二次元断面」と定義し、立体作品を「四次元時空の三次元断面」と定義します。

すると、今回の展示作品は平面作品なので、三次元空間の二次元断面を写し取ったものであると言えます。また、私がファインダー越しに感じた美しさは、四次元時空の美しさの、三次元断面であった、ということも分かります。

つまり私は、三次元空間に四次元時空の美しさの一端を感じ取り、さらに、その三次元空間の断面を、二次元平面に映し取った、ということになります。

また、最終的には、その断面を、印刷用紙という質量を持った三次元の物体に、インクを用いて可視化させたのです。これにより、二次元情報は画素数の粗い状態で、ふたたび三次元空間に写し取られ、さらには、四次元時空でより大量のノイズ粒子と溶け合いながら、分解していくことになります。

このような時空と美しさの関係を、絵画とは異なる、光学的な方法によって認識できることの面白さを表現するためにも、「溶けて光って」という題名にしました。


おわりに

以上で、写真の個展の題名についての説明を終わります。
ここまで活動を続けられたことは、応援してくださる多くの方々と、日々支えてくれる仲間のおかげです。今後はペン画の活動も含めて、さらに精進してまいります。

活動情報は、冨岡理森の公式サイトからご覧いただけます。

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