
スピッツ
スピッツは子供の頃の車内でよく聞いていた。
よく言う、親が好きでと言うものではなく
「死ぬまでにこの世の聞いたことある音楽全部集める!!」と腹に決めていた少年時代の私はスピッツを素通りできるはずもなく
どのアルバムにするか、そもそもがんばって貯めたおこづかいをほとんどつぎ込んで買って後悔しないのか、
タワーレコードで1時間半ほど悩んだ末、高揚感と緊張で顔を真っ赤にしながら背伸びをしてレジにおいた。
悩み抜いて買ったアルバムは、「チェリー」や「空も飛べるはず」が入っている「CYCLE HIT 1991−1997」
帰りの車内では母親が許すギリギリまでボリュームを上げてスピッツをあびながら帰った。
時は過ぎ、大学生になった私に人生ではじめて彼女ができた。
アルバイト先で出会った、同い年の彼女もまたスピッツが好きで
車の中ではいつもスピッツを流し、イントロクイズをしたり新しいアルバムが出るとそれを聴くためだけに遠出をして感想を言い合った。
特に印象に残っているのは「夕焼け」を隣で口ずさんでいる彼女だ。
大切にしたいなと思った。
はじめてスピッツのライブに行ったのも彼女とだった。
CD音源でしか聞いたことのない方は驚くかもしれないが、ライブのスピッツはめちゃくちゃロックだ。(音源でもロックですよねわかります)
さきちゃんのドラムはえげつないし、てっちゃんは見た目もギターもイケイケだし、タムは目を離したらどこに行ったかわからなくなるし、マサムネさんはマイナスイオンを含んだ声を届けてくれる。
そしてMCはおぼつかない。(いい意味で)
「楓」は聞いていると曲と自分がいつの間にか1つになりそうな感覚になった。
うまく説明できんけど。
彼女とスピッツのライブは3回ほど行った。
ライブ後はカラオケに行き、セトリ通りの曲順で、マサムネさんになりきって熱唱するのが定番になっていた。
そして、いま。
自分から進んでスピッツを聴くことは少なくなってしまった。
だけどたまにiphneが気を利かせてスピッツを流してくれる。
もうCD屋さんで顔を真っ赤にしながら格闘する必要もない時代になった。
「新曲だしたんだね」とiphoneに語りかけるが返事はない。
当たり前だけど。
年月は経ったが相変わらずかっこいいバンドだなとつくづく感じる。
彼女はどこで何をしているかわからない。
色々あったし、当時の自分ができることは精一杯やったので未練も全くない。
純粋に、幸せで、元気でいてくれてたらな、と心から思う。
別れてから1人でライブにも行ったが普通に楽しいしやっぱりスピッツは最高だなと思える。
1人でセトリを制覇できないからカラオケには行かないけど。
ただ、死ぬまでにもう1度彼女の「夕焼け」が聴きたい。
夢の大きさは小学生の時と変わらないくらい難しそうだ。