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よるべ×シイナナ 劇塾同期対談!前編

旗揚げ公演『深呼吸』を3週間後に控えたよるべ。
主宰・田宮ヨシノリと、伊丹想流劇塾4期生の同期でありウイングカップ(2020年度)にて優秀賞を受賞されたシイナナのお二人で、Zoomによる対談を行いました。
前編は二組が出会うきっかけとなった、伊丹想流劇塾の経験について話していただきました。

※劇塾=伊丹想流劇塾を指します。
聞き手・編集:吉岡ちひろ(劇団なかゆび) 


参加したきっかけ

—簡単に自己紹介をお願いします。
 
田宮ヨシノリ(以下、田宮):関西小劇場で俳優を4年ぐらいしています、田宮です。シイナナのお二人とは伊丹想流劇塾4期生としてアイホールに通った仲ですね。ウイングカップに参加した先輩でもありますし、何か話せたらいいなと思ってお声掛けさせていただきました。
 
湊伊寿実(以下、湊):シイナナで作・演出をしています、湊伊寿実です。LIB企画という個人ユニットをやっていた頃に出会ったメンバーと、シイナナを結成しました。田宮くんと同期で劇塾に通っていたのが、ちょうど、旗揚げ公演をウイングカップでやったタイミングでした。
 
藤田サティ(以下、藤田):藤田サティです。シイナナでは脚本を書いています。それ以外にも制作周り、音響などスタッフワークを色々やっています。
 
湊とはLIB企画で再会してシイナナをはじめたのですが、実は学生時代に劇団仲間だった時代があるので、もう長い付き合いになりますね。その後、湊は東京で芝居をずっと続けていて、私は演劇から離れて。ずいぶん時間が経ってからLIB企画で再会して、あれよあれよと劇団をやろう!という話になって、劇塾に通っていたのはそんな頃です。シイナナは、旗揚げからもうすぐ2年になるのですが、その間に田宮くんをはじめ色々な人脈ができました。
 
—劇塾にはお二方とも参加されていたんですか?
 
藤田:そうなんです。でも私、応募することを湊に黙っていたんですよ。めっちゃチキンなんですけど、もし私だけ落ちたら落ち込むなーという理由で(笑) めでたく二人で受かってホントに良かったです。
 
湊:選考には面談と書類があって。身辺雑記みたいなね。
 
田宮:そうです、懐かしい!A41枚くらいの身辺雑記を書いて送るみたいな、ちょうどコロナになってすぐでしたよね。
 
藤田:そうそう。私たちはたぶんシイナナをやり始めてすぐの時期で…。
 
田宮:コロナになったから劇塾に行こうと思ったんですか?
 
藤田:いや、それは全然関係なくて。サリngさんが劇塾の講師だったことが大きいです。私、学生時代は自分の所属していた劇団以外知らなくて、LIB企画に参加してから初めて小劇場演劇という世界があることを知ったんですよ。その時観たの作品の一つが、突劇金魚さんでした。
 
田宮:ニワトリ(『少年はニワトリと夢を見る』)ですか?
 
藤田:いや、オサム(『墓場のオサムと機嫌のいい幽霊』)!アイホールのね。オサムを観て「小劇場演劇って面白い!」と思って。その突劇金魚のサリngさんが劇塾の講師をされていると知って。
 
田宮:湊さんはなぜ劇塾に参加されたんですか?
 
湊:劇塾3期生の卒塾公演をサティが観に行っていたのを聞いて。
 
藤田:言ってた言ってた!
 
湊:それに興味を持って、行ってみたいとずっと思っていたからですね。
 
藤田:めっちゃ面白かったんですよね。
 
田宮:山本(正典)さんの戯曲とかが上演されていた年ですよね。
 
藤田:そうそう。
 
田宮:余談ですけど、僕もそのニワトリの公演を突劇金魚アトリエに観に行ったのが初めての小劇場でした。それで完全にはまって、ちょうどGFT(GoldFishTheatre)の1回目があって、そこから関西の小劇場に出演するようになりましたね。たぶん18歳くらい、4,5年前。
 
湊:田宮くんはそのイメージなかったかも。
 
田宮:山田(蟲男)さんに色々教えてもらって、今の僕があるので。

講師のお二人の印象

—劇塾でいえば、5分の短編を書いてきて、それをサリngROCKさんと岩崎正裕さんにフィードバックをもらって書き直すという形だったと伺いました。シイナナのお二人はサリngさん・岩崎さんにどんな印象をお持ちですか?
 
田宮:これ、絶対違う印象を持つと思うんですよね。僕の時は岩崎さんが概要を、サリngさんは細かい指摘。例えばセリフが噛み合っていないとか、なんでこの部分をこう書いたのかみたいな。岩崎さんはどちらかというと、全体を見て「こういう感じがいいよね」といった話をされていたイメージ。
 
湊:私も同じように思ってた。岩崎さんの方が俯瞰をされる印象で、サリngさんは人の生理的な部分や情、細かい部分など論理的かどうかを見られている印象でしたね。
 
田宮:僕は最初サリngさんの方が逆のイメージで、それは作品がアグレッシブだからかなと思っていたんです。でも実はサリngさんの方が論理的な指摘で、岩崎さんはやっぱり演劇の知識がめちゃくちゃ豊富な方で、これまでの演劇の流れでこういう芝居があって、その芝居が今書いてきたのはこういう感じもあって、みたいな演劇の深い見方をされていて。岩崎さんすげえ、経験すげえ!みたいな感じは面白かったですね。
 
藤田:私の印象は、ロマンを見てくれるのが岩崎さんで、個人的なこだわりの気持ち悪さみたいなことを引き出してくれたのがサリngさんって感じ。
 
田宮:なんとなく感じはわかりますね。
 
藤田:劇塾で最初に書いた作品が、奇をてらっていないまっすぐエモい話だったんですけど、それを岩崎さんが「この渋い感じいいじゃん」って言ってくださったんですよ。でも私は、まっすぐな自分ではない個性に飢えていた時期で。最終公演の演出をしてくださったのがサリngさんだったんですけど「あなたの作品の登場人物は、本当にそんな行動する?」「この人はこんなことをする人なの?」と、そういう個人的なことを掘り起こす、いい意味で私の気持ち悪さのようなものを引きだしてもらえたというか。
 
田宮:やっぱりそれは一緒に演出としても作品を作っていたからというのもあるかもしれないですね。
 
藤田:あるかもしれないです。最初に岩崎さんが拾ってくれたロマンの部分は、私がそもそも持っているもの。私、ロマンチックなものが大好きなんですよね。自分のベースにあるものを(岩崎さんに)いいよ、と言ってもらえて、すごく嬉しかったし、大事にしていいんだと思えた。タイプは違えど、私にとっては良いお二人やったなって思いますね。劇塾で何を言われたかって覚えていますか?
 
田宮:印象的なのは何個か覚えていますね。
 
湊:田宮くんは最初から最後まですごく良く書けていた人、良いよ良いよ!って二人に言われていた印象がある。
 
田宮:僕的にはサリngさんにはあんまりはまってないな、あれー?みたいな感じでしたね。
 
—各自が書いて持ってきた作品の講評って、全員公開の場で言われるんですか?
 
藤田:そうです。みんなで集まって一つずつ、しかも最初に読むんですよ。セリフを割り当てられて読んだ後にフィードバックをもらうのが1週目で、それを受けて2週間後には書き直して持って来るみたいな。
 
—ではお互いの作品も知っているし、お互いの作品が講師の方にどう映っていたかも知っている訳ですね。
 
藤田:人の作品のフィードバックを聞くのは結構面白かったな。
 
田宮:フィードバックもめっちゃ勉強になったし、他の人の作品を読むのも勉強になった。
 
藤田:みんなすごいなー、こんなん考えられへんなーって。この人の作品が好きだなと思ったら意識するようにもなったし。
 
—ライバルのような感じですか?
 
藤田:感覚的にはライバル。負けたくねえ!みたいなのはありました。
 
田宮:次はどんな作品を書くんだろう、という楽しみもありました。

劇塾を経て

 —シイナナさんは劇塾で書いた作品を今度上演されるそうですが。
 
藤田:そうなんです、劇塾の作品にはめちゃくちゃお世話になっています。
 
田宮:僕「ふたりごと」の1回目を観に行ったんですよ。
 
藤田・湊:ありがとうございます!
 
田宮:割とお二人の作品を劇塾で読んでいて、たばこのやつも、骨のやつも、自分が良いなと思った作品が多いから、めっちゃいい企画やこれ!と思って。
 
藤田・湊:めっちゃ嬉しい、ありがとうございます!
 
藤田:劇塾で書いた短編はストックとしてどんだけ使うねん、ってくらい擦り倒してる。
 
田宮:それが良いんだと思います。
 
藤田:もちろん本公演をやりたいなという話もしているんですが、仕事と並行して新作長編を書きましょう、となると何というか…よっこいしょ、という感じがしちゃって。90分とかの新作を0から書き上げるのを1年間待つよりも、上演をもう少しコンスタントにできないかと考えた時に、じゃあ劇塾の短編を使ったらいいんじゃないかなと始まった企画でした。
 
湊:コロナで大人数の作品はやりづらいし、シイナナには会話を大事にしたい思考の人たちが多いので、二人芝居をがっつりというのがマッチしました。あとは、私も藤田もそんなに関西の演劇界に知り合いが多い訳ではないので、これをきっかけに演出家さんや俳優さんと出会えたらいいなって。
 
藤田:仲間を増やそうぜっていうね。
 
湊:何かあった時にお声がけできる方が増えたらめっちゃ嬉しいなと。
 
田宮:それが今や東京公演まで開催されるとは!
 
藤田:行こうと思ったら行けるもんだなと、大変ですけどね。
 
—今回のよるべは一人ユニットの旗揚げ公演という位置付けですが、田宮くん自身は、例えばシイナナさんのように一定のメンバーを集めようとは思わなかったんですか?
 
田宮:劇団にするなら、劇団としての責任みたいなものがあるなと思って。僕はまだ将来どこに定住するかも分からないし、例えば関西で劇団を作った後に僕が東京で働くとかになったら今後その劇団はどうする?という話になってしまうなと。そうやって責任が取れないのは嫌やなと思ったので、逆に言えば自分がどこに行ってもできる母体が一つあれば良いなと思って企画しました。
 
藤田:よるべ、激アツですよね。
 
湊:公演が発表された時悶えたもんなあ。観に行く気満々やし、(今回の対談企画で)声掛けてもらえてとても嬉しかった。
 
藤田:私、田宮くんのこともめっちゃ意識しているんですよね。今年1月の大大阪舞台博覧会でもかち合ってるし、その時キャメロン(瀬藤謙友)さんのツレヅレで田宮くんが脚本を書くということを聞いてマジか!って。しかも香川(由依)さん出るし、キタコレ!と思って。めっちゃ面白かったなあ。
 
湊:めっちゃ面白かった!『(オー)テレキャスター』、さすが田宮くんやなって話していました。
 
藤田:田宮くんの書く気持ち悪さが好きなんですよね。
 
田宮:俺は全然気持ち悪いと思ってないんですけどね(笑)
 
藤田:田宮くんにしかない独特さがあるじゃないですか、それが面白いなあって思った。なのでよるべもめっちゃ意識しているし、めっちゃ楽しみにしています。


後編ではウイングカップ参加のきっかけと、現在のお互いの活動などについての対談をお届けします!

公演情報

シイナナ 二人芝居企画 Vol.3 『ふたりごと』in TOKYO
2022年12月2日(金)~4日(日)
Café MURIWUI(カフェ ムリウイ)

WINGCUP参加公演
よるべ『深呼吸』

2022年12月23日(金)~24日(土)
ウイングフィールド

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