【エッセイ】6人のアイドルと歩いた生き地獄
わたしは親切だからどうして夜中の1時にこの記事を書こうと思ったのか一番最初に記しておくよ。
ツイッターで見た人もいるかもね。
でんぱ組.incからえいたそが卒業して、新たに5人の新メンバーを迎えて10人組になった。
眠れないからツイッターを見てたらそんな記事を見つけて、えっ増えたなぁなんて素直な感想を抱いた。そんで、でんぱ組.incと歩んだわたしの人生過去最底辺を思い出していた。
2016年、19歳のわたしは自室のドアノブと自分の首に100均で買ったストールをくくりつけていた。部屋を片付けて、電気を消して。けっきょく未遂に終わったけれど、自殺をしようとしていた。
大学に入学して1年とちょっとが経って、簡潔に言うとわたしはわたしに「お前は出来損ないのクズだ」とぶん殴られ続けていた。その結果の自殺未遂だ。ずっと心配してくれていた母親に泣かれたり、授業を担当してくれた大学の先生に心療内科を紹介してもらったりしてあれよあれよとうつ病の診断が下された。
正直言って本当の地獄はそこからだった。そのころ心療内科で処方して貰っていたのはいわゆる抗うつ剤ではなくて、漢方薬だった。飲んだ人ならわかると思うけど、苦くて苦くてお湯なんかで飲んだ日には声にならない叫びを上げそうになる。まだうつ病なんかの知識がまったくなかったわたしはこの漢方を飲んでいれば楽になれるんだと毎日必死で飲んでいた。
まぁ普通に考えて錠剤の抗うつ剤を飲んでいたってそんな急に治りはしないうつ病が短期間の漢方薬服用で簡単によくなるわけがないのだ。だからそれからの数か月、ひたすら自室で布団を涙で濡らしながら生活する日々が続いた。布団に埋もれて泣いて泣いて、それでも涙が涸れることはなかった。
そんななかでわたしは名前と存在くらいしか知らなかった当時6人組のアイドルグループ『でんぱ組.inc』にのめりこんでいた。曲を聴いて、MVを見て、だめかなと思いながらもYouTubeの無断転載動画も漁って、もうすっかりファンだった。彼女たちは各々が訳ありのアイドルだった。センターは元いじめられっ子の引きこもりゲーマー、リーダーは中二病がひどくて、ほかの4人も夢に挫折していたり激しい劣等感をもっていたりコミュ障だったり。ちなみに最推しはニコニコ動画で踊り手をしていた。
小さなライブ会場でマイクを握る彼女たちは力強く歌っていた。
「生きる場所なんてどこにもなかったんだ」
「うまれてきた意味 やっとわかりはじめてる」
狭いステージをめいっぱいに走り回って、自分たちはここにいると全力で伝えようとしていた。
かっこいいと思った。彼女たちの存在をすぐそばに感じた。
ベッドでまるくなって布団をかぶって耳をイヤホンでふさいで、でんぱ組.incの曲を聴く。そうしたら、6人がわたしの背中をさすって「世界中照らしてこんなにも 眩しいんだって歌ってやる」って笑う。彼女たちが隣を歩いてくれて、だからわたしは真っ暗なトンネルのなかを進めた。
あんまりこのころのことは記憶になくて、ただ布団を濡らしていたこと、常に6人がそばにいてくれたことだけがあのころの思い出になっている。
個人的な意見なので聞き流して欲しいけど、わたしは6人のでんぱ組.incのファンであってそれ以降のでんぱ組.incのファンではない。ただ応援はさせて欲しい。いつかのわたしに寄り添ってくれたでんぱ組.incは例えかたちが変わろうともいつかのわたしみたいな人間のそばにきっといてくれるから、そんなでんぱ組.incはやっぱり応援したいんだ。ありがとうの意をこめて。
あなたたちに出会えてほんとうによかったって、心からそう思うよ。
そういうわけで、わたしの人生過去最底辺は、色んなものを抱えながらそれでも笑って前に進む6人のアイドルとともにあったのだ。
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