ヒールって 【作品に触れる】
プロレスなんて、まったく興味がなかった。
人生の中で触れたこともなかった。
だけど、血まみれになる彼女たちが美しく見えた。
『極悪女王』
血まみれになる彼女たちを直視することはできなかった。
これがフィクションではないということに衝撃を受けた。
現実は、物語の中の世界よりよっぽど色濃い。
最初は、ぐずぐずしている香に苛立ちが勝ってしまった。
優しすぎる香を見て、どうしてこうなっちゃうんだって、もっと上手に生きていけばいいのに、と思った。
だけど彼女が「ダンプ松本」として生きていくと決めた瞬間、彼女の芯の強さに心奪われた。
彼女がダンプとして生きた数年間、日本中の誰もが彼女を嫌い、敵になったとしてもその人生を降りることはなかった。
自分が主人公のヒーローになることを考えたことはあっても、日本中のヒールになることなんて考えたことはない。
それほど人々の注目を集める悪を私は知らない。
私はそんなにも強く生きられない。
気づいたら涙が止まらなくなっていた。
全く興味を持っていなかったプロレスに心奪われていた。
プロレスのルールも何も知らない私でさえ熱中した。
何があっても心に決めたひとつを演じ切ることができたなら、ヒールでも美しく生きれる。
自分の人生、まだまだやれることがあるのかもな。
ただただ情熱が冷めないうちの、よるのひとりごと。