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【第一の人生】20の章:ママの責任、最後まで手は抜かない

*登場人物*
・アンナ←萬里の源氏名
・ダイ←マネージャー(マスターの実弟)二店舗目と掛け持ちしている。
・りな←二店舗目のレギュラースタッフ(スタッフ間の恋愛禁止だが、ダイとデキてるぽい)
・「まい」と「くみ」←最後のレギュラースタッフ


1999年
アンナの中で「辞める!」と決めたら
がぜんヤル気が出た。

元々夜の街に飛び込んだのは、
生きるために稼ぐ事だったが、
実は鬼畜旦那から百万単位の借金を
背負わされていたからってのもある。

高校卒業と同時に嫁に行き、
ほとんど自営業の手伝いで
普通の社会に出たことがない萬里は
自分に何ができるのか?

どうすれば普通の会社で働くことができるのか?
こんな大金を、いつかきちんと返すことができるのか?
何も分からなかった。

怖くもあり、自信もなかった。

かといって、このまま夜の世界に骨を埋める気も覚悟もない。
だって絶対長生きできないと思うし。

どんだけ頑張っても
昼間働くのと変わらん給料、
それでも借金の返済はできてはいる、

思い切って、
真っ当にお日様の下で生きる生活にシフトチェンジしてみるのもいいかも。

この頃の萬里の目標の一つは
30歳までにもう一回結婚して、女の子を産む!です。

有言実行がモットーなので
常に口に出していました。

↓これも然り
マスターのように、人を利用して楽な暮らしするズルイ人間は
一度地獄を見たらいいのだ。

とかとか、いろんな考えがめぐり
いろんなタイミングというものが来た。

最後まで仕事に対しての手は抜かない。

一番気にかかるのはスタッフのこと。
私が先に辞めてしまったら皆この店で大変な思いを
するであろうことは目に見えている。

マスターに気付かれないように、
誰も犠牲にしないやり方を考えないといけない。

さすがにアンナの都合で
最後まで道連れにはできないから
徐々に皆を辞めさせ、次の働き先を決めといてもらおう。

私一人でも店を開けて
最後の最後大晦日まできっちり仕事したる!

普段はあまり時間をかけないミーティングですが
ちょこちょことオーナーには内緒で今後について話し合った。

アンナ「一人づつ違う理由で、日をずらして辞めてってくれる?
あんまりギリギリだとマスターも怪しむだろうから、
1ヶ月おきくらいにでも。どこか他のお店面接とか行ってもいいし、
必要なら私の知り合いのところも紹介できるから。」

まい「私たちが先に辞めたら、ママは一人でお店をするんですか?」

アンナ「うん、一人でもやれる範囲のお客さんしか呼ばないし。
大丈夫よ。とにかくね、まいとくみが残されてしまったら
絶対キツイ目にあうことになんの分かるから、これはお願いなんよ。」

くみ「まだ日は浅いですけど、ご縁があってここに来たんです。
私はママの最後の日までお付き合いさせて頂きます。」

まい「バイトの子達は、先に辞めてもらっていいです。
その分私たちが毎日ママと一緒に頑張ります!
私もお客さんはそんなに呼べないけど、大晦日までは、来たお客さんみんなに楽しんでもらえるようにもっと積極的にやります!」

アンナ「うわぁ・・・嬉しい。
けど、そうなると三人揃って同じ日に辞めることになる、
そしたら二人共マスターに理由しつこく聞かれたり
責められたりするかもしれんよ?
二人が嫌な思いする、そのストレスは避けたかったんよね・・・。」

くみ「私はなんと言われようと平気ですから、そこらへんは心配なさらなくてもいいですよ。」

まい「ママがいなくなって愛人姉が働くことになったりするなら
まず働けませんから。私もママの味方です。何言われても貫く覚悟あります。」

ホントにあんたら良い子だぁね。
嬉しいねぇ
荒んだ心が洗われたよぉ。

よし!こうなったらもう心置きなく
大晦日を目標にぶっちぎるぞ!

最悪なマスターの店でミレニアム目前の日々を
存分に楽しんでやろう。

まいとくみの言葉だけでも
今までの苦労が報われた気がして
とっても嬉しかった。

先のことはなんも考えてない。
だけど辞めるその日まで
全身全霊注ぐ決意はより一層強まった。

逆にワクワクして来たわw

やっぱり、行いは神様ちゃんと見てくれてんだよ。
私は間違ってなかった、
ここまでキツイ人生送って来たんだから
これからはきっと報われる日々が返って来るんだわ〜。と思った
・・・この時。

この時まではね・・・。

こんなお店でミレニアム目前
1999年最後のクリスマス。

お客様からは引退を労う花束や鉢植え、クリスマスプレゼントが続々と届く。
これもまた、今までやってきてよかったぁ
と感じる幸せなひととき。

クリスマスだからとか関係なく
いつも通りに客入りも上々、
今日もしこたま飲んだので、もちろん帰りはダイが運転手で送迎。

数々のいただき物は、一回じゃ持って帰れない量なので
今日はマスター関係の付き合いで買わされた
2つのホールケーキを息子と両親に持って帰る。

いつもデカ目のバッグのアンナは
ケーキを二つも抱えたら前が見えない!
バランスが取れない!
しかしダイは荷物は持ってくれない
気が利かん男だ。

外は寒くて震えるけどクリスマスの空気と
ケーキと楽しかった一日を思い返し
なんかほっこりした気分で店を出た。

駐車場まで、灯りの消えた道を、
ダイとりなとアンナの三人で。

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祈祷師/療術師:萬里
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