語り尽くされたジャニーズ問題について、ジャニーズ事務所が上場企業であったら...という観点で考えてみる
すでに語り尽くされた感のあるジャニーズ問題について、ジャニーズ事務所が上場企業であったら事態は変わっていただろうか。
上場企業の従業員であれば、コンプライアンスに関する社内研修の一環で公益通報者保護制度(内部通報制度)について学ぶ機会があるだろう。
この制度は、企業の従業員等が社内で不正行為や法律違反等を見聞きした場合、企業が設置した社内外の窓口に匿名で通報できるというものだ。
企業は経営陣から独立した窓口を設置する必要があるため、社内の窓口に加え、社外の弁護士事務所等に窓口を設置することが多い。(ちなみに、上場企業に限らず従業員数301人以上の企業は法律にもとづき体制整備が求められている。従業員数300人以下の企業については努力義務)
ジャニーズの性被害者がこの制度を用いて内部通報していた場合、結果はどうであれ、問題が早期に表面化していた可能性はある。なぜなら、企業は内部通報を受け付けた場合必要な調査を実施しなければならないとされており、体制整備に違反があった場合の罰則もあるからだ。
一部メディアは、「性被害問題を週刊誌のゴシップと捉えていたため、自社でこの問題を報じてこなかった」としていたが、内部通報制度のもとでジャニーズ事務所が行政処分を受けていたとしたらこのような言い訳はできない。
もちろん、制度があるからといって問題が解決するわけではない。法律では内部通報者に対して不利益をもたらしてはならないとされているが、それが保障されるわけではないし、問題がもみ消される可能性もある。また、性被害者の目的が補償(金銭の受領)のみであった場合、そもそもこの制度は使われず、暴露本の発刊や週刊誌へのタレコミに留まったかもしれない。しかし、このような制度があることを理解しておくことは大切だ。
この問題について気になったのは、ジャニーズ事務所とビジネス上関係のあった企業の関係者が「芸能界は特殊なところだから...」と語っていた点だ。たとえば、行政処分等を受けていないにせよ、取引先がブラック企業として有名な先であった場合、その企業と取引関係を続けるだろうか?関係者は見て見ぬふりをしていたのだから共犯者だと言われても仕方がない。
また、ジャニーズ事務所がメディアに圧力をかけていた云々というのはたいした問題ではない。圧力というよりも、メディアがジャニーズ事務所から取引をもちかけられて(他社のタレントを使うのであればジャニーズのタレントは一切使わせない等)、その条件を飲んだだけの話だ。
この問題の関係者は様々な欲望に負けてしまった。性欲、金銭欲、出世欲、そして承認欲求に。
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