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袞冕十二章のこと
03/17 22:15に『土右記』の記述も記載。
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03/17に放送の「光る君へ」で袞冕十二章が出てくるのでコメント。
前提
(スタッフさんごめんなさい。ダメ出しから)
一条天皇即位は幼年に即位しているので、「冕冠」は着用せずに「天冠」を着用したので、シーンで出てくるジャラジャラした玉暖簾のような飾りはないです。
どんな時に使う装束?
天皇の正装ともいえる「袞冕十二章(こんべんじゅうにしょう)」は現在、皇室の儀式では廃れて見ることはできない。
なんでか?
明治維新時に「唐風はだめだよね、国風にしないと」という浅はかな考えで辞められたため、孝明天皇が最後の着用者となりそれ以降は再興されていない。
さて、この装束は特殊すぎるので着用されるシーンがものすごく限られていた。
1つ目は「朝賀」
2つ目は「即位」
これだけ。
そして、「朝賀」儀は平安時代には「小朝拝(こちょうばい)」にとってかわられたため、「朝賀」自体を挙行することはなくなった。
廃れた時期はちょうど、「光る君へ」の時代の摂関期。
この儀式の概要は
1.ほぼ全員参加
2.朝堂院(大極殿)で挙行
のため、儀式の場所の再建と人数がネックになってやめてしまった。
まぁ、面倒くさいし、参加しても天皇は遠くだし。今の超有名アーティストのライブ会場みたいに大画面はないし、そもそも何を言っているのかわからん、といった具合で訳の分からん儀式に参加するのやめようかな、といった感じだと想像している。
ちなみに元日は「自宅で優雅にあけおめ」とはいかず、官人はめちゃくちゃ忙しい。儀式が立て続けに入っているので、本当に忙しい。ということが各儀式書に書かれている。
次に「即位」(03/17の「光る君へ」の一条天皇即位のシーン)。
これも代替わりで行われるので、年中行事ではない。
だけど、どうにかこうにか明治時代が始まるまで、各官人や有職故実かががんばって繋いできたのに明治政府の奴らが途絶えさせやがった。本当に憎らしいもんだ。さらに、国風という言葉に踊らされて今までの袞冕十二章を否定した公家や神祇官もだめだ。もっと伝統を考えろよ。と言いたい。
不満はさておき、南北朝から戦国期には一度途絶えたが、江戸に再興された。
幼帝(今回の場合は一条天皇)の即位時
最初にも書いたけど、玉暖簾のようなジャラジャラはない。
着ているもの(これを「袞衣(こんい)」と呼ぶ)は大人のサイズでは着用できないので子供の体格に合わせているが、同じ色、刺繍。
だけど「冕冠」は「天冠」に変更される。
べつに想像で話しているのではなく、この時代より前の儀式書(源高明『西宮記』)にはっきりそう書いてあり、前例踏襲が基準の第一だった平安時代なのでそれに代わりものすごい理由(めちゃくちゃ体格が大き、6歳だけど実は16歳とか超サバ読んでるなど)がない限り、「天冠」着用だったと考える。
このあと、2代後に後一条天皇というこれまた幼少の天皇が即位するのだがその時、私たちの実資がかの日記『小右記』に「童帝御装束」とはっきり書いてありその分の前後にイレギュラーな文書が記録されていないことから、2代前の一条天皇時は通常通り=有職故実通り実施された、と推測も可能。
あの人がイレギュラーな事柄を書かないのはないし、あっても自分の失敗や都合の悪い時ぐらいなので、「童帝御装束」以外を着用したことはなかったとは言えないし、想像もできない。
天冠ってなんなのさ?
天冠の状態について記録しているのは源 師房の『土右記』と中山 忠親の『山槐記』。
冕冠についている平たい部分(折敷のようなものとジャラジャラ玉暖簾)を除いて前方に鳳が羽を開いた状態で立てた冠、とある。
なお、現代の神職や雅楽舞楽を奏するときの天冠とは異なるので注意。
その他
装束故実書の『助無智秘抄(じょむちひしょう)』には「光る君へ」に出ている藤原行成さんが寛弘のときの即位式(三条天皇即位)に着用した家臣用の唐風の冠(礼冠)にメモがあったよ、という記録がある。
天皇の即位時に何かしらの役職をもらった人が記録されている『天祚礼祀職掌録』だと行成さんは外弁という役割をもらっている。
内弁はメイン式場で行う儀式の進行役、外弁はメイン外の式場で行う進行役。
結婚式でいうなら、結婚式自体を進行する司会者が内弁。披露宴や二次会の進行をするのが外弁。
まとめ
幼帝は冕冠を着用しない。
天冠には玉暖簾はない。
(不満)明治政府はちょっと考えとけ。
参考資料
自分の小論文
『西宮記』
『権記』
『土右記』
『山槐記』
『助無智秘抄』
『天皇皇族実録』(『天祚礼祀職掌録』を引用)
ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター
『装束図式』