今月のお気に入り(2022年10月)
今月はいいの多くて絞るの難しいんですが、ごく最近の気分だとこんな感じかな。
・Saint Abdullah & Eomac『Patience Of A Traitor』
1曲目のひび割れ上等なオープニングがとにかく思い切ってるな~という感じで素晴らしい。それに尽きる。
・Deathprod『Sow Your Gold In The White Foliated Earth』
Harry Partch Instrumentsのための作曲作品集とのことで微分音程の揺らぎが左右から波のように寄せては返す。こういう微細な音程をそれとわかるかたちで聴かせるのに撥弦楽器のようなアタックがしっかり出るサウンドは相性がいいように感じるんだけど、それは耳のどういう働きによるのだろう。人間は音の性質を主にそのアタックで識別しているというのは通説だけど、音程に関してもアタック部分に対してはその聴取能力が敏感になってるのか?
・Picnic『Creaky Little Branch』
Romeo Poirierの新作『Living Room』と(音楽性というよりは聴きたくなるシチュエーションやその機能において)近しい作品という印象で、どちらかというと今のところこちらをより多く聴いた。この人は昨年のアルバム『Picnic』でダブ×アンビエントの新鋭として登場した感があったけど、今作はその延長線上にありながらアコースティックな要素をより素直に用いているからかそれともエフェクトのくすみ具合の成せるものか、サウンドの印象が2010年代初頭辺りの12k作品にかなり近いように感じられる。ullaの新作『form』がゼロ年代初め辺りのエレクトロニカを思わせるサウンドになっていたり、ダブ×アンビエントがいろんな文脈にまるで浸透していくように接続してるのは興味深い。
・Blightcaster『Blightcaster』
それぞれロンドンとメルボルンを拠点とする匿名のデュオユニットが、パンデミックによる分断によりリモートによる制作を強いられながらも完成させた一作。ブラックメタル、グラインドコア、そしてガバやトランス(?)、ノイズ、エレクトロニックが密室的ローファイの地平で混交されたような作風でめっちゃかっけー。3曲目とかKENTARO HAYASHIのクラブ・ミュージック的要素をローファイ・ノイズの中に埋没させたみたいなサウンドにも聴こえる。意外に(?)といったらあれだけど構成がすごく巧みなで、ノイズで攻める力業な場面と電子音やビートの波で乗せる場面の配分がとてもいい塩梅。聴いてて飽きない。今年のDanse Noireやけに肌に合う。
・Louis Cole『Quarlity Over Opinion』
待ってました!最高!!!
・Klein『Cave in the Wind』
悪夢的コラージュ・アンビエントといったらいいのか…しかしながらその決して流麗さを優先してはいない音の流れの中から、漏れ出るようなロマンチックさを今の自分は捉えてしまう。あくまで自分の狭い観測範囲での話になってしまうけど「スクリュード」なサウンドで描ける光景というものをここ1~2年では秀でて濃密に感じさせてくれる一作でもあった。アンビエントを終着点というより導線として、聴き手をそれ以降のどこかへ誘おうとする、とても現代的な「アンビエントの向こう側」の何か。
ブログのほうでは枚数絞らずに載せてます。