与論に住まう陸の動物③爬虫類や昆虫類
①与論町誌のページ数
44(上段)~49(上段)ページ
②要約
●与論に生息するトカゲは、キノボリトカゲ・アオナカヘビ・ミナミヤモリ・オオグロヤモリ・オキナワヤモリ・オオシマトカゲ・ヘリグロヒメトカゲがいるんだよ。(家でよく見かけるヤモリは、オ(ホ)オグロヤモリ。方言名、ヤドマブヤー・ヤドゥマーブイ。「家守りという意味が込められている」)
●与論に毒蛇はいないよ。
●アカマタは方言でマッタブという。毒はないが、凶暴!!
●与論で見かけるアオダイショウは、正式にはリュウキュウアオヘビという名前。
●カエルは4種。茶色もいるし、緑色もいるんだよ。〈方言名、カエルはアタビク・アマガエルはアマガーク〉
●ヤモリはいるけど、イモリはいないよ。
●蝶々は、43種いる〈土着種、迷い種など含め〉。
●昆虫は蝶々以外に、トンボやセミが生息している。
●与論にはヤシガニがいるんだよ。夜行性で、アダンやヤシの実を食べる。
③感想(私的解釈や学び)
普段出会うトカゲやカエルの習性を改めて図鑑などで見ると新たな発見がたくさんありますね。関連記事に、ネット上の図鑑やまとめを貼り付けておりますので、ご興味ある方はぜひご覧ください。
昆虫に関しては、特記事項として書いてあったので、与論でよく見かけるゴキさんやヤスデ・ムカデ、タイワンカブトムシなどは記されていませんでした。これもまた、完全網羅したまとめを作る面白さがありそうです。(ゴキさんまとめは見たくないか。)
④本文引用
〈但し、カタカナ羅列の為、改行・記号等の編集有り。〉
三 は虫類
奄美群島には陸生の亀は生息していない。ヘビ類とトカゲ類に大別され、トカゲ類はキノボリトカゲ科・トカゲ科・ヤモリ科の三科が分布する。
(一)キノボリトカゲ (キノボリトカゲ科)
奄美・沖縄の島では、平地・森林などの樹上でよく見かけられるひょうきんなトカゲである(奄美ではテンマブリャーと呼ぶ)。昭和三十年八月、東区で竹吉廣一氏(現在愛知県高校教師)が捕獲し、いまは熊本大学教育学部で保管されている。唯一の標本で、現在の生息については全く明らかでない。絶滅が心配される。
(二)アオカナヘビ (カナヘビ科)
(方言名・ドゥナガーギニャギニャ、ドウナンガーギニャギニャ)
琉球列島の島々に広く分布していて、体長一八センチメートル内外で、北はトカラ列島小宝島まで南は西表島まで分布しているが中部琉球が中心である。胴体の約二倍半ぐらいの尾部をもっているのが特徴である。
(三)ヤモリ類 (ヤモリ科) (方言・ヤドマブヤー)
次の三種が分布する。
●ミナミヤモリ ー
本島では一般に樹上や耕作地の周辺部に見られる。本種は九州以北との共通種であり、他の二種との力関係で住み分けているのではないかと思われる。
●オオグロヤモリとオキナワヤモリ ー
ともに住家性で、夜間になると澄みきった声を発する種類でナキヤモリ属の中に包括されている種類である。オオグロヤモリは徳之島以南の琉球と台湾・中国南部などに分布し、 オキナワヤモリは沖縄本島以南・与那国島までと分布範囲が示されているが、与論島にも分布する。
(四)トカゲ類 (トカゲ科) (方言名・ギニャギニャ)
●オオシマトカゲ ー
与論産はオキナワトカゲとする学者もいるが、奄美群島中のものはオオシマトカゲに含めておくことにする。 幼体は背面の黄白色縦条が尾の基部三
分の一ぐらいまで見える。成体にはなくなる。
●ヘリグロヒメトカゲ ー
暗褐色の背面に多数の黒い斑点のあるトカゲで、前種より体は小さく、森林の落ち葉の下などに住み、潜るのが巧みで、時々現れては森林にひそむ。トカラから沖縄群島まで分布する。
(五)ヘビ類 (総称・マッタブ)
与論島には陸生の毒蛇は分布していない。ナミヘビ科とメクラヘビ科が生息している。
1 ナミヘビ科
●アカマタ ー
紅褐色の地に黒色の横帯がある大型の種で奄美・沖縄群島のほとんどの島に住む。水湿地を好み、ネズミ類・ヘビ類・魚類・昆虫などを捕食する。奄美大島では毒蛇ハブをものむ、ハブの天敵である。 与論の現在の環境では個体数は非常に少ない。
●カラスヒバァー ー
琉球列島の中部に住む。中型のヘビで水田や山麓などにカエルを求めて現れる。カエルの奇声は、本種によって捕食され体の腰部をくわえられた時に発する悲鳴である。
●リュウキュウアオヘビ(オーヌジ)
トカラ列島の小宝島・宝島以南の奄美、沖縄群島まで分布する。 アオダイショウと誤称している人もいるが、トカラ以南にはアオダイショウは生息していない。ミミズや昆虫類を好食する。性質はおとなしく昼行性で平地から山地まで分布している。
2 メクラヘビ科
ミミズくらいの蛇で、小笠原・鹿児島・トカラ列島以南の琉球世界中の熱帯地方に分布する。シロアリや体の軟弱な昆虫類を捕食する。 土中生活が主で、夏の夜などには地表をはいまわっていることもある。畑地の耕作時によく出合う。目はほとんど退化している。
四 両生類
有尾類のイモリの仲間は分布せず、無尾類・カエル類は四科四種が分布している。(カエル=アタビク、アマガエル=オーアタビクまたはアマガーク)
(一)ハローウェルアマガエル (アマガエル科)
沖永良部島を除く奄美群島と沖縄島まで分布する。与論では日中バナナの筒状の若芽のところに潜んでいるのが見られる。雨の前や夜間、特に夏の夜などに鳴きたてる。島の全域に住む。全身緑色。(オーは緑や青の意)
(二)ヌマガエル (アカガエル科)
九州以北の日本本土との共通種は本種だけである。 琉球列島以南・台湾・東南アジア・インドなどにも分布する。水田や池・沼などから山麓にも見られる。
(三)ニホンカジカガエル (アオガエル科)
リュウキュウカジカガエルとも呼ぶ。 トカラ列島の口之島以南から台湾まで分布する。与論島でも最も個体数の多い種である。比較的乾燥に強く、その上、強力な後脚のはねで山中をかけめぐり、山地・平地の畑地など活動範囲が最も広い種類である。
(四)ヒメアマガエル (ジムグリガエル科)
奄美群島以南の琉球・台湾・中国南部・東南アジアにかけて広く分布する。体長三センチ以下の日本最小のカエルである。体の割には大きな鳴き声を発し、石の下などにひそみ、雨の後の水たまりなどに夜間に集まり、コーラスをはじめる。コオロギの鳴き声に似ている。
五 淡水魚
河川が発達していないので魚はほとんど見ないが、茶花のため池でドジョウが生息しているのを確認した。
六 無脊椎動物
無脊椎動物では昆虫類・甲かく類などの特筆すべきものと、記録の必要な種など、とくに環境の変化にともなう生物の動向として記し、後日の参考に供したい。
(一)チョウ類 (パピル)
チョウ類 (パピル)は、現在までの記録では土着種三十四種、年によって土着種になったりするもの三種、迷チョウ六種 計四十三種にのぼる。研究者や同好者にとっては貴重な環境である。
●土着種は次のとおりである。
オキナワビロードセセリ・チャバネセセリ・イチモンヂセセリ・ヒメイチモンジセセリ・クロセセリ・オオシロモンセセリ・ジャコウアゲハ・アオスジアゲハナミアゲハ・シロオビアゲハ・ナガサキアゲハ・モンキアゲハ・キチョウ・モンキチョウ・ツマベニチョウ・モンシロチョウ・ウラナミシジミ・オジロシジミ・アマミウラナミシジミ・ヤマトシジミ・シルビアシジミ・タイワンクロボシシジミ・アサギマダラ・カバマダラ・オオゴマダラ・ツマグロヒョウモン・リュウキュウミスジ・ルリタテハ・ヒメアカタテハ・アカタテハ・タテハモドキ・イシガケチョウ・リュウキュウヒメジャノメ・ウスイロコノマ。以上のうち、シロチョウ科の最大種とマダラチョウ科の最大の種を表示してある。
●年によって土着種になるものーその原因は明らかでない。
ウラナミシロチョウ・リュウキュウアサギマダラ・アオタテハモドキなど。●迷チョウー
ウスキシロチョウ・カワカミシロチョウ・ムラサキツバメ スジグロカバマ
ダラ・メスアカムラサキ・リュウキュウムラサキなど。
(二)トンボ類 (ベール)
次の三科・十六種の記録がある。
1 イトトンボ科 ―
コフキイトトンボ・リュウキュウ牛ベニイトトンボ・アジアイトトンボ・アオモンイトトンボ・ムスジイトトンボ(方言・ウマンコー、ウマンコーベール)
2 サナエトンボ科 ―
タイワンウチワヤンマ・トビイロヤンマ・ギンヤンマ・リュウキュウギンヤンマ・リュウキュウトリヤンマ
3 トンボ科 ―
ハラボソトンボ・シオカラトンボ・ヒメトンボ・ショウジョウトンボ・ウスバキトンボ・ハネビロトンボ・アメイロトンボなど。
(三)セミ類
セミ類で最も優勢を誇るのはクマゼミである。全島をゆるがすこの種の発声は与論島の特徴の一つであろう。幼時よりこのセミとのつき合いは長く、思い出深い種である。他に二種、クロイワニイニイと秋に発生する大型
のリュウキュウアブラゼミがいる。
その他の昆虫でも、スズムシ・タイワンクツワムシ・タイワンエンマコオロギなど、秋の夜ながを美しい音色と神秘的なメロディーで島を包容している演奏者たちが生息している。
(四)特筆すべき甲かく類
1 ヤシガニ (アンマフ) オカヤドカリ科
昭和四十二年にはじめて与論島を新しい分布地として紹介したのは筆者である。現在は小宝島・沖永良部島にも生息が確認されている。オカヤドカリの仲間であるが、頭胸部と腹部の石灰化が進み、特別に保護の必要がなくなったヤドカリということになる。胸部が幅広く、空気呼吸のできる鰓を持っている。雌の腹部には腹肢があり卵をかかえている。産卵は海水中で行われ、幼生期を海で過ごし、成体になってから上陸し、石灰岩地帯の洞穴中に侵入し、昼間は洞穴の底部の泥土のある湿地に住み、夜間に穴を出て採食する。アダンの実やヤシの実なども食するといわれる。植物質なら広い範囲の食性を示す。
琉球の中部以南・台湾や、カロリン諸島 マーシャル群島などの熱帯の島々に広く分布する種類である。
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出典:「第一編,第一章 自然環境,第三節 陸の動物,三 鳥類・四 両生類・五 淡水魚・六 無脊椎動物」.『与論町誌』.与論町誌編集委員会.与論町教育員会,1988,p.44-49
⑤関連記事・資料
出典:Web両爬図鑑,京都大学「京都爬虫両生類の会」
https://ikilog.biodic.go.jp/rdbdata/files/explanatory_pdf/21amphibian_reptile.pdf
出典:『改訂レッドリスト 付属説明資料 爬虫類・両生類』,環境省自然環境局野生生物課
出典:「与論島の蝶たち」,blog徒然なるままに,さっちゃんさん
出典:ヨロン島の蝶,上野さん
出典:やんばるの生き物図鑑,株式会社ズカンドットコム
出典:「一般社団法人 結いの島」(シマ興士隊)
出典:与論島クオリア,喜山荘一さん
出典:さすらいの風来簿,原田誠一郎さん
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