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ハイビスカスだけじゃない!与論の植物

①与論町誌のページ数

15(下段)~21ページ

②要約

●与論の植物は約410種類あるんだよ。〈固有種・外来種含めて〉
●与論は標高が低く高い山や河川が無いため、島の陸域がほとんど農耕地として利用されているんだよ。
●⇑そのため、島の植生は二次林(人の手が入った後に、再生したりしてできた、元の植生でない森林)が多い。
●原生林に近い環境が保存されているのは、ほぼ城跡崖下(立長側)のみ。
●海岸沿いには、モクマオウやアダンが砂防林として植わっている。アダンは護岸工事によって伐採されたところが多い。

岩に根を張るガジュマル

③感想(私的解釈や学び)

「自然豊かな島」と勝手に思ってましたが、やはり沖縄本島や沖永良部と比べると植物の種類も量も少ないんだなと再認識しました。
護岸工事や耕造改善で原生林が失われている事実と向き合いながら、与論島が生まれた時から変わっていないであろう場所の保護をしっかり意識しないといけないなと感じました。
今回のページは、植物名のカタカナが多くて混乱しました(^^;
植物図鑑と島の地図(群生場所)と一緒に説明する必要がありますね。そんな地図を作る自由研究、楽しそう!!
娘が小学生高学年になったら、頼み込んで一緒にやってもらおうかな~。

プーゲンビリア。ハイビスカスと与論を彩る花の2大巨頭。

④本文引用

第二節 陸の植物

 与論島の植物については、『琉球植物目録』、『琉球植物誌』、その他多くの調査報告書の中で、分布している種類や植生の概況が報告されている。
 鹿児島大学名誉教授の初島住彦先生は琉球列島から四隣にわたって分布する植物について検討して、『琉球植物誌』の中で琉球列島(奄美大島以南)の固有種一〇一種(『琉球の自然史』では一〇三種としている)、琉球と日本
(トカラ列島の宝島以北)に共通する固有種一四二種、琉球から台湾にわたって分布するものと琉球・台湾・南中国にまたがって分布するものの合計一三四種をあげ、琉球列島における植物分布の特徴を浮きぼりにしている。
 与論島は、沖永良部島や沖縄本島に比べて、高い山や河川がなく、島の最高地点近くまで農耕地となり、残された地域も二次林となっているため植物の種類は比較的少ない。シダ植物・種子植物で自生しているものと帰化植物および栽培植物が野生化したものとを合わせて、約四一〇種ほどである。
 ここでは植生(生育のようす)の概況と古くから島の生活に関係の深かったものについて述べることにした。
一 植生概況
(一) 琉球石灰岩の地域 (特に露岩の多い場所)
 琉球石灰岩の断崖になっているところ(島の断層線に沿う地域でパンタと言われているところが多い)には、葉が厚く貯水性のあるサクララン・サタソウやホウビカンジュ・オオイタビなどが見られ、岩の裂け目にはクロイゲ・ハリツルマサキ・リュウキュウテイカカズラなどが根を張りほふくしている。岩の間で土壌の残っている場所にはフクマンギ・シャリンバイ・ハマイヌビワ・ガジュマル・トベラ・タマシダなども生育し、 ツゲモドキ・コウシュウウヤク・クロツグの出現するところもある。断崖の頂から背後の原野に移行するあたりは風衝地のため高さ二メートル以下の低木林になっているところ
が多い。そこにはゲッキツ・クロイゲ・バンジロウ・ハマビワ・オオシマコバンノキ・サルカケミカン・ソテツ・アダンなど多くの樹種が密生している。


 琴平神社南西部のメーグチバンタ中腹部(ジシの周辺)にはハマイヌビワ・ガジュマルの茂った場所がありその下にはゲッキツ・サルカケミカン・アコウ・ソテツ・モクビャッコウ・ハリツルマサキや与論島を北限とするト
ゲカズラ・シマヤマヒハツなどが生育し、リュウキュウベンケイソウもここから記録されている。
 茶花東部(シンダフ山やハジピキバンタの北部)の琉球石灰岩の露出が多いところではクスノハカエデの群落が見られる。クスノハカエデはカエデ科に属するが葉が切れ込まず常緑である。沖永良部 与論 沖縄に分布す琉球弧固有の樹木で基本種はヒマラヤ、中国西南部、台湾に分布する。与論高校南側のシンダフ山の群落では直径一五一六センチメートル、高さ五八メートルのものが多く、大きいもので胸高直径三〇センチメートル程度である。高木層にはクスノハカエデの間にヤブニッケイ・ハマイヌビワ・センダンが混生しているが個体数は少ない。亜高木層・低木層にはゲッキツ・モクタチバナ・ソテツナガミボチョウジ・ツゲモドキなどが生育するが植被率は低く林内は明るい。林床にはグミモドキやモクタチバナ・ヤブニッケイ・ゲッキツの稚樹が多く、サタソウ・タマシダ・サクララン・リュウキュウテイカカズラ・ミツバビンボウカズラなどが生育する。
 原野、畑の周囲、人家の周囲で露岩の多い場所は、気根のよく伸びたガジュマル・ハマイヌビワ・ヤブニッケイの高木に覆われていることが多い。こういう場所では露岩の多いこともあって下層木はまばらである。出現する樹種はゲッキツ・ヤブニッケイ・モクタチバナ・ナガミボチョウジが多いがソテツの倒木もよく出現する。風化の進んだ露岩にはリュウキュウイノモトソウ・タマシダなどが着生し、浅い土壌にはホシダ・クワズイモ・ゲットウ・高木層や亜高木層の稚樹が生育する。
(二) 原 野
 立長、東区の赤色土壌のある一部分を除いて原野の大部分は琉球石灰岩の露出がいくらか見られ、出現する植物の種類も露岩の多い地域のものと大差はない。
 ピャーヌパンタ北東部の三角点(標高九七・一メートル)付近には、一九七九年頃まではリュウキュウチクの群落があったが、現在はその場所にMBC南日本放送)の中継塔が立ち、まわりはサトウキビの耕作地になっている。リュウキュウチクは中継塔西側にかつての痕跡程度にしか残されていない。
 東区のウーニヌムイ(標高六〇・〇メートルの丘)はかつてはチガヤ・テリハノイバラ・メドハギなどの生えた見晴らしの良い草地であったのが、現在は上の方までサトウキビ畑になり頂上はわずかのリュウキュウチクとトキワススキ・チガヤに覆われ、頂上に近い斜面にはモクマオウ・ソテツ・アダンが茂っている。
 農耕地周辺の低地林に生育するほとんどの植物は屋根を葺く材料・薪・牛の飼料として利用されていたため、人手の加わっていない場所はなく低地林はすべて二次林であると言ってよい。低地林の高木層としてはガジュマル・ハマイヌビワ・ヤブニッケイ・アコウが多く、亜高木層にはモクタチバナ・ゲッキツ・ハマビワ・ネズミモチ・トベラ・サンゴジュ・ハマビワなどが多い。低木層や草本層には高木層や亜高木層の稚樹のほかにナガミボチョウ・フクマンギ・グミモドキ・ゲットウ・クワズイモ・ホシダがよく出現する。またオオイタビ・リュウキュウテイカカズラ・シラタマカズラ・リュウキュウボタンズルなどのつる性植物も多い。


 ピャーヌパンタ北側の斜面と立長には部分的にリュウキュウマツの林が残っている。ピャーヌパンタ北側の林部ではソウシジュ・ハゼノキ・ヤブニッケイ・ハマイヌビワの高木が混生し、その下層にはリュウキュウチク・イヌビワ・シャリンバイ・フクマンギ・ゲットウ・ソテツ・トキワススキなどが生育している。
 社寺林・御願林はわずかの面積を残してまわりは伐採されている。朝戸の高千穂神社境内にはアカギ数本(大きいものは胸高直径一メートル、高さ約六メートル)とリュウキュウマツの高木があり、まわりはフクギ・アコウ・ガジュマル・ハマビワ・ソテツなどの生える林になっている。また朝戸の磯振墓イシュブリバカの周囲はガジュマルの大木に覆われ、ガジュマルの下にはヤブニッケイ・ハマイヌビワチシャノキ・ビロウ・マサキ・リュウキュウガキなどの亜高木が生育し、林床にはゲットウ・クワズイモのほかにビロウ・ハマビワ・シャリンバイ・モクタチバナ・アカテツ・リュウキュウコクタンなど多種類の稚樹が出現する。与論島の聖域でその環境がよく保存さ
れているのはメーグチバンタ中腹のジシ周辺だけである。
 島に点在する鍾乳洞の入口はさほど大きくなく、植生の特徴も沖永良部島のものほど顕著でない。賀補呂ガブロウのシルカアブ入口が島では最も大きく、この周囲はハマイヌビワ・ヤブニッケイの高木、モクタチバナ・サンゴジュ・ハマビワ・マサキ・ナガミボチョウジなどの低木が生育する林になっている。垂直になっている入口の上は多くの気根を伸ばしたハマイヌビワとオオクサボクに覆われ、入口のくぼ地になっているところにはクワズイモとイシカグマが生育している。
 表層土が浅く潮風の強い風街地にはソテツの群落が見られることが多い。かつては種子採取のため群落内に侵入する樹木を伐採し保護していたが現在はほとんどが放置された状態になっている。兼母の尾道山、前浜の北西部(写真参照)には典型的な群落が残されている。 ソテツの群落内にはシマグワ・ハマヒサカキ・バンジロウがよく出現し、アダンやサルカケミカンがソテツを覆うこともある。林床にはシラタマカズラ・オオイタビ・ホシダ・リュウキュウイノモトソウなどが生育するが種類や個体数が少なく単調である。
(三) 海 岸
 直接海水のしぶきを浴びる最先端の岩礁にはイソフサギが生育し、その背後の岩場にはイソマツ・ウコンイソマツ(沖永良部が北限)・コウライシバ・タイトゴメ・ナハエボシグサ・ホソバワダン・ミルスベリヒユなどが生え、さらに内側にはテンノウメ・モクビャッコウ・アマミヒトツバハギ・クサスギカズラ・イワダイゲキなどが生育する。これらに続いて岩礁が砂質の土壌に覆われている場所にはボタンボウフウ・グンバイヒルガオその他砂浜に生ずる種類を交えたコウライシバの群落を生じ、イボタクサギ・スナズルも生育する。原野がせまってきている場所にはクサトベラ・モンパノキ・キキョウラン・ハリツルマサキなどに続いてアダン・ソテツ・ハマヒサカキ・ハチジョウススキなどが生ずるようになる。
 砂浜の前線にはハマニガナ・ハマヒルガオが生え、その背後にはハマグルマ・グンバイヒルガオ・ハマボウフウ・ツキイゲを生じ、モクマオウ林やアダン林に近づくにつれてクロイワザサ・ハマボウフウ・シマアザミ・ハマゴウ・キダチハマグルマ・イボタクサギなどが出現するようになる。場所によってはクサトベラやモンパノキの群落、または両種の混交した群落をつくることもある。
 大金久・ハキビナ・供利・茶花など砂浜の発達した海岸にはモクマオウが植栽されている。モクマオウ林の中には他の高木は混入していないがトベラ・シマグワなどの低木が見られ、林床にはクロイワザサ・ハイシバ・ハ
マボッス・ハチジョウイノコズチが多くショウジョウソウ・トウワタなども生育している。内陸側林縁にはイボタクサギ・ハマゴウ・ギンネム・キダチハマグルマが多ナンテンカズラ・オオハマグルマおよび帰化植物のテンニンギクが見られ、個体数は少ないが場所によってはイソフジ・ハマセンナも生育している。
 以前は砂防林としてのモクマオウ林がないところはアダンの群落が砂防の役割をはたしていたが、現在は護岸工事の進んだせいもあって伐採されたところが多い。
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出典:「第一編,第一章 自然環境,第二節 陸の植物,一 植生概況」.『与論町誌』.与論町誌編集委員会.与論町教育員会,1988,p.15-21

⑤関連記事・資料

https://core.ac.uk/download/pdf/235935023.pdf

出典:「与論島の植物 」,木戸 伸栄 .鹿児島国際大学福祉社会学部論集第33巻第4号


https://www.toyotafound.or.jp/research/2016/data/D16-R-0256_Toyama_finalreport.pdf

出典:「シンポジウム 人と自然が織りなす世界──奄美沖縄の生物文化 資料」,生物文化遺産プロジェクトチーム.2018


出典:「樹木・tree図鑑」,科学技術研究所


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