花粉症・アトピーなどに効く、免疫力の高め方
■はじめに
・「分子整合栄養医学(オーソモレキュラー医学)」に基づいて、不足している栄養素を補って本来の機能を取り戻し、自然治癒力を引き出す方法を記載する。
・オーソモレキュラー療法は、花粉症だけでなく、あらゆるアレルギー疾患に効果を発揮し、糖尿病や脂質異常症の治療薬が不要になったり、うつ病の改善など様々な健康効果を発揮する
・オーソモレキュラーはカナダの精神科医で生化学者でもあるエイブラム・ホッファー博士が治療を確立し、ノーベル賞を2度受賞したライナス・ポーリング博士によって世に広められた。
■花粉症のメカニズムと従来の治療法について
・花粉症:本来無毒な花粉に体が有害だと誤認して、排除するために誤認するアレルギー反応
【アレルギー症状の流れ】
①免疫グロブリンの中の一つ、IgE抗体は何らかのアレルゲンと接すると発生
②IgE抗体が好塩基球や肥満細胞と結合し、ヒスタミンなどの物質を放出
③ヒスタミンが全身に運ばれ、受容体と結合して炎症を起こして、
鼻水や涙と共にアレルゲンを外に出そうとする
【従来の治療法】※いずれの治療法も対処療法のため、病気を根本的に治療しているわけではない。
①IgE抗体が好塩基球や肥満細胞と結合しないようにする抗ヒスタミン剤
②ヒスタミンが炎症を起こしたものを鎮めるステロイド剤
③レーザーによる手術療法:1~3年の効果、
粘膜をレーザーで焼くため癌化しやすくなる
④舌下減感作療法:2~3年続けると7~8割の人に有効だが、
他のアレルゲンに対しては効果なし。
日本だと保険適用はスギ花粉とダニのみ。
また、複数のアレルゲンを同時に対策することはできない。
■オーソモレキュラー療法の考え方
・その人の体に足りない栄養を見つけ、それを積極的に補うことで、
体が必要な物質をつくれる状態にしてあげる
⇒足りない栄養素を全て食べ物で補うのは難しいので、サプリメントも積極的に利用する
・細胞レベルの栄養不足が体に影響を及ぼす例
①ビタミンB1の欠乏⇒脚気
②ビタミンB3の欠乏⇒ペラグラ(進行すると、幻聴・幻覚症状。統合失調症の一因)
③ビタミンCの欠乏⇒壊血病
・「理想的な体」に必要な栄養は、「一般的な基準量」では全然足りない
例:ビタミンC
厚生労働省のビタミンC基準:50mg/day(壊血病を予防するレベル)
⇒日常のストレスでビタミンCが消費されることが分かり100mg/dayへ2000年に引き上げ
オーソモレキュラー療法では、
風邪の予防:500mg/day
肌の改善:2000mg/day
癌治療:血中のビタミンC濃度を一般的な人の350倍にする量(飲食では摂取不能なため、点滴による投与)
・オーソモレキュラーの要は「タンパク質」
⇒全身の細胞が理想的な速度で入れ替わることが重要なため、
体の主原料であるたんぱく質をしっかり摂取し、
ビタミンやミネラルの働きでタンパク質の代謝を良くすることが大事。
⇒花粉症も含め、体内トラブルでは炎症が起きて、タンパク質の必要量が増える
⇒免疫システムで重要な白血球や酸素を運ぶヘモグロビンもタンパク質が必要
・タンパク質の必要量について
⇒糖質や脂質が十分摂取できていないと、
カロリー源として消費されるため、タンパク質必要量が増える
⇒適度な運動をしているときにタンパク質消費量は最も少なくなる
(寝たきり老人がどんどん痩せて手足が衰える原因)
⇒タンパク質の吸収率を上げるグルタミンの配合されたアミノ酸のサプリメントを利用するのもあり
⇒花粉症などアレルギー疾患のある人は、常に新しく丈夫な粘膜細胞を
作る必要があり、タンパク質をきちんと取ることは不可欠
・タンパク質摂取の注意点
⇒タンパク質には肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などあるが、
同じものを連日食べると遅延型アレルギーを形成することがある。
⇒乳製品は乳タンパクが腸内環境を悪化させることがあり、
アレルギー体質の人には好ましくない
(腸に良い乳酸菌を取るなら漬物やサプリメントで補うのがおすすめ)
⇒体を構成しているのは動物性タンパク質であるため、
摂取するときも動物性タンパク質の方が効率は良い
⇒植物性タンパク質の中でも小麦に含まれるグルテンは
アレルゲンになりやすく、腸内環境を悪化させるので特に注意
・オーソモレキュラーによる花粉症改善の仕組
①体内の免疫細胞がアレルゲンにさらされると、
そのアレルゲンだけに結合されるIgE抗体がつくられる
②それに対し、全ての異物を体外へ排除するIgA抗体濃度を
高く保つことで、そもそも花粉を体内へ取り込まない
(IgA抗体は目・鼻など外界と接する粘膜で働く)
③IgA抗体は特に腸に多く存在するため、
ストレスや疲労で腸粘膜のIgA抗体が減少すると、
普段アレルギー反応がない食材でも、じん麻疹や下痢になる
④花粉症の人は腸に穴が開いていて、
口からの有害物質が体内に素通りしている状態
(リーキーガット症候群)
⇒腸の粘膜保護作用があるグルタミン、
腸の免疫細胞に作用するビタミンA
粘膜細胞の結合を強化するビタミンDなど、
腸のバリア機能を高める栄養素を摂取することが大切
■花粉症を治すための栄養素
①ビタミンD
⇒食材からの摂取以外に、皮膚に紫外線が当たると体内で合成される
⇒現代社会では日焼けを避けたり、室内で過ごすことが多く、ビタミンDが不足しやすい
⇒冬に風邪が多いのは日照時間が少なく、体内のビタミンD濃度が下がり、免疫機能が弱まるため
(ビタミンDを800IU/day摂取で風症状が1/3、2000IU/dayで風邪やインフルエンザにかかる人が完全にいなくなった研究報告あり)
・ビタミンDの摂取について
⇒どんなに頑張っても食事から花粉症を治すレベルの必要量をまかなうのは厳しい
⇒サプリメントで補うのが必須、安全で効果をきちんと得られるのは2000IU/day程度
(代替医療の権威的な存在ACOMの推奨値最低レベル)
・サプリメントの注意点
⇒天然に近いものを選ぶ(含有量の単位がIUであればそう考えて良い)
⇒外国産は羊毛を使用していることが多いため、出来れば日本人に合った魚由来のものが良い
②ビタミンA
⇒天然のビタミンDを含む食材の多くはビタミンAも多く含んでいる
⇒ビタミンAはビタミンDの受容体に結合し、お互いの効果を高め合うことが分かってきた
⇒羊毛由来のビタミンDにはビタミンAが含まれておらず、
魚由来には含まれているので好ましい
③脂質
⇒脂質は細胞膜の原料、脂肪酸として細胞の形や柔軟性を決める重要な役割を持つ
⇒体に必要な栄養素を吸収するためにはエネルギーが必要、少量で多くのエネルギーがある脂質は重要
・脂肪酸は大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の二つがある
❶飽和脂肪酸:動物性の脂肪で常温では固まった状態
⇒コレステロールを上げるなど、体に良くないと言われているが、そのようなことはないため、タンパク質豊富な肉をしっかりと食べることが大事
❷不飽和脂肪酸:液体状の脂で、「オメガ3」「オメガ6」「オメガ9」の三つがある
⇒体内で生成できないオメガ3系とオメガ6系が大事だが、多くの日本人はオメガ6系は足りている。
オメガ3系が豊富な青魚の脂、しそ油、亜麻仁油、エゴマ油、クルミなどを摂取し、
オメガ6系とのバランスを良くすることで、細胞の機能を上げることができる
(しそ油、亜麻仁油、エゴマ油は酸化・熱に弱いため、サラダにかけるなど常温で使用する)
・脂質の注意点
⇒マーガリンやショートニングはトランス脂肪酸という体に有害な脂肪酸が含まれている
⇒人工的に作られた脂で、もともと自然界にないため体内システムで解毒できないので取らない方が良い
④鉄
※特に女性は生理によって鉄不足が起こりやすい
⇒鉄は、腸や鼻、目などの粘膜細胞に多く含まれた粘膜を丈夫にする
⇒カタラーゼという酵素を活性化させ活性酸素を消去する効果もあるため、
鉄不足になると様々な免疫システムがダウンする
⇒鉄はエネルギーの生成にも関わっているので、
鉄不足はエネルギー不足となり、タンパク質の代謝低下、細胞の機能低下にもつながる
⇒エネルギー不足は体温の低下も招き、血流の悪化による免疫力が低下する
・血液検査で「異常なし」とされていても注意が必要
⇒通常はヘモグロビンで貧血の診断をするが、重要なのはフェリチンの数値
⇒フェリチンは肝臓や膵臓に貯蓄された「貯蓄鉄」
⇒フェリチンはヘモグロビンを優先するため、
ヘモグロビンは問題なしでも、粘膜などの組織が鉄不足ということが起こりえる
・鉄には動物性のヘム鉄と植物性の非ヘム鉄がある
⇒ヘム鉄の方が吸収率がはるかに高いため、肉や魚介類など動物性食材の方が効率が高い
⇒サプリメントでも動物由来のヘム鉄を選ぶ。過剰に摂取しても余分になれば排出されるため問題なし。
ただし、吸収が良いことをアピールしているサプリは過剰症になることがあるので注意
(男性が必要な鉄量は1mg/dayに対し、女性は2mg/day必要)
⑤亜鉛
※特に男性は精子の生成に亜鉛を使用するため亜鉛不足になりやすい
⇒亜鉛には免疫を直接高める作用(白血球を増殖する作用)と
粘膜の働きを高めて間接的に免疫を助ける作用(ビタミンAの利用効率を高める)がある
⇒体内の炎症を抑制する働きもあり、アレルギー症状の抑制に効果あり
⇒体内の抗酸化物質の材料にもなるため、細胞の老化を防ぎ全身の細胞が活性化する
■オーソモレキュラーの効果を邪魔する栄養素:糖質
・諸悪の根源は糖質
⇒糖質を含む食べ物が胃や小腸で消化しきれないまま大腸に運ばれると、
悪玉菌の餌となり腸内環境を悪化させる
(糖質制限で腸内環境が整い、花粉症などアレルギー疾患が改善するのはこのため)
・精製された砂糖や白米、小麦などは、吸収率の良い糖質のため、血糖値が急上昇しやすい
⇒血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンを出して血糖値を抑える
⇒血糖値を抑えすぎて低くなると血糖値を上げるホルモンが分泌される
⇒このような血糖値の乱高下を繰り返すとホルモンを大量に分泌することになる。
⇒血糖値を上げるホルモンには強いストレスがかかるときに必要とされるホルモンもあり、
交感神経を刺激するため、自律神経のバランスが乱れる
⇒自律神経は免疫システムの中枢である脳の視床下部でコントロールされているため、
自律神経が乱れると免疫システムも低下することになる。
・糖質は老化の原因物質AGEを作り出す
⇒体内のタンパク質の中で、特にAGEの害を受けやすいのがコラーゲン
コラーゲンは肌だけでなく、骨や腸管も豊富に含んでいるため、
骨折しやすくなったり、傷ついた腸の粘膜の修復が遅れる
・舌には甘み・塩味・酸味・苦味・旨みを感じる受容体があるが、
甘みの刺激を受けると抗菌タンパクが出なくなるため、
口から花粉などのアレルゲンが侵入しやすくなる
⇒苦味の刺激を受けると抗菌ペプチドが出てくるため、日本茶を飲む習慣をつけるとよい
・糖が不足しても「ケトン体」で脳が元気に活動できる
⇒糖が不足すると肝臓で「ケトン体」がつくられ、脳のエネルギー源となる
⇒ケトン体を作るには、ココナッツオイルなどに多く含まれる中鎖脂肪酸が有効