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デザインは魅力ではないのかもしれない、という話

業務でデザイン改善とプロダクトの満足度を紐付けて考えてみようと思い、狩野モデルを改めて調べ直してみると、私の理解に大きな間違いがありました。それは

デザインは魅力品質じゃない(かもしれない)

ということ。
私同様に勘違いされている方が多い気がするので、その内容をメモとして残します。

狩野モデルとは

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有名な品質評価モデルで「デザインや機能といった様々な要素の充足・不充足が、顧客の満足度にどのように影響を与えるか」を表したものです。

このモデルのユニークな点は、ある要素の充足度が変化した際に満足度がどのように動くかは、属する評価分類による、としたところです。
例えば、その要素の評価分類が「魅力品質」であれば、充足していなくても不満は出ないが充足させていくと高い満足度を得ることができる。
当たり前品質」であれば、充足していない段階の不満は大きいにも関わらず充足させても大きな満足度を提供することができない、といったものです(上図参照)。

デザインが魅力品質とは限らない

以前の私は上記のような説明を見て「デザインは魅力に関係するっぽいから魅力品質なんだろうなぁ」なんて考えたりしていました。そしてなんとなく、そういう人が多いのではとも思います(違ったらすいません)。

しかし、今回改めて狩野先生の論文を読んでいくと、どうもそんな単純な話ではないということが分かりました。

そもそも論文の中では
「デザインとは魅力品質である」
なんてことは一言も書いてありません

デザインが魅力品質に振り分けられやすい性質を持っていることはありますし、論文の事例でもデザインは結果として魅力品質となっていますが、それは調査を通して分類されたことで、様々な品質要素を「うーん……これは魅力品質!w」とかいって雰囲気で分けて良いわけではないんです。

デザインの評価分類を知るためには

デザインだけではなく、プロダクトやサービスを構成する全ての要素の評価分類は、ユーザーに対する調査によって明らかになります。

それは「その要素が充足されていたらどう思うか?」「その要素が充足されていなかったらどう思うか?」という有り無しの両パターンをユーザーに問うもので、それぞれ5段階評価をしてもらいます。

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この評価からすると、そのプロダクトのデザインは「当たり前品質」や「無関心品質」となるかもしれません。この点が、わたしが誤解していた一番大きなものです。

評価からアクションへ

ここまでが評価の測定方法としてのお話です。実務レベルで言うとまだ準備段階ということですね。
大切なのはここから、どのようにして価値を向上させたり生み出したりするか、ということ。

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上記は一般的な狩野モデルの進め方です。この例では、品質要素は当たり前品質であり、まだ充足できていないことから、まずはこの要素自体の充足度をあげて不満足を解消する必要があるでしょう。

この後やるべきことがシンプルですね!

ちなみに当然の話ですが、私達が直接関与できるのはX軸(充足度)のみです。Y軸(満足度)はその結果、評価分類に応じて上下するに過ぎません
私達ができるのは、その要素を充足させるかどうかだけ
です。

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さて、こんな場合どうしよう

ここから先は私の狩野モデルの拡張です。

今お話したように、現状が未充足で充足させれば満足度が上げられる状態ならば簡単です、充足させましょう。困るのは、当たり前品質の後半や無関係品質のように、それ以上に手を入れても効果が見込めない状態の時です。

普通に考えれば、その要素は放っておいて別の要素に着手したほうが良いです。しかしこの時、当たり前品質や無関係品質を魅力品質にシフトできれば、プロダクトの満足度を独自性をもって上げるのではないかと考えます。

この答えはまだ出ていないのですが、以下に述べるような外部要因が大切なのではと思います。

魅力かどうかに影響を与える2軸

評価分類をシフトさせるには、特定要素の充足度だけでは不十分で、より大きな力が必要になります。

まずそもそも、良いか悪いかを評価する際には基準点が必要となります。今回その基準点に大きな影響を与えるものは「属するブランド」「属する商品種」の2つと考えられます。

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例えばappleが業務用プリンターを作ったとすれば、デザイン性は必須であり低いレベルは許されないでしょう。これはブランド軸が影響を与える一元品質です。

一方で、いま業務用プリンターを買おうと考える人は、デザインが良いなら結構だが、それだけの理由で職場導入されることはないかと思います。この場合は「業務用プリンター」という商品種軸が影響を与える無関心品質ですね。

このように、何かを評価する際にその被評価物は外部条件から独立して行われるのではなく、縦横の2軸から影響を強く受けると言えます。そしてこの2軸が、評価分類のシフトをさせる力があるのでは、と考えています。
ブランドを変えるか、商品種のイメージを変えるか。

私達にできること

商品種のイメージをいきなり変えることはできないので、私達ができることはまず自ブランドとその要素の関係性を考えることになります。

バルミューダが電子レンジのデザインを魅力品質にしたように(たぶん)、「バルミューダ=おしゃれ」というブランドとその要素の結びつきを事前に強くすることで、後発の別商品種の評価分類をシフトさせることができたのではないかと思います。
その結果「バルミューダの電子レンジはオシャレなら高くても買うよね」といった評価分類シフトがおこり、さらにその影響力が強ければ他社の同商品種に対してもシフトが発生して「電子レンジはオシャレなら高くても買うよね」みたいな世界になるわけです。

※バルミューダはデザインだけというわけではなく、これまでにない尖った機能(心地よい風やスチームトースト)とデザインの融合がブランドイメージかと思います。
ちなみに今回はテーマがデザインだったので話が偏りましたが、「ダイソン=吸引力」のようなブランドと機能の結びつきも当然あります。

もちろんバルミューダも最初からブランドイメージがあったわけでではないので、最初のプロダクトである扇風機の「デザイン」って魅力品質にできるんだっけ?それをブランドと結びつけていいんだっけ?という問はロジカルには解消できないのではないのかもしれません・・・。

ブランドを変えるためにはプロダクトが必要だし、プロダクトを変えるためにはブランドが必要という鶏卵問題・・・。

結局、第一歩はどこまでいっても完璧な根拠付はできないのかもしれません。わざわざ挑戦する必要がない場合は、商品種のイメージが変わるまで待つほかありませんが、業界トップリーダーやディスラプトする側は最低限の根拠からアクションする必要があります。

評価分類シフトについては、これから業務の中で色々と試しながら答えを見つけていければと思っています。今回の2軸外部要因もつまるところ「期待値コントロール」なので、そこから他のアプローチもあるのかな、などとも思案中です。何か良い発見があればまた共有したいと思います。

もし何か良い答えをお持ちの方は、是非ご一報ください。