無意識のマッチ棒
いやね。
私はタバコを吸っている。
キャスター……今で言うところのウィンストンキャスター。
ヤツの5mmをこよなく愛している訳だ。
マッチ、あるでしょう。
ここ最近の文明においては火を起こすということについて株価の落ちているマッチ。
「ライターでええやん」
そんな声が聞こえる。
かくいう私もライター、もといZIPPOで火をつけている。
火を付けてからの1吸いめ。ZIPPOと100円ライターとでは天と地ほどの差があるのだ。
100円ライターを貶す訳では無いことにご留意頂きたいのだが、どうしてもチープな匂いが口に、鼻に広がってしまうのだ。
これは対照して、という意味である。
その点ZIPPOで火を付けるとオイルの小気味よい香り、何より「自分はZIPPOで火を付けているのだ」という満悦にも似た高揚感が心と鼻をくすぐるのだ。
しかし、だ。
先日コンビニでマッチが2箱60円で売っていたのだ。
そう、皆様方もお目にかかっているであろう桃のマークが特徴的な下記の画像のマッチだ。
旅館の部屋の「あのスペース」。窓際のちょっとしたテーブルと椅子のあるあのスペース。あそこに置いてあるマッチだ。
正直興味半分で買った。いや、それも定かではない。
ほぼ酩酊状態で購入したこのマッチに驚かされることになるとは思ってもみなかった。
タバコを吸うため、マッチに火を付ける。
1本取り出し、側面にあるヤスリで火を起こす。
ボワっ…………
火が起こったのを見て私は直感的に思った。
これが原始的な火だと。
無論、酔いによる気分の高揚であったのは否めない。
むしろ当時の高揚感はそこが原点であっただろう。
そのまま加えたタバコにマッチで火を付けた。
…………美味い。
木の、えも言われぬこの香り。
木が燃えている。タバコの葉が燃えている。
それだけで充分であった。
いや、美味い。
昔、合コンに行った時に知らねぇ気取ったヒョロいメガネの男がマッチでタバコに火を付けていたのを思い出した。
当時は「あ〜はいはいはい、合コンだからね。カッコつけたかった? だよな? 『マッチでタバコ吸っちゃいますよ俺?』感をアピりたかったんだよな?」と思っていたのだが。
その当時の彼に謝りたい気持ちでいっぱいだった。
ごめん、中澤くん。