【BJJ教則頻出英語解説シリーズ第一弾】Understanding The Distance From Guard Gui Mendes

 黒帯柔術家オカタイガさんがこのような投稿をされていたので、トライしてみることにしました。

 今みたいな円安になる以前は、BJJ FANATICSでタイムセールを常に狙いつつ、海外教則をわりと購入していました。あくまでブラジリアン柔術のインストラクションなので、教則の中で使用される英単語はバリエーションが少なく、これから英語を学びたいと考えているブラジリアン柔術愛好家の方々にとって、英語BJJ教則は格好の英語教則でもあるはずと前々から考えていました。その自分の仮説を試す意味でも、英語BJJ教則に挑む人が増えるとっかかりになれば良いなと思っています。また自分のこの記事が英語はあまり得意ではない茶帯黒帯の方々のお役に立てば、その人達が海外教則で得た知識や技術が巡りめぐって柔術下手な自分のところへ環流するはずという長期的下心もあったりします。

 で、その一発目に選んだ教則はこれ、ギイ・メンデスの Understanding The Distance From Guard です。

 実はこのテーマで一番扱ってみたいと思っているのはラクラン・ジャイルズとジョン・ダナハーなのですが、いかんせんその2人は英語ネイティブなので、英語慣れしていない日本語話者にとってはリスニングが容易ではない。それに比べてポルトガル語を母語とする人たちは発話方法が日本語と似ているため、彼らの英語はわれわれ日本語話者にとって比較的聴き取りやすいと思います。また彼らにとっても英語は外国語なので、使う文法のバリエーションが非常に少ないという利点もあります。というわけで第一弾は、ギイの英語は必ずしも聴き取りやすくはないのですが、英語ネイティブよりマシだろうということで本作を選んでみました。
 では本題、本作に出てきたBJJ教則頻出単語&表現をほぼ時系列で羅列していってみます。

【第1章】

professor(先生)
 必ずしも頻出というわけではないのですが、ギイはじめブラジリアンの人たちは、自分の先生を my professor と呼ぶことが多い気がします。彼らが my professor と言うときは、「教授」ではなく「柔術の先生」の意味です。

opponent(練習パートナー、対戦相手)
 opponent は元々は対戦相手や敵を意味する言葉ですが、ブラジリアン柔術教則では打ち込みやスパーリングの相手、すなわち練習パートナーを意味します。なお原意が「敵」なので、言葉の定義にうるさいダナハーは一時以降、練習相手をopponentと呼ぶのは適切でない!partnerと呼ぶべきだ!と妙なこだわりを見せて、現在のダナハー教則では使われてません。が、その他の教則では今でもopponentが一般的だと思います。

competitor(選手)
 比較的よく見る英単語ですが、念のため取り上げておきます。

my main theme(メインテーマ)
 文字になったら誰でも読める単語だけど、th音で始まるtheme(シィーム)はたとえポルトガル訛りのギイ発音でも日本語話者には捉えにくいので、念のため取り上げておきました。

【Near Distance】

posture(姿勢)
 ポスチャー、ポスチュアはBJJ業界ではそのままカタカナで使われることもあるので多くの方がご存知だとは思いますが、念のため取り上げました。

break (the) posture(崩す)
 直訳すれば「姿勢を崩す」。場面によっては「崩し」はoff balanceを使うこともあります。

in order to(〜するため)
 受験英語でお馴染みですが米国では口語でよく使うため、教則動画でも頻出です。

arm-pit(脇)
 日本語話者が意外と知らないボディパーツの英語名称代表例、arm-pitはBJJ教則では超頻出です。

triangle(三角)
 米国人英語ネイティブのt音って日本語のチャ・チュ・チョに近い音なんだけど(例えばtrainはチュレイン)、ギイのt音は僕ら日本語話者と同じくタチツテトだから聞きやすい。英語ネイティブのt音は慣れるまで要注意です。他方、controlはギイも米国人風にコンチョロールと発音してるように聞こえます。

initiate(し始める)
 ほかの教則では聞き慣れないけど、ギイは initiate back attack のように「イニシエイト」をよく使いますね。彼特有の言い回しかもしれません。

uncomfortable(不快、不安定)
 comfortable(快適)に否定の接頭語unが付いたuncomfortable(アンカンファタブル)は、一般的には「不快」の意味で用いられます。BJJ教則では頻出単語だと思います。

be able to~(〜できる)
 日本の受験教育では助動詞canとセットで教えられることが多いbe able to、米国人はこちらをより多用する気がします。カリフォルニア暮らしが長いせいか、ギイも教則の中でよく使っています。

use a lot(めっちゃ使う)
 a lotも日本の受験英語ではmanyとセットで教えられるけど、実際には使う場面やニュアンスがやや異なる上、米国で多用されるのはこちらだと思います。

for a while(一瞬、少しの間)
 これもよく使ってますね。

hip(骨盤)
 日本語の「ヒップ」はお尻、身体の背面最下部を指しますが、英語のhipは前面も含むので注意が必要です。「骨盤」くらいの意味で理解しておくのが良いと思います。

room(隙間、スペース、空間)
 ギイが He creates a lot of room と言っています。クローズガードに入れて相手の頭を下げさせている状態で、相手が頭を上げようとしたときに自分の膝を差し入れる空間ができるという文脈です。

【第2章 Middle Distance】

(be) gonna
 BJJ教則では、英語ネイティブもノンネイティブもgoing toの砕けた口語表現gonnaをよく使います。この章冒頭でもギイが "We are gonna start middle distance" と言ってます。受験英語では未来形にカテゴライズされていますが、今から自分は〜をしますよという意思表明をするのに便利なので、BJJ教則のインストラクターがよく使います。特に英語ネイティブではないインストラクターが使う文法は、こればっかりという印象すらあります。

off balance(崩す)
 出てきましたね。既出のbreak the postureがクローズドガードから相手のポスチャーを崩す場面だったのに対し、ここではデラに入れた相手が自分の脚を跨いできた場面で相手を崩すテクニックを説明しているので off balance になるのでしょう。

bicep(二の腕、上腕二頭筋)
 体の部位に関する英単語って、以外と難しかったりしますよね。BJJでは片襟片袖ガードで蹴ったりと二の腕がよく登場するので、bicepは頻出です。bicep(二の腕)、arm-pit(脇)、hip(腰)とthigh(太もも)あたりが、BJJ教則頻出かつ意外と知らない身体英単語の代表例かなと思います。stomachは胃というよりも、BJJ教則では腹部の真ん中あたりという意味で使われています。

tricep(上腕三頭筋)
 bicepと並んでtricepも頻出です。

multiple times(何回も、何回でも)

【第3章 Far Distance】

 このあたりになってくると、もはや新しい単語や表現は出てきません。ブラジリアン柔術をやっている人なら、その動きから解説者の話している内容が概ね理解できるし、「こういうときは英語ではこう表現するのか」という発見も多々あります。BJJ教則が英語学習に適している理由です。BJJ教則に頻出かなと思われる言葉を出てきた順番で、もう少しだけ羅列します。第4章は省略します。

combine(連携する、連結する)

over-extended(相手の体を伸ばし切る)

in case〜(〜の場合に備えて)

implement(実践する)

【余談】
 この教則を観る以前の自分は、フレームというと四肢のみを想定していました。腰や頭骨など全身の骨格全てをフレームと考える思考は、自分にとってエポックメイキングでした。
 またガードを遠距離ガード、中距離ガード、近距離ガードとカテゴライズする発想も、以前の自分にはありませんでした。
 せっかくギイにこれら考え方を示してもらったのに、それをなかなか活かせていないのが我ながら残念なところです。

以上


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