弁護士視点からの「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」解説〜第13話
今回は、寺社が徴収する「文化財観覧料」を巡る訴訟。
子どもの頃、京都の「拝観料」を巡る問題が連日ニュースになっていたことを思い出します。しかしあれは京都市が「拝観料」に課税することを巡る寺社仏閣と京都市との対立だったので、本話とはだいぶ様相が違います。
珍しくヨンウが、いつも通り指折って数秒数えながらも、ミョンソクの執務室に意気揚々と入ってきます。ヨンウはミョンソクに、不当利得返還請求訴訟を受任するのだと説明。
不当利得返還請求とは、法律上の理由なく金銭等の経済的価値を渡してしまった者がその相手に、やっぱりあれは法律上の理由がないからアンタは不当に利得を得ている、だからそれを返せと請求する法的手法のことです。この場合、いったん払ってしまった「文化財観覧料」の3000ウォン、あれはやっぱり不当だから返せという請求をすることになります。
ミョンソクがヨンウの出張提案に対し、じゃあチームみんなで行こうと言い出します。常時複数の案件を多数同時並行で進行させている弁護士が集団で出張するとなると、少なくとも数ヶ月前から調整が必要なものです。
しかし我々弁護士は、たった1件の案件のために遠方に出張し温泉に浸かりながら解決する2時間サスペンスドラマを見て、「あんな暮らしに憧れるなあ」と現実逃避して癒やされる習性があるので、この展開は大歓迎です。
初回期日の法廷、デザインがいつもと違うので済州島の裁判所なのでしょう。証人席が高いところになく簡易設計になっているあたりが、如何にも地方の裁判所です。済州島の裁判所が実際に小規模庁舎なのかどうかは分かりませんが。
訴訟の初回期日は、訴訟の申込書である訴状を裁判所に提出してから一定期間を経た後に設定されます。済州島に行ってすぐ期日だったということは、予め提訴してからこの度の出張に来たということでしょう。ビデオ撮影その他、事前に徹底調査せずに提訴に至ることは現実にはまずあり得ませんが、まあ今回はバカンスモードなので良しとしましょう。
期日終了後、法廷でヨンウら弁護士チームは、被告ファンジ寺の住職からお寺を見に来ないかと誘われます。弁護士が相手方当事者から誘われて現地に行くということは通常考えられないけど、この誘いは原告であるクライアント本人もいる前で行われているので、敵陣視察の機会だとその了解を得たのだと理解すれば、あり得なくはないと言えるでしょう。自分の弁護士が相手方に取り込まれるんじゃないかとクライアントが疑心暗鬼になる危険があるので、この段階では考えにくい選択ではあります。
いつになく現実の弁護士実務から離れた設定の多い本話、ずっとこの雰囲気で行くのかと油断してたところへ突然、リアルすぎるエピソードをぶっ込んできます。ミョンソクが離婚した経緯です。離婚に至らなかった人も含め、似た経験をした弁護士は少なくないことでしょう。こんなところまでリアルに描いてくるのかと驚愕しました。
新婚旅行の再現シーンは、自分は流石にあそこまでの経験はしていませんが、あまりにも痛々しくて再視聴するときはついつい早送りしてしまいます。日韓の少なくない同業者たちが、血涙を流しながらこのシーンを観たことでしょう。
リアタイ視聴していた当時、自分にやや遅れて本作を観ていた妻がこの第13話を見たら昔のことを蒸し返してくるんじゃないかと戦々恐々としていました。が、幸いにも彼女はヨンウ&ジュノとスヨン&ミヌの恋の行方にしか興味がなく、胸をなで下ろしました。
第14話に続きます。