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AZURA5年目

今日シャンプーをしてくれた人が藤井風に似ていた。髪型だけ。約3ヶ月ぶりに行った美容院には、普段の倍ほどの従業員の方が働いていた。見たことのない人たちが半数ほど。今日から通常営業再開されたらしく、髪の色と服装が個性的な人たちがいそいそと動き回っていた。お客さんも普段より多く、この時間帯に来たのが申し訳なかったが、営業中はずっとこんな感じらしかった。いつも担当してくれている和田さんの髪はピンク色になっていたが話し方は変わってなかった。相槌を激しく打つ時と、全く聞いてないかのように相槌を打たない時の差が激しい。カットに集中しているのだろうが、聞こえているのか聞こえていないのか不安になることがある。和田さんの旦那さんも美容師で、ボクは見たことないが凄腕らしい。旦那さんと同じ美容院で働いている社員に大坂くんという人がいる。もともと和田さんと一緒に働いていたので、ボクも何度か話した。

彼は遅刻魔で、今は大分マシになったらしいが、ボクのシャンプーを担当していた頃は毎回のように遅刻していたらしい。ただ、悪気のない素振りと素直さで憎まれず、キャラとして定着していた。彼の過去の話を聞くとなかなかの変人で、まるで心は永遠の小3のようだった。幼稚な話を聞いてもボクの気分は悪くならず、むしろ懐かしい気持ちになった。一度彼がボクのバイト先に来たことがあり、連絡は取っていないが仲はいい。ボクの通っている美容院には、新人研修で新人たちを集めて、半年ほど研修をしてから別の美容院に送り出すという役割がある。だから、ボクにとって大坂くんのような人が何人もいる。彼らが研修中にボクとたまたま仲良くなったが、数回会ってすぐ別の美容院に行った人たちがいる。

彼らのほとんどが今どこの美容院でどう働いているのか知らないのだが、今どうなっているのか気になるけど、あちらはボクのことを覚えているか分からないし、彼らにとってはボクは研修中の一お客だから、その程度の人ならボク以外に何人も見ているだろう。ボクはボクで気になるといっても知ってどうする問題があるから別に知らなくても生きていける。

こういう人は美容師以外にもいる。ただ、ふとした時にしか思い出せない。ボクも誰かにとってはそういう存在なのだろうか。そう思うとちょっと不思議。心に時々出入りしてくれる存在は、懐かしい感情とこれから先死ぬまで会わないかもしれないというちょっとした寂しさを両方味わせてくれる。一見無意味な出会いも、何年後かには貴重な体験をさせてくれるかもしれない。

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