道草植物図鑑No.10「オオバコ」
「尊敬する植物はなんですか?」
もしそんな質問があるとすれば、
私は「オオバコ」と答えます。
踏まれてもへこたれない、逞しい植物としてよく知られていますね!
中国名は「車前草」。
車(馬車)がよく通る場所に生育していることから、この名前がついたそうです。
また、山で道に迷ったらオオバコを辿れば人家に辿り着くなんていう言い伝えもあるそうです。
実際に登山道では、どう考えたって人に踏み潰されてしまいそうな場所に生育しています。
これが、逞しい植物だと言われる所以。
けれど、どうしてあえて強さを求められるような場所で生きているのだろう?
その理由が、「オオバコは弱いから」
だと知った時とてもびっくりしました。
他の植物たちが生い茂るような場所は、
光や養分を取り合う激しい競争が繰り広げられています。
そういう場所では、オオバコは太刀打ちできないのだそうです。
だからこそ、他の植物たちが入ってこられないような、よく踏まれる場所を生きる土地に選んだ。
そして、そんな土地で生きるための知恵も豊富です。
葉っぱは根本から放射状に寝そべっており、茎も短い。
そのため、踏まれても折れてしまうリスクが低いのです。
また葉っぱ自体は柔らかく、その中を通る葉脈は丈夫で硬い。
柔軟だけど、芯はしっかりしている。
だからこそ、踏まれたってへこたれない。
それに、ただ踏まれるだけではありません。
踏まれるなら、それを逆手にとってしまおう!という強かさもあります。
秋、花の時期が終わり、
オオバコが結実し始めます。
果実をひとつ手に取ってパカっと開けると、このように艶々の種子が出てきます。
ぜひ、雨の日にこの種子に触れてみてほしいです。
ぬめぬめして手にくっついてきます。
濡らすとくっつくようになる、切手みたいです。
雨上がり、やっと雨がやんだ!と空を見ながら歩いていると、足元に結実したオオバコ。
気づかずに踏んづけると、
足の裏に種子がくっついてきます。
そして、私たちは歩きながらオオバコの種子を遠くへと運ぶのです。
「お出かけするなら、ついでに種子も運んでくれない?」
そんな風に言われているような気がします。
自分のことをよく理解し、
周囲の状況をよく理解し、
柔軟に、けれど凛として生きている。
植物は人間のように考える脳は持ってないけれど、よく考えて生きているように思えてなりません。
弱いからこそ、強くなれることもあるぞ!
そういう気概を感じる。
私がオオバコを尊敬する理由です。
オオバコ
Plantago asiatica
オオバコ科オオバコ属
在来多年草
花時期 : 4〜9月
生育地 : 路傍、荒地、登山道
出典 : 身近な雑草の愉快な生き方 / 稲垣栄洋
おもしろ植物図鑑 / 花福こざる