売れるかどうかは、ポジショニングで決まる
ある商品を売るために、広告やキャンペーンをやりたい。そんな時にまず考えてほしいのが、「ポジショニング」です。ポジショニングとは「その商品が何をするのか、それは誰のためか」を定めること。
ターゲットによるポジショニング
みなさんはダヴ(Dove)を知っていますか? 洗顔料やシャンプー、ボディウォッシュで世界的に有名なブランドです。ダヴは1957年にアメリカで生まれました。最初に発売したのが「ダヴ ビューティバー」(固形洗浄料)。いわゆる石けんです。実はこれが、ポジショニングの成功例なのです。
1950年代のアメリカは戦後の好景気にわき、衛生意識の高まりもありました。そんな中、ダヴは他社に先駆けた大胆なポジショニングで成功します。
それまで石けんと言えば、もっぱら「男性の手の汚れを落とすための化粧石けん」だった時代。ダヴは、自社だけの価値として「うるおい」を加えて、石けんのポジショニングを「ドライスキンの女性のための洗浄剤」へと変えました。そして、世界中の女性から支持されるブランドへと成長していったのです。
競合商品がある市場で、自社商品の「場所」をどうつくるのか。ポジショニングを考えることは、商品を売るために有効なのです。
商品名によるポジショニング
ポジショニングの例をもう一つ。だれもが一度は食べたことがある惣菜パン…と言えばそうです、ヤマザキのランチパックです。
ランチパックが最初に発売されたのは1984年。ピーナッツ・青りんご・小倉・ヨーグルトの4品だったそうです。そして1984年からずっと人気No.1なのがピーナッツ。
わかりみの深みがすごすぎ…(語彙の崩壊)
スペシャルサイトにランチパックの豆知識が! おもしろかったので、いくつかご紹介します。
約1分40秒
食パンがスライスされてから包装されたランチパックになるまでの時間
約4億個
ランチパックが1年間で作られる数
丸型
今までに発売されたことのあるランチパックの形
ランチパックのヒミツ より
「食パンを手軽に食べてもらいたい」との思いから開発された商品だというランチパック。ロングセラーを続ける効果的なポジショニングは、商品名にあると思います。
ランチパック、よく考えるとすごいネーミングです。パンなのにパンとは言っていない。携帯サンドイッチという位置付けなのにサンドともサンドイッチとも言っていない。
ある意味ではざっくりしている(笑)この商品名が素晴らしいのは、「手軽さ」を強くイメージさせること。ランチとパックを組み合わせると、朝食や昼食それこそ夜食でも手に取りやすい雰囲気が出て、どこでも持ち歩いて食べられる手軽さを感じる。もしこれが「モーニングパック」だったら、また違った印象になるはずです。
商品に新しい光を当てる
ダヴやランチパックのポジショニングには、共通点があります。それはポジショニングによって「商品の可能性を広げている」こと。
最近の例で言えば、コスメ。男性タレントや男性アイドルがアンバサダーを務めることも多いです。若い世代ほど「メイクは性別にとらわれず、だれもが楽しめるもの」という感覚が強いからでしょう。
「これを使うのは女性に決まっている」「これを買うのは絶対に男性だ」。そんな決めつけを見直し、あらためて商品を見つめてみる。キャッチコピーを書く時にも、「商品に新しい光を当てる」とよく言います。すると、これまで見えてこなかったポテンシャルを発見できるのです。
社会の変化や、使う人の気持ちの変化にあわせて商品のポジショニングを工夫できれば、ロングセラーやヒットにつながるのではないでしょうか。
今回は「ポジショニング」について解説しました。お役に立てたら嬉しいです。
文:シノ
◇参考文献『売る広告』
デイヴィッド・オグルヴィ 著
山内あゆ子 訳