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未来の画家Ⅱ


「... 未来の画家とは、流れる色彩要素の中で誕生以前に様々な形を知覚できる、このような能力を持っている人のことです。自由な色彩は画家のパートナーであり助けてくれる存在となるでしょう。」 

「... このスクールで行うそれぞれのエクササイズは、
新たな創造へのテーマとも萌芽とも、受けとれることでしょう。」

「色の結び」ダニエル・モロー著 初鹿野ひろみ訳 より

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そのことに関連した内容として、この本をご紹介したいと思います。
これは、1990年に書かれた DIEI NDEIVIDUALITAT DER FARBE
「色彩の個性」という本です。


そして、日本ではイザラ書房より、1998年に
「色彩のファンタジー」として、松浦賢氏の翻訳によって
出版されています。

『色彩のファンタジー』
ルドルフ・シュタイナーの芸術論に基づく絵画の実践
エリーザベト・コッホ
ゲラルト・ヴァーグナー著
松浦 賢訳 

あとがきに より
「本書の著者コッホとヴァーグナーご夫妻は、スイスのドルナッハにおいて、ルドルフ・シュタイナーの芸術論に基づく絵画教室を開いています。
本書は、このようなコッホとヴァーグナーの長年にわたるか絵画実践の内容を全面的に公開するものです。…コッホとヴァーグナーはゲーテとシュタイナーの色彩論を基礎に据えながら、生きた色彩体験へと至る道を読者に開こうとしています。本書の初版はヨーロッパで好評をもって迎えられ、その後幾度となく版を重ね、今回の翻訳テクストは二回目の改訂版(第三版)基づいています….」

このドイツ語版の本は、以前、モロー氏より譲りうけたものですが、
たくさんのシンクロとすばらしい示唆に満ちた本だと改めて感じます。

今を生きている私達が、色彩を通して、どこに向かっていけばよいのか
真摯な探求者であるヴァーグナー氏の言葉が、時を超えて切々と響いてくるかのようです。

以下、いくつかの文章を抜粋させていただきますね。

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「...道徳的な感情から切り離された、応用と実験に基づく自然科学は、人間の存在と、世界の存続と、芸術が存在することの正当性をおびやかしてきました。

シュタイナーが『自由の哲学』で述べているように、いま私たちは、自然科学の方法に基礎を置きながら、魂的な観察を試みなくてはならないでしょう。

私たちは、魂がとらえる純粋な現象をよりどころとする、このような試みに基づきながら、秘密にみちた人生の開示へといたる新たな道を見出すことができるのではないでしょうか。

人間が自由な道徳的意志のなかから新たに発見する自然法則こそ、きたるべき時代の芸術創造の根源となりうるのです。

新しい芸術創造は、感覚的な世界と超感覚的な世界の住人としての人間を、この二つの世界の中間に位置づけます。

この意味において芸術創造とは、瞑想的な行為なのです。

ここを出発点とすることで、人間は、世界の個々の現象のなかで、自分自身のしめるべき位置を見出すようになります。

芸術作品は、たえずそれ自身の似姿を生み出していく霊的な力の中心のなかから、あらゆる個々の現象を形成していきます。

もしこのように、芸術作品がふたたび高次の秩序を映し出す鏡となるならば、その秩序だてる力が社会生活においても、ふたたび治癒的に作用するようになるでしょう。」

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…「芸術とは秘められた自然の法則の開示である」

とゲーテはいいました。いま私たちはこのようなゲーテの言葉に、次のようにつけくわえることができるでしょう。

「自然とは秘められた芸術の法則の開示である」

人間とは、自然と精神のあいだで芸術を創造することのできる存在なのです。

私たちは自然の世界における諸条件のなかに、物質と力の均衡を見出します。

人間の場合には、さらにそれを超えて、魂と精神の均衡が存在します。

みずからの肉体と魂と精神の力の均衡のなかにたつ、自由で意識をそなえた人間は、芸術的な創造の尺度となります。

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 私たちの感覚が伝えてくれる色彩世界は、鉱物、植物、動物、人間の本質とむすびついています。

すべての自然は色彩にみたされています。本質的な美が自然のなかで開示されます。

魂はこのような美と交流することで、内的に生き生きとしたものとなります。

 もし色彩が消えてしまったら、世界は創造もできないほど、荒涼としたものとなることでしょう。

色彩のない世界を思いうかべてみるならば、そのときには感覚だけでなく、思考も意志も完全に変化することがわかります。

世界に色彩が存在しなくなると、物質界の形態までもその存在価値を失うでしょう。

 練習を長く続けていくと、色彩の世界がどれほど強く私たちの魂の生活と結びついているか、ということがわかってきます。

 自然の生き生きとした美が、精神と魂をそなえた存在の表れでないとしたら、どうしてそれが人間の精神と魂に直接はたらきかけることができるでしょうか。

精神と魂をそなえた存在は、自然の美をとおして、私たちにその表情を見せているのではないでしょうか。

それはちょうど、顔の表情のなかに、人間の精神的なものや魂的なものが現れているのと同じではないでしょうか。

 色彩をとおして、感覚的に近くされたものは、魂的に近く可能なものへと移行します。

私たちは無意識的に、この二つの領域のあいだの移行をはたすことができます。

色彩とは、量的な性質だけではなく、質的な性格をそなえています。質的な価値をてがかりとしながら、私たちは芸術的な創造のプロセスに深くはいっていくことができます。

計算の領域にさまざまな数量が存在するように、黄、赤、青はそれぞれ異なった質の価値を表しています。

私たちは数量をもちいて、鉱物の世界を認識することができます。

これに対して色彩の質の価値は、私たちが芸術的な均衡を求める過程において、色彩の質そのものを測るための基礎となります。
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色彩の世界をとおして、私たちは自分自身と出会い、世界認識、自己認識をめざします。

事物そのもののなかに根拠づけられている答えを探求する行為は、事物に即して展開されます。

私たちは、このような行為を経験することができます。

なぜなら私たちの自我は、事物のなかで生きるからです。

このような主観的かつ客観的な認識の本質は(このような認識において、世界と人間はふたたび一つになり、全体性をとりもどします)、現代を生きる私たちにふさわしいものです。

それは時代の要求にかなっています。

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…以下に、いままでお話しした造形芸術の発展について概観してみることにしましょう。

1. 秘儀の芸術ーインスピレーションによる心的な、精神的な世界の開示と     しての芸術

2. 宗教的感情ー自然と人間のなかにある心的なもの、精神的なものの開示としての芸術

3 .自然科学的な観念ー自然と人間の物質的な側面の表現

4.分子による世界観ー自然の形態を解体するのに協力するもの

5.ニヒリズムー人間が生み出した、化学技術の世界の混沌とした状況を映しだすもの

6.社会秩序の解体ー芸術創造と芸術的感情の解体

7. 物質世界に対する霊的な関係ー精神科学的な意味における実験者としての芸術家

8. 眼球者としての芸術家は、自然のなかの幸次の自然を告げ知らせる役目をはたす。高次の自然においては、自然法則は道徳的な法則と同一のものである。

この第八番目の段階は、人間にとって、遠い未来の目標です。内的な合法則性に対応するような方法で魂の力の発達と結びつくならば、この第八番目の段階は新しい、時代の精神に合意した発達をとげるようになるでしょう。

もしそれが不可能ならば、この段階は世界から消えていくしかありません。そのときには科学技術がおおいに幅をきかせるようになり、ついには人間に代わってあらゆるものを支配するようになることでしょう。

「芸術が欠如すると、それだけ多くの虚偽が世界に存在することになる。
芸術が欠如すると、それだけ多くの犯罪が世界に存在することになる。」

このようなルドルフ・シュタイナーの言葉は、「正しい発達をとおして意志と思考のあいだに均衡がはかられることがなければ、人間はどうなってしまうのか」ということを暗示しています。

いま人間が直面している緊急の事態を告げる声が、死から身を守ろうとする人間の魂の抗議の声が、芸術をとおしてわきあがっています。

このような魂の危機を乗りこえるために、多大な努力が必要とされています。いたるところで、さまざまな方法で、新しいものに対する探求がなされています。

私たちは、一部の天才によってうみだされるような芸術が終焉を迎える時代に生きています。私たちは新しい時代の始まりを生きているのです。

この新しい時代においては、あらゆる進歩は人間の意志そのもののなかで生じることでしょう。

天賦の才能を与えられた人間のみを育成することが芸術の基盤となる時代は、終わりを告げようとしています。

むしろこれからはすべての人間に開かれた練習の道こそが、未来に向けての芸術教育の基礎となることでしょう。



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